政宗「最初に動いた奴から斬る。死にたくない奴は、下がってな」
政宗「別に弱者の味方をするわけじゃねえ。こいつの謀反は確定なんだ。攻めたって、文句はねえだろう」
政宗の刃の先まで、殺気立っているのを肌に感じる。
政宗「最初に動いた奴から斬る。死にたくない奴は、下がってな」
大名「っ・・・・・・、おい貴様ら、何してる!とっとと迎え撃て・・・っ」
痺れを切らすように大名が発破をかけるけど、敵も凍りついたように動こうとしない。
政宗「どいつもこいつも及び腰か?そんな覚悟で俺達の首を取ろうなんて・・・・・・五百年早い」
大名「っ、ええい、かかれ!」
政宗の部下「政宗様に続け!遅れを取るな!」
領民「お、おう・・・!」
敵の武士「ぐっ・・・・・・!」
「------ちょっと待って!」
大名「・・・・・・っ、無礼者!何をする!」
「っ、あなたのせいであんな乱闘になってるんじゃないんですか?それを放っておいて、逃げるのは無責任だと思います!」
大名「何だと・・・・・・っ、貴様、誰に向かってものを言ってる!」
大名は体勢を立て直すと、腰の刀に手を掛けた。
(つ!いけない、この時代の人って、刀持ってるんだった!武器も持ってないのに、何つっかかってるの、私------!)
???「丸腰でなあにやってんだ、阿呆」
「ま、さ・・・・・・むね・・・・・・?」
政宗「女相手に図星指されて逆上か。とんだ大名だな、あんた」
大名「っ!」
政宗が、鮮やかに大名の刀を押し返す。そのまま流れるような所作で、その喉元に切っ先をつきつけた。
政宗「広間の連中なら来ないぞ。もうまともに動けんのはお前だけだ、観念しな。今すぐ首を飛ばされたくなかったら、大人しくしてろ」
政宗「おい、家康、こいつ縛れ。ゆうの手柄だ」
家康「・・・・・・素手で大名捕まえようなんて、あんたバカなの?」
いつの間にかかけつけていた家康さんが、大名を縛り上げる。いまだ政宗に抱かれたままで、私はぽかんとそれを眺めていた。
(な、何が、どうなったんだっけ・・・・・・)
政宗「おい」
「・・・・・・・・・・・・あ、はいっ?」
政宗「怪我、してねえだろうな」
「・・・・・・っ!」
政宗「どうした。怪我したのか?」
「っ・・・・・・だ、大丈夫。ありがとう」
家康「政宗さん、帰りは馬、飛ばさないでください。疲れるから」
政宗「ちんたら走ってる方が疲れるだろ?」
廊下を歩きながら、ふたりは何事もなかったかのように会話している。
男「政宗様・・・・・・さっきは本当に、ありがとうございました」
(あ、この人・・・・・・政宗に声をかけられて、真っ先に反乱を起こした・・・)
男「でも、政宗様が言葉をかけてくださらなければ、俺は多分、無念のまま死んでました。それに、あんなに早く大名を捕まえてくださったお陰で、死人だって出なかった。感謝されるいわれは、充分すぎるくらいあります!」
政宗「わかったわかった。いいから早く帰れ。女房と子どもが待ってるんだろ」
政宗はひらひらと手を振って、さっさと馬に乗ってしまった。
秀吉「政宗、帰りはゆっくり走れよ」
政宗「はいはい。家康にも言われた。ほらゆう、乗れよ」
「・・・・・・うん」
当然のようぬ手を差し伸べられ、拒むこともできず政宗の前へと座る。
政宗「ゆう、もっと寄りかかれ。安定しない」
「わっ・・・・・・」
腰に腕を回して、ぐいっと政宗の方へ引き寄せられた。意識的に離していた背中が政宗の胸にくっつき、余計に身体が硬くなる。
1. ごめんね
(確かに、そうなんだけど・・・)
「政宗は、戦うのが・・・・・・好きなの?」
政宗「そこに命をかけてもいい信念がある戦いなら、嫌いじゃない」
(信念・・・・・・か・・・・・・。やっぱり、私にはよくわからないな)
政宗「いや、さっきのお前のこと、思い出してな。お前、無謀すぎだ。丸腰で大名捕まえるなんて、俺でもやらねえよ」
「わ、私だって、馬鹿なことしたと思ってるよ。だけど・・・・・・許せなくて」
(自分のために命をかけてる人たちを置いて逃げ出すなんて、・・・・・・見過ごせなかった)
政宗「ああ、勘違いすんなよ」
「え・・・・・・っ?」
「・・・・・・っ」
「・・・・・・でも、政宗がいなかったら私、死んでたよね」
政宗「それは間違いないな。俺はお前の命の恩人ってわけだ。何か礼をしてもらわないとな」
「もちろん、お礼させて・・・・・・って言っても、あげられるものは、何も持ってないけど」
政宗「安心しろ。お前から物もらおうなんて、期待してない」
笑いながら、政宗は後ろから私を抱きすくめると、肩に顎を預けてくる。
政宗「さて・・・・・・何をしてもらおうかな」
耳元でからかうように囁かれて、びくん、と身体が震えた。
「・・・っ、あの、ちょっと、離して」
政宗「嫌だね」
「っ、くすぐったい、から・・・・・・!」
政宗「こら、暴れんな、落ちるぞ」
(無茶言わないで・・・・・・!)
秀吉「おい、政宗。いい加減にしとけ」
言い合っていると、横から呆れたように秀吉さんが政宗を叱る。
「わ、私のせいにしないで・・・・・・っ」
政宗に悪戯っぽく笑われ、かすかに顔が熱くなる。いつの間にか怖がっていた気持ちは、すっかり消え失せていた。
--------
-----政宗達が武家屋敷を後にした頃。
光秀「おや、秀吉達はまだ戻っていたないのですか」
信長「・・・・・・光秀か」
自室で書状に目を通していた信長の元へ、光秀がふらりと訪れた。
光秀「まさか、俺の方が早いとは思わなかった」
信長「貴様、また一言もなく姿を眩ませていたな」
光秀「悪い癖だと自分でも思うのですが、長年治らないので諦めてください」
悪びれず肩をすくめる光秀の態度を気に留めず、信長は笑みを浮かべる。
信長「貴様のことだ、手ぶらで帰ったということはないだろう」
光秀「もちろん、土産は持って参りました。良い知らせと・・・・・・悪い知らせを」
---------
ゆう達が安土城に帰り着いたのは、空が白み始める時刻だった。
秀吉「皆を少し休ませたら、信長様に今回の顛末(てんまつ)をご報告しないとな。謀反人捕縛以上に、上杉謙信と武田信玄が生きているって情報が手に入ったのは大きい」
家康「そうですね。謀反人は牢に転がしておきましょう」
政宗「ゆう、着いたぞ・・・・・・ん?」
腕の中を見下ろした政宗は、きょとんと目を瞬かせた。
秀吉「どうかしたか?」
家康「そういえば、さっきからなんか静かだけど・・・・・・」
秀吉と家康が政宗の腕の中を見やり、ほぼ同時に目を瞬かせた。
家康「・・・・・・寝てる」
秀吉「寝てるな」
政宗「本気で寝てるのか?」
「・・・・・・んー」
政宗が頬をつつくと、ゆうが小さく声を上げながら身じろぐ。
「・・・・・・そんなに・・・・・・早く、走らないでよ・・・・・・政宗のばか・・・・・・」
政宗「寝言で暴言とはいい度胸だな」
秀吉「そっとしておけ。緊張が解けたのと、夜通しの強行軍についてけなかったんだろ」
呆れたようにため息を吐く秀吉の傍らで、政宗はふっと笑みを漏らす。
政宗「丸腰で敵に突っ込んで行くところと言い、こんなに無防備で寝るところと言い、図太い女」
ゆうの寝顔を見下ろして、政宗は笑みを深くする。
政宗「しょうがねえ。部屋まで運んでやるか」
家康「・・・・・・政宗さん、楽しそうだね」
政宗「ん?・・・・・・そうだな。こいつが来てから、本当に退屈しない」
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(・・・・・・っ、政宗・・・・・・?)
愉悦のにじんた声に、背筋が凍りついた。
政宗の刃の先まで、殺気立っているのを肌に感じる。
(これは・・・・・・誰?)
別人のように敵を睨み据える政宗を前に、心臓が嫌な音を立てて鳴った。
政宗「最初に動いた奴から斬る。死にたくない奴は、下がってな」
大名「っ・・・・・・、おい貴様ら、何してる!とっとと迎え撃て・・・っ」
痺れを切らすように大名が発破をかけるけど、敵も凍りついたように動こうとしない。
政宗「どいつもこいつも及び腰か?そんな覚悟で俺達の首を取ろうなんて・・・・・・五百年早い」
大名「っ、ええい、かかれ!」
(あっ・・・・・・!)
政宗の刀がひるがえり、甲高い金属音が響いた。
政宗の部下「政宗様に続け!遅れを取るな!」
領民「お、おう・・・!」
掛け声を合図に、政宗の近衛兵と領民達め一斉に武士達に遅いかかる。
秀吉「将が先陣切るなよ、まったく・・・・・・おい、俺達も行くぞ。大名の捕縛を最優先た」
秀吉さんも刀を抜いて、部下と共に白刃の中に飛び込んでいく
(・・・・・・っ、どうしてみんな、平然と刃物振り回してるの。斬られたら、死んじゃうんでしょ・・・・・・?)
「わ・・・っ!」
現実感の無い光景に呆然としていると、ぐいっと腕を強く引かれた。
家康「なに突っ立ってんの、死ぬよ」
「家康さん・・・」
家康「弱いんだから、隠れてなよ」
「・・・・・・っ、あ、ありがとう」
家康さんが、刀の届かない場所まで引っ張って行ってくれる。
家康「領民連中も、弱い癖に出しゃばらないでさっさと逃げればいいのに・・・」
「え・・・?」
家康「巻き添え食らって、死ぬ可能性もあるんだから」
(死ぬって・・・・・・)
ため息交じりに呟く家康さんの肩越しに、敵の刀を弾き飛ばし、怯える大名との距離を詰めていく政宗が見えた。
政宗「邪魔だ、引っ込んでな」
敵の武士「ぐっ・・・・・・!」
(つ・・・・・・)
政宗の刀で脚に傷を負い、その場にしゃがみ込む武士達のうめき声が耳につく。
(ど、どうして・・・・・・、こんなことができるの・・・・・・)
燃えるような瞳で、政宗は次々と敵をなぎ倒していく。口元に宿る野生的な微笑が、私の身体を硬直させた。
(怖い・・・・・・)
(・・・・・・私とは、違う生き物みたいだ・・・・・・むちゃくちゃな人だけど、同じ人間だと・・・・・・思ってたのに)
けれど今、目に映る政宗は------
「つ・・・⁉︎」
家康「------ああもう、面倒くさいな」
顔を上げると、家康さんがすぐ近くで敵の刀を受け止めていた。
(・・・っ、こっちまで敵が来てたんだ・・・!全然気が付かなかった・・・っ)
「呆けてないで、あんたは逃げなよ、邪魔だから。裏門に俺の部下を潜ませてあるから、そこまで走って。・・・・・・早く!」
「は、はいっ」
家康さんの気迫に背中を押されるようにして、私は走りだした。
「は・・・・・・っ、はあ・・・・・・!う、裏門って・・・どこ⁉︎」
広間から離れ、予想外に広い武家屋敷の中をさまよう。
「中庭に出ても意味ないだろうし・・・・・・わっ」
廊下の角を曲がると同時に、真正面から誰かとぶつかった。
大名「何だ貴様は、どけっ!くそっ、どいつもこいつも使えない・・・・・・!俺の馬はどこだ⁉︎
(この人、さっきの大名・・・・・・?馬って、まさか逃げる気なの・・・?)
大名は焦りをにじませて、私を押しのけていこうとする。
(こんな修羅場になった元凶なのに?上司が責任も取らずに、命かけてる部下を放って逃げるなんて・・・・・・!)
------
政宗「死にたいって言うなら、俺が今すぐ楽にしてやるが」
男「・・・・・・っ、こんな奴のために、死にたいわけがあるか・・・・・・!」
------
さっき広間で見た光景が過ぎり、私は思わず大名の袖を掴んでいた。
「------ちょっと待って!」
大名「・・・・・・っ、無礼者!何をする!」
「っ、あなたのせいであんな乱闘になってるんじゃないんですか?それを放っておいて、逃げるのは無責任だと思います!」
大名「何だと・・・・・・っ、貴様、誰に向かってものを言ってる!」
大名は体勢を立て直すと、腰の刀に手を掛けた。
(つ!いけない、この時代の人って、刀持ってるんだった!武器も持ってないのに、何つっかかってるの、私------!)
頭に昇っていた血が、さあっと引いて行く。振り下ろされる白刃に、なすすべもなく目をつむった時だった------。
???「丸腰でなあにやってんだ、阿呆」
(え・・・・・・っ)
からかうような声と共に、誰かに抱き寄せられた。
政宗「あと一歩遅かったら死んでたな、お前」
からかうような声と共に、誰かに抱き寄せられた。
政宗「あと一歩遅かったら死んでたな、お前」
「ま、さ・・・・・・むね・・・・・・?」
目を開くと、私を片腕に抱いたまま、政宗が大名の刀を受け止めていた。
大名「おのれ、貴様・・・!」
大名「おのれ、貴様・・・!」
政宗「女相手に図星指されて逆上か。とんだ大名だな、あんた」
大名「っ!」
政宗が、鮮やかに大名の刀を押し返す。そのまま流れるような所作で、その喉元に切っ先をつきつけた。
政宗「広間の連中なら来ないぞ。もうまともに動けんのはお前だけだ、観念しな。今すぐ首を飛ばされたくなかったら、大人しくしてろ」
大名「く・・・・・・っ」
政宗「おい、家康、こいつ縛れ。ゆうの手柄だ」
家康「・・・・・・素手で大名捕まえようなんて、あんたバカなの?」
いつの間にかかけつけていた家康さんが、大名を縛り上げる。いまだ政宗に抱かれたままで、私はぽかんとそれを眺めていた。
(な、何が、どうなったんだっけ・・・・・・)
政宗「おい」
「・・・・・・・・・・・・あ、はいっ?」
政宗「怪我、してねえだろうな」
「・・・・・・っ!」
声がしてハッと顔を向けると、鼻先がくっつくほどの距離で、政宗がこちらを覗き込んでいた。
「え、えっと・・・・・・、私・・・・・・」
「え、えっと・・・・・・、私・・・・・・」
(あ・・・・・・)
政宗の腕についた血を見て、びくりと肩が跳ねる。白刃の中で見た、政宗の姿が頭をよぎって、一瞬身体がすくむ。
政宗の腕についた血を見て、びくりと肩が跳ねる。白刃の中で見た、政宗の姿が頭をよぎって、一瞬身体がすくむ。
(この手が、さっきまで刀を振るってたんだ・・・・・・)
政宗「どうした。怪我したのか?」
「っ・・・・・・だ、大丈夫。ありがとう」
政宗「なら行くぞ。秀吉と合流して、安土城に帰還する」
家康「政宗さん、帰りは馬、飛ばさないでください。疲れるから」
政宗「ちんたら走ってる方が疲れるだろ?」
廊下を歩きながら、ふたりは何事もなかったかのように会話している。
(さっきまで別人みたいな顔で戦ってたのに、ふたりとも、もういつも通りだ・・・・・・これが・・・・・・戦国時代の武将なの?)
元凶である大名を連れ、私達は安土への帰途につく。武士や領民たちも、けが人は出たけど、幸い死人は出なかったらしい。
男「政宗様・・・・・・さっきは本当に、ありがとうございました」
(あ、この人・・・・・・政宗に声をかけられて、真っ先に反乱を起こした・・・)
政宗「俺達は謀反人を捕らえただけだ。お前らに感謝されるいわれはねえよ」
男「でも、政宗様が言葉をかけてくださらなければ、俺は多分、無念のまま死んでました。それに、あんなに早く大名を捕まえてくださったお陰で、死人だって出なかった。感謝されるいわれは、充分すぎるくらいあります!」
政宗「わかったわかった。いいから早く帰れ。女房と子どもが待ってるんだろ」
政宗はひらひらと手を振って、さっさと馬に乗ってしまった。
(・・・・・・政宗が刀を振るったことを、感謝する人も、いるんだな)
秀吉「政宗、帰りはゆっくり走れよ」
政宗「はいはい。家康にも言われた。ほらゆう、乗れよ」
「・・・・・・うん」
当然のようぬ手を差し伸べられ、拒むこともできず政宗の前へと座る。
そのまま馬は、夜の闇を静かに駈けだした。
(結局帰りも、政宗の馬に乗ることになっちゃったな。あんな怖い場面を見たから、なんだか・・・)
(結局帰りも、政宗の馬に乗ることになっちゃったな。あんな怖い場面を見たから、なんだか・・・)
来る時は政宗の腕に身を委ねることで、緊張がほぐれた気がしたのに、今は逆に、緊張してぎこちない姿勢になってしまう。
政宗「ゆう、もっと寄りかかれ。安定しない」
「わっ・・・・・・」
腰に腕を回して、ぐいっと政宗の方へ引き寄せられた。意識的に離していた背中が政宗の胸にくっつき、余計に身体が硬くなる。
1. ごめんね
2. やめて
3. 近すぎじゃない? ♡
「ちょっと近すぎじゃない・・・・・・?」
政宗「お前、抱いとかねえと振り落とされるだろ」
(確かに、そうなんだけど・・・)
普段と変わらない口調で、政宗が言う。
(政宗に、あんなに怖い一面があるなんて、知らなかったけど・・・・・・戦国武将なんだから、当然、なんだよね)
自分に言い聞かせるように、心の中だけで呟く。
「政宗は、戦うのが・・・・・・好きなの?」
政宗「そこに命をかけてもいい信念がある戦いなら、嫌いじゃない」
(信念・・・・・・か・・・・・・。やっぱり、私にはよくわからないな)
「・・・・・・っ、ふ」
考え込んでいると、背後から政宗の笑い声が聞こえてくる。
「な、なに笑ってるの?」
「な、なに笑ってるの?」
政宗「いや、さっきのお前のこと、思い出してな。お前、無謀すぎだ。丸腰で大名捕まえるなんて、俺でもやらねえよ」
(う、確かにそうだけど・・・・・・あの時は、身体と口が勝手に動いて)
こらえ切れないというように肩を揺らして笑う政宗に、だんだん恥ずかしくなってくる。
こらえ切れないというように肩を揺らして笑う政宗に、だんだん恥ずかしくなってくる。
「わ、私だって、馬鹿なことしたと思ってるよ。だけど・・・・・・許せなくて」
(自分のために命をかけてる人たちを置いて逃げ出すなんて、・・・・・・見過ごせなかった)
政宗「ああ、勘違いすんなよ」
「え・・・・・・っ?」
力強い声がして、顔を上げる。政宗がこちらを見つめ、緩やかに口元に笑みを浮かべていた。
政宗「無謀だって言っただけで、悪いとは言ってねえよ。お前はお前の信条に従った。そういう生き方は、嫌いじゃない。お前なりに譲れない理由があって、そのために戦ったなら、恥じることはないだろ」
「・・・・・・っ」
(・・・・・・う、わ・・・・・・っ)
強い意志を宿した瞳に、どくん、と心臓が跳ねた。
(なんで、こんなに・・・・・・胸が熱くなるの)
今までこわばっていたはずの身体に、穏やかな熱が生まれたのがわかる。
(さっきまで、怖かったはずなのに・・・・・・ほんのちょっとの言葉で、怖がってた気持ちが全部・・・・・・どこかにいっちゃったみたいだ)
そっと、政宗の胸に体重を預けてみる。
(政宗の言葉って、変な力がある)
「・・・・・・でも、政宗がいなかったら私、死んでたよね」
政宗「それは間違いないな。俺はお前の命の恩人ってわけだ。何か礼をしてもらわないとな」
「もちろん、お礼させて・・・・・・って言っても、あげられるものは、何も持ってないけど」
政宗「安心しろ。お前から物もらおうなんて、期待してない」
笑いながら、政宗は後ろから私を抱きすくめると、肩に顎を預けてくる。
政宗「さて・・・・・・何をしてもらおうかな」
耳元でからかうように囁かれて、びくん、と身体が震えた。
「・・・っ、あの、ちょっと、離して」
政宗「嫌だね」
「っ、くすぐったい、から・・・・・・!」
政宗「こら、暴れんな、落ちるぞ」
(無茶言わないで・・・・・・!)
秀吉「おい、政宗。いい加減にしとけ」
言い合っていると、横から呆れたように秀吉さんが政宗を叱る。
横から呆れたように秀吉が政宗を叱った。
政宗「こいつの反応が面白いのが悪い」
政宗「こいつの反応が面白いのが悪い」
「わ、私のせいにしないで・・・・・・っ」
政宗に悪戯っぽく笑われ、かすかに顔が熱くなる。いつの間にか怖がっていた気持ちは、すっかり消え失せていた。
--------
-----政宗達が武家屋敷を後にした頃。
光秀「おや、秀吉達はまだ戻っていたないのですか」
信長「・・・・・・光秀か」
自室で書状に目を通していた信長の元へ、光秀がふらりと訪れた。
光秀「まさか、俺の方が早いとは思わなかった」
信長「貴様、また一言もなく姿を眩ませていたな」
光秀「悪い癖だと自分でも思うのですが、長年治らないので諦めてください」
悪びれず肩をすくめる光秀の態度を気に留めず、信長は笑みを浮かべる。
信長「貴様のことだ、手ぶらで帰ったということはないだろう」
光秀「もちろん、土産は持って参りました。良い知らせと・・・・・・悪い知らせを」
---------
ゆう達が安土城に帰り着いたのは、空が白み始める時刻だった。
秀吉「皆を少し休ませたら、信長様に今回の顛末(てんまつ)をご報告しないとな。謀反人捕縛以上に、上杉謙信と武田信玄が生きているって情報が手に入ったのは大きい」
家康「そうですね。謀反人は牢に転がしておきましょう」
政宗「ゆう、着いたぞ・・・・・・ん?」
腕の中を見下ろした政宗は、きょとんと目を瞬かせた。
秀吉「どうかしたか?」
家康「そういえば、さっきからなんか静かだけど・・・・・・」
秀吉と家康が政宗の腕の中を見やり、ほぼ同時に目を瞬かせた。
家康「・・・・・・寝てる」
秀吉「寝てるな」
政宗「本気で寝てるのか?」
「・・・・・・んー」
政宗が頬をつつくと、ゆうが小さく声を上げながら身じろぐ。
「・・・・・・そんなに・・・・・・早く、走らないでよ・・・・・・政宗のばか・・・・・・」
政宗「寝言で暴言とはいい度胸だな」
秀吉「そっとしておけ。緊張が解けたのと、夜通しの強行軍についてけなかったんだろ」
呆れたようにため息を吐く秀吉の傍らで、政宗はふっと笑みを漏らす。
政宗「丸腰で敵に突っ込んで行くところと言い、こんなに無防備で寝るところと言い、図太い女」
ゆうの寝顔を見下ろして、政宗は笑みを深くする。
政宗「しょうがねえ。部屋まで運んでやるか」
家康「・・・・・・政宗さん、楽しそうだね」
政宗「ん?・・・・・・そうだな。こいつが来てから、本当に退屈しない」
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「500年早い!」に笑った〜^ - ^
「そこに命をかけてもいい信念がある戦いなら、嫌いじゃない」か。。。
考えさせられるな、この言葉。色んな意味で。
後ろから肩に顎を預けてきて、「何をしてもらおうかな」って、想像つくな。やりそう政宗。
「離して」
「嫌だね」
このやり取り好き❣️