子供の頃、母親によく近くの個人スーパーにお使いに行かされた。そこまではごく普通の日常である。

 

 

 

 

私が嫌だったのは、お金を持たないで行くお使いだった。

 

 

 

 

 

 

母親は私に言った。

 

 

 

あれとこれを買って来てちょうだい。つけといてって言えばいいから。

 

 

つけで買い物をする。お金が無くて、それでも買い物をする場合の必殺技だった。

 

 

 

私は子供心に、つけで買い物をする事が恥ずかしかった。どうしても羞恥心は拭えなかった。

 

 

 

母親はお金が無い時には、決まって私をお使いに出した。

 

 

 

 

お店の人は事情を知ってか、意外と優しく親切だった。

 

 

 

そして意外とつけで買い物をする人がいる事も分かった。それはお店の人がつけで買い物をする人用に作ったノートのせいだった。

 

 

私はそのノートに救われていた。

 

 

 

つけでの買い物はもちろん父親には内緒だった。

 

 

 

 

 

 

 

今思えば、ずいぶん秘密の多い家だった。

 

 

私はその「秘密」にいつも緊張していた。

 

 

お父さんに言っちゃダメだからね。お父さんに言わないんだよ。内緒だからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

私の心はいつもドキドキしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued

 

 

 

 

 

注:画像は全てお借りしています。ご了承下さい。