母親は私の兄を溺愛していた。それは目に見えて、ハッキリ分かる程の事実であった。
だからだと思う。本当は早く出て行きたかったあの家を、それでも母親が出て行かなかったのは、当時まだ高校生だった兄が家にいたからなのだ。ちなみに私はその時はまだ小学生だった。
朝、母親はいそいそと兄の為にお弁当を作っていた。兄が学校に行くと母親は私にこう言った。
「お母さん、ちょっと寝るから。あんたそれ食べて学校行くんだよ」
いつものセリフだった。
私は哀しかった。またか、と思った。兄が学校に行くと決まって寝に行く母親を、私は恨んだ。
テレビの音量をほとんど聞こえないくらいにまで下げて、私は音を立てない様に気を付けてご飯を食べた。学校に行く時は、そっとドアに鍵をした。
私達はアパート暮らしだった。部屋は狭かった。寝ている母親に音が響くとマズかったのだ。
それは兄が高校を卒業するまで続いた。
あの家は兄でもっていた様なところがあった。兄の存在は相当だった!私の入る隙は無かった。
兄は高校を卒業すると、地元の某会社に就職して会社の寮に入った。このあたりの事はよく覚えていない。この時、私は中学生になっていた。
母親にとっては兄が家を出てしまって、それは心細かったと思う。
でも、と思う。母親にとって、まだ中学生の私の存在は何だったのだろうと、、?
そんなに私が嫌だったのか?何故?私が何をした?
私は自問自答した。
答えは出て来なかった、、。
To be continued
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