夕方、オーストラリアがホームでオマーン相手にまさかの引き分け。引き分け以上でワールドカップ出場権獲得となる条件が整い試合前から楽観的ムードが自分を含めてかなりあったと思います。しかし、そんなムードは試合終了後落胆と悔しさを感じる事になろうとは思ってもいませんでした。1-2のまさかの敗戦、負けると思っていなかったので選手・監督も正直受け入れがたい結果ではないでしょうか。そんな昨日のヨルダン戦を振り返ってみましょう。



 試合開始前から、日本人と判るや中継スタッフにまでブーイングを飛ばすヨルダンサポーターがかもし出す中東特有の雰囲気とデコボコピッチが苦戦を予感させてましたが、トップ下に香川、左サイドに清武を入れたサムライブルーは、試合開始からカナダ戦とは異なり積極的に仕掛けて主導権を握りました。選手たちの距離感もよく、ピッチ状態を考慮するといい感じでパスを回していた感じがあります。特に左サイドの清武・酒井高徳を起点にした攻撃は決定的なチャンスを生みました。



 しかし、その決定的なチャンスを前田が決め切れなかった。アウェイではチャンスが少ない。チャンスが来たら確実に決めなければ、勝利に繋げる事が出来ない。そんなチャンスが2度もあったのに運が無かったです。なんかデスゴールとマスコミから言われて以来、前田選手は精神的にナーバスになっているかもしれないと感じました。それでも、PK欲しさに縁起っぽい転倒を繰り返すヨルダンにはチャンスを与えておらず、0-0で折り返すならまあ大丈夫だろうとタカをくくっていました。



 それがアディショナルタイムのコーナーキックで試合の流れが変わってしまいました。カナダ戦でもやられたセットプレー。時間がわからない会場でアディショナルタイムの表示。これで前半終了かと安堵したのかもしれませんが、岡崎がマークを外したバニアテヤをフリーにしてしまいヘディングを決められました。まさかの失点、アラーの神に感謝するヨルダンの選手達と茫然自失の日本代表。嫌な予感がしたセットプレーの失点でした。



 0-1の折り返しとなりましたが、前半のプレーは内田がサイドでちょっとやられたぐらいで守備面は安定していたし、攻撃陣はサイドを基点にチャンスを演出していた。後は積極的にシュートを打ったり仕掛ければ問題ないと思っていました。ただ、後半の頭日本代表はペースを落として早く同点に追い付く雰囲気はなかったです。岡崎が仕掛けてシュートを打ったぐらいです。



 私は守備を固めてカウンター狙いのヨルダンの術中にはまるのではないかと不安になっていました。だから、早く同点に追い付いて欲しかったのですが、スコアを動かしたのはヨルダンの10番ハイルのスーパープレーでした。15分までに点が取れなかった日本に対し、中盤で酒井からボールを奪ってショートカウンター。スライディングでボールをつながれドリブルで駆け上がるハイルは、ブンデス・プレミアでレギュラーを張る酒井・吉田をぶっちぎり川島との1対1でも冷静に流し込みヨルダンに追加点をもたらしました。



 同点になるだろうと思っていたらまさかの失点。ヨーロッパのクラブレギュラー選手が、世界的に無名の選手にぶっち切られてしまう。アジアにも凄い選手がいるのだと思い知らされたシーンでした。それでも、ここでブラジル行きを決めるのだと強い決意を持つサムライブルーは諦めてはいません。ザッケローニ監督はハーフナーを投入。引いて守るヨルダンをこじ開けようと高さを使おうと試みます。



 サイドを基点に攻め込むと、中央の清武からペナルティエリアに侵入した香川が強烈なボレーシュート。攻守を見せていたシャフィーの牙城を崩し1点差に追いつきます。流石マンチェスターユナイテッドというプレーを見せると勢いは完全に日本に傾きます。オーバーラップした内田がペナルティエリアに侵入するとたまらずヨルダンがファール。PKが与えられ同点に追いつく絶好のチャンス。



 ブラジル行きがぐっと近づく状況でキッカーは百戦錬磨の遠藤。殆ど外した事がないPKを決めてくれるそう思っていました。レーザー光線が浴びせられる5年前と同様な状況で蹴ったボールは、読みきったシャフィーがシャットアウト。抱き合うヨルダン選手とは対照的に点を見上げた遠藤。まさに明暗を分けたシーンでした。ここで同点に追いついていれば流れは日本のままで試合を冷静に終わらせる事が出来たはずだったので、痛恨の失敗と言えるでしょう。



 その後は徹底して守り、遅延行為で何人もイエローをもらっても早く試合を終わらせたいヨルダンと時間が気になり何度も確かめるなど焦る日本。対照的な状況でザッケローニ監督が手を打ってもなかなか堅い守備をこじ開けられません。試合全体では10回のチャンスがあった日本が1点しか決められず。3回のチャンスしかなかったヨルダンが2度のチャンスを物にした。サッカーは最後は決定力だと思い知らされた1-2の敗戦でした。選手たちもそれは良くわかっており、首切りポーズで挑発されたザッケローニ監督は激高していました。



 これでブラジル行きはお預けとなりましたが、改めて課題が露呈した試合となりました。1つはセットプレーです。守備は簡単にマークを外してやられてしまい。攻撃では工夫無く単純に放り込むだけでした。2つ目はシュートの意識。日本は確実じゃないとあまりシュートを打たないことは昔からあります。しかし、アウェイではチャンスを作るのは難しいですから打てる時にはどんどん打つことも必要です。




 3つ目は長友本田は欠かせない選手だった。特に試合をコントロールするという点で本田の存在は絶大です。彼はキープ力があり、試合全体の流れを読む力に長けています。そう考えると焦って攻めていた昨日の試合を考えると本田がいればと思ってしまいました。また長友は後半に力を発揮する選手で、足が止まった酒井とは対照的にどんどん攻撃参加して活性化させます。こういういろいろな要素が重なっての敗北で非常に悔しいですが、課題も見つかり6月の2連戦でしっかりと立て直して決めて欲しいと思います。



●ザッケローニ監督コメント
Q:今の心境は?  

 「率直に、彼らが2ゴールして日本が1ゴールしか取れなかったという言葉しか浮かんでこない。私は結果から試合を分析するのではなく、ピッチの中で起きた現象を分析するタイプなので、今回も結果にとらわれすぎず、具体的な内容を見ながら敗因について分析していきたい。当然、今日のような内容でアウェイの日本が10回チャンスを作り、相手が3回チャンスを作るという戦いであれば、うちが勝たなければならない試合だった。




 今日のようにアウェイチームが、8回、9回、10回のチャンスを作ることは稀だと思う。チャンスに至るまでも簡単にはいかないが、カナダ戦のあとにも言ったように、最後のところでの決定力を高めなければならない。結局、今日の試合もカナダ戦もCKから失点しているので、相手にCKすらも与えてはならないのかという思いだ。リスタートがこのチームの唯一の課題だと思っている。今日の試合内容については、チームコンセプトやポイントといったものは選手たちがしっかり出してくれたと思う。また、中央からもサイドのスペースからも、積極的にチャンスを作ることができたと思う。今日のようにピッチコンディションが悪いなかでも、これだけのチャンスを作ることができた。対戦相手のヨルダンが、メンタル、走力、団結力といったもので我々に向かってくるのは想定内だった」




 「特にヨルダンについて言及するつもりはないが、どちらかというと自分たちのチャンスを決め切れなかった試合だった。サッカーのゲームというのは、いくつかのエピソードで成り立っている。たとえば、うちはPKを失敗してしまった。ヨルダンはチャンスをすべて決めてきた。当然、W杯の切符を勝ち取りたかったので、この結果は非常に残念だ。(出場権獲得が)後回しになってしまったが、気持ちとしては今日、何としても勝ち取りたかった。チーム全体としてもこの試合には非常に落胆しているし、落ち込んでいる状態だ。試合内容を考えると、もう少しこちらに運が味方してくれてもよかったと思う」


Q:先発メンバーは意図通りに動いてくれたか。また、試合後にヨルダンの選手と言い争っているように見えたが?  「ゴール前での精度以外に関しては満足している。ボールをスピードを持って動かし、それを中央から、サイドからバリエーションを持って攻めていくことはよくできた。前半の早い段階で相手チームが選手交代したのは、それが理由だったと思う。チームに出した指示は、幅をもってビルドアップ開始すること、ゴール前に入ったら積極的にゴールに向かっていく選手にボールを供給しようというのを出した。そういう意味で、もう少しバイタルに入ったあたりで裏へのボールの供給があっていいのかなと思うし、サイドに散らすシーンが散見された。2つ目の質問については、自分はあまり挑発されるのが好きではないタイプなので、そういうことになった」


Q:6月に対戦して勝ったときと比較してヨルダンの力をどう感じたか?  「こちらが主導権を握ったことは変わりないし、ヨルダンがハートと団結力を持って戦ってくるのも変わりなかった。6月の試合と今日とで何が違ったかと言えば、埼玉ではゴール前でのチャンスを決め切ったが、今日はそれがなかった。それと6月に比べると、ヨルダンのディフェンスラインがより集中していたと思う」


Q:この試合で唯一チャンスが少なかったのが後半最初の10分間だったが、何か問題点を感じたか?  「おっしゃるとおり、10分間の休憩をそのタイミングで取ったのだと思う。みなさんも90分間試合を見たと思うが、日本は非常に運動量が高く、全員でサッカーをしていた。サイドバックの選手にしても、一人が上がれば一人が戻るということを連続して繰り返していた。90分間、それはできないということで、10分間休憩を取ったのだと思う。



試合後、香川のコメント
負けてしまい、くやしい。もっと点を取って勝てていた試合。それに尽きる。アウエーにもたくさんのサポーターが来てくれた。その前で勝つことができずにくやしい。次はホームで勝てるようにがんばりたい。



試合後、長谷部のコメント
勝って決めたかった。W杯予選は簡単なものではないということを思い知らされた。これがW杯予選のアウエーの雰囲気。難しい試合だったが、残念に思う。(次の試合まで)間が空くが、次にホームで勝てば(サポーターの前で)決めることができる。次の試合で決めるという強い気持ちで臨みたい。



試合後、岡崎のコメント
決めるところで決めないとこういうことになる。試合はうまく展開でてきていたが、自分のミスがあり、失点してしまった。ゴールを決めないと勝てないということを痛感した。いい形を