杏子・ほむらとの戦いを避けようと、まどかはさやかのソウルジェムを投げ捨てた。魔法少女の証ぐらいにしか思われていなかったアイテムが、さやかの身体から離れた瞬間突然意識を失い倒れてしまった。無事ほむらが回収して事なきを得たが、魔法少女は普通の人間とは異なり、魂で練成したソウルジェムが本体であり、肉体は入れ物に過ぎない事が明らかとなった。その衝撃の事実は、さやかと杏子には大きな衝撃を与えた。しかしキュゥべえにとっては、何故そこまで魂のありかにこだわるのか理解出来なかった。



 さやかの自宅に戻り「騙していたのねあたしたちを!何で教えてくれなかったのよ?」強く抗議と詰問をされても、聞かれなかった、知らなくても不都合は無いなどと言い張るだけ。しかも魔女や同じ魔法少女である杏子と戦っても痛みを感じなかったのは、ソウルジェムに魂を移したからだと言い張るだけだった。そして改めて痛みとはどういうものなのか、身を持って判らせようと槍で腹を刺された時と同じ痛みをソウルジェムに与えると、さやかはうめき声を上げ悶絶したまま動けなくなってしまった。



 自分のおかげで先頭から生き残る事が出来たし、慣れれば痛みも遮断する事が出来る。キュゥべえの言葉は、一見すると都合良く出来ている。しかしそれは同時に人間としての自分を捨てる事になる。「どうしてあたしたちをこんな目に合わせようとするの?」自分はもう人間ではない事を悟り、そういう事にしたモノに対して改めて講義するさやか。「戦いの運命を受け入れる代わりに叶えたい願いがあったのだろう。それは間違いなく実現したじゃないか。」恭介の身体の回復を願った事は実現した。これはギブ&テイクだとキュゥべえは主張すると、もう反論する材料は残されていなかった。(自業自得、等価交換、いろいろな言葉が当てはまると思いますけど、世の中自分だけが利益を得る事はありません。必ず何かの代償を支払うのです。どんな願いでも叶えるという甘い言葉が、戦いの運命と人間ではない魔法少女という存在に変える代償を与えた。そこから先は個人の考えが大切になると思います。)



 翌朝、自分の真実の姿を知ったさやかは学校を休んだ。まだ幼い少女には、自分が人間ではない事が受け入れられず、命綱となったソウルジェムをただ見つめ、ベッドの中に塞ぎこんでいた。一方親友の姿が見えずにまどかは、何があったのか不安になりほむらにいろいろ話を聞こうと屋上へ呼び出した。「ほむらちゃんは知っていたの?じゃあどうして教えてくれなかったの?キュゥべえはどうして酷い事するの?」改めて全てを知っているほむらに尋ねた。「言ったとしても誰も信じてくれる人はいなかったわ。あいつは酷いなんて思っていない。何もかも奇跡の正当な対価だと言い張るだけよ。」真実を言っても信じてもらえない、あいつは人間の価値観は通じない。ほむらは相変わらずドライに言い放った。



 まどかはほむらの言葉を聞いて、親友の身体が普通でなくなり、あまりにも奇跡の代償が大きすぎる事がつらかった。「ただ友達の身体を治してあげただけなのに。」どうして善意の願いが、酷い結果を招くのか、酷い現実に涙が止まらなかった。「起きた奇跡なのよ、あの少年が再び演奏出来る日は来なかった。奇跡はね、本当なら人の命でも贖える(あがなえる)物じゃないのよ。それを売っているのがあいつ!」奇跡は命を代償にしても起こせるものじゃない。それを餌に魔法少女を生み出しているのがキュゥべえだと、ほむらは強い口調で訴えた。



 しかしさやかが魔法少女になったから自分と仁美は助かった過去があった。何とか助けてあげたい気持ちを訴えたが、ほむらの言葉は冷静かつ冷酷だった。「美樹さやかの事は諦めなさい。引け目を感じたくないからって、借りを返そうだなんて思うのはやめなさい。」何も力が無いのだから諦めろ。出すぎた真似をするな!まどかが冷たいと思うのは当然だという言葉が返って来たが、それも過去の経験が長いから出て来た言葉だった。(友達を助けたい気持ちはある。しかしほむらはまどかも同じようにしたくない。最初から違和感を持っていた事が段々判って気がしました。つまりなぜまどかを魔法少女にさせたくないか。それはマミさんが言うようなライバルが邪魔と言う事ではなく、自分だけが背負った運命で魔法少女を増やしたくない思いがあったからではないでしょうか。ただその理由についてはまだこれからだと思いますけど。)




塞ぎこんでいたさやかの所に杏子がやって来た。「ちょっと面貸しな。話がある。」外に呼び出すと自分が今の力を手に入れた事で自由な事が出来ている。だから別に魔法少女になっても後悔していないと杏子は言い切った。「あんたは自業自得なだけでしょ。」自分が選んだ道だから報いを受けている。さやかは自分とは違って自業自得だと返答した。逆に自分が選んだのだから、全部自業自得にすれば良い。他人の為に願いを決めたなんて考えなければ楽だ。楽観的な杏子には、他人の為に願った事が悲劇を生み出してしまった過去があった。



 さやかを案内したのは、その悲劇の舞台となり火事で焼けた教会だった。杏子の父親は正直すぎる人間で、新しい時代には新しい信仰が必要だと信じていた。だから自分の主張を伝えようと、教義に無い事まで伝えてしまった。当然そんな事は誰も聞き入れてはもらえず、信奉者達は次々と離れて行った。世間からは鼻つまみ者として扱われ食べる物も事欠く有様だった。さやかがプレゼントされた林檎を捨てたのを見て激怒したのは、そういう過去があったからだ。間違った事なんか一言も言っていないのに誰も聞いてくれないしわかって貰えない。



 それがどうしても納得出来ず悔しかった杏子は、その時初めて出会ったのがキュゥべえだった。願い事を叶える代わりに魔法少女になって欲しい。いつもの常套句を言われ、父親の訴えが認められるだろうと思い迷わずに契約した。聴きに来る人間は爆発的増加するその裏で、魔法少女になった杏子は、魔女退治に勤しんだ。親子が望む世界を救う為、表の信奉と裏の魔女退治表裏一体の両輪で上手くいくはずだった。しかし作られた物事はどこかで破綻をきたしてしまうのが世の常だ。



 杏子が魔法で人間を集めた事が父親にバレ、「人の心を惑わす魔女」だと罵られた。魔女を退治していた自分が魔女だと言われる報復とも取られる言葉がきっかけとなり、家族は崩壊への道を歩み始めた。父親は酒に溺れ身体を壊しあげくの果てに自分を残し家族は無理心中を図り死んでしまった。自分の他人に対する願いが家族を崩壊させた結果、他人の都合も知りもせず勝手な願いで不幸になり、それを身に沁みて理解した。「その時誓ったんだよ。もう二度と他人の為に魔法を使わないと!」杏子の利己的な生き方は、自分の願いの代償から得た結果だった。(こういう過去があったとはね。凄く父親思いで優しい女の子だったのに、自分の一人よがりの願いで他人を不幸にしてしまった。杏子がさやかに過去を話したのは、悲劇から決めた自分の行き方を伝える為。これは同じ魔法少女しか伝えられない事だと思います。)



 たださやかには違和感があった。自分勝手、好き勝手に生きている杏子が、何故自分を心配するような事を言うのか?「あんたは対価として高すぎるものを支払っているんだ。」自分と同じ境遇なのだから、代償を取り戻すように生きれば良いと思ったのだ。しかしさやかの気持ちは初志貫徹揺らぐ事は無かった。「あんたの事は誤解していた。それは謝るよ!けどねあたしは他人の為に祈ってからずっと後悔していない。この力は使い方次第では、いくらでも素晴らしいものに出来るはずだから。それにあたしはあたしなりに戦うよ。それが邪魔だと思うなまた殺しに来れば良い。」あくまでも正義の味方であり続けようとするさやか、その姿を見て杏子は自分の考えが否定され苦虫を噛み潰した表情でただ去り行く姿を眺めていた。(これは倫理観の問題であり考え方の違いです。そうですね例えるなら仮面ライダーでしょうか。人間ではない改造人間にされたのに正義の為に戦った。それは何の特にもならないのに。その生き方がさやかのやりたい生き方だと凄くリンクしています。逆に杏子はリンゴを多分盗んだのでしょう。自分勝手でやりたい放題、それは悪人の生き方ではないでしょうか。その違いが如実に現れました。)



 翌日、いつもの元気な姿をまどかと仁美に見せたさやか。ただの風邪だと言って心配掛けまいとする様子で、自分の運命を微塵も感じさせないように振舞った。すると松葉づえを使いながらも登校する恭介が登校してきた。希望に満ちた姿を見て一応安堵の表情を浮かべるが、まどかに促されても遠慮した。そんな煮え切らない様子に気付いた仁美が、放課後さやかを呼び出し意外な事を切り出した。「私ね、前からまどかさんやさやかさんに秘密にしていた事がありますの。私、前から上條恭介君のことお慕い申しておりました。私は自分に嘘を付かないって決めましたの。さやかさん、あなた自身の本当の気持ちと向き合えますか?」さやかは誤魔化していたが、おそらく仁美は恋のライバルになると気付いてあえて恭介に恋していると告白した。



 そして明日の放課後恭介に告白する事を告げ、ずっと見つめていた時間のアドバンテージを与え一晩どういう結論を下すのか、さやかに機会を与えた。友達だから正々堂々勝負したい気持ちが篭っていた。突然の告白に驚きを隠せないまま、魔女退治に出かけようとした時、まどかがやって来てた。そこで境遇を知っている親友に自分の正直な気持ちを明かした。「仁美を助けなければってほんの一瞬だけ思ったよ。正義の味方失格だよ、マミさんに顔向け出来ない。仁美に恭介を取られちゃうよ、でもあたし何も出来ない。あたしもう死んでるし、ゾンビなんだよ。こんな身体で抱き締めてなんて、キスしてなんて言えないよ。」嫉妬心、自分の現状、全てを口にして感情が溢れて涙が止まらない。まどかはただ慰めるように抱き締めるだけだった。(最後の魔女との戦闘は、さやかの中で1つの結論が出た感じでした。つまり魔法少女として戦って行く姿勢です。エンディングの予告でも言ってましたけど、自分の為に魔法は使わずにあくまでも正義の味方として振舞う。それでもダークな部分がうごめいている。矛盾が多くはらんでいる感じがしました。杏子も自分の行動に矛盾が出ていますし、2人の出会いが物語をどんどん動かしている気がしました。)