勝てるとは最初から考えなかった。しかし全力を出し切った試合で、選手達は勝っている気持ちが伝わる素晴らしい試合だった。それは岡田監督も同じで、試合後のインタビューは「悔しいです!」涙を流しそうになりながら答えたのが印象的でした。しかしよくよく試合を観てみると守備的な布陣で、オランダは全力で攻めてきたのは後半最初ぐらいで、後は結構ルーズなマークでやらせてもらった感じがしました。



 だからそういうときだから、引き分けに持ち込めたら最高の結果だったのですが・・・!1つのチャンスを物にするかしないか?それが強豪国とそうじゃない国の違いだと改めて痛感させられた試合でした。開始直後から、予想通りオランダがボールをキープ。なんと支配率は70%を超えていました。対する日本は、ボールを持たせるのは想定内で、自陣に引いて前線からプレスを掛けて、カウンターを狙う作戦でした。昨年9月の親善試合とは明らかに異なり、クレバーな試合運びをしていたと感じました。



 オランダのキーマンスナイデルにボールを入れさせず、ファンペルシーを孤立させ、サイドからの攻撃もシャットアウト。岡田監督の狙い通りの展開で、前半を0-0で折り返しました。「後半勝負の展開に持ち込めた!」私は試合を観ていて、勝てる可能性もわずかに出て来たけど、引き分けには持って行けると結構にんまりしました。しかも日本代表は、オランダのスター選手に臆する事無く戦ってした姿勢が素晴らしかった。ただオランダがこのまま終わるはずが無いと不安も感じていました。



 その不安が、後半開始直後から的中してしまいました。明らかにハーフタイムで、ファンマルバイク監督の指示があったと思いますが、オランダは前線に人数を費やし、より攻撃的なスタイルに変更しました。岡田監督は、後半20分過ぎからの勝負だと考えていたそうですが、最初の10分間のオランダの攻撃は、速く・強く・上手かった!猛攻に日本守備陣は、ゴール前で釘付けになりました。そして後半8分、悲運としか言えないゴールが決まってしまいました。闘莉王のクリアーボールをファンペルシーが拾ってスナイデルへパス。迷わず右足を振り抜いたボールが、弾き返せると思った川島の腕に当たり、ちょっとありえない方向へ飛びゴール。



 喜ぶオランダイレブンとは対照的に、悔しそうな川島の顔が印象的だった今大会よくありがちな失点となってしまいました。しかし日本選手は、下を向かずここから反撃に転じます。特によかったのが大久保です。非常に身体が切れていて、当たり負けず俊敏な動きでオランダゴールへ積極的にシュートをしますが、ゴールに結びつきません。このプレーに関し、周囲の選手を使わなかった事に対し、試合を観戦したオシム前監督は「エゴイスト!」と酷評しています。FWだからある程度はエゴイストにならないといけないが、周りも見なければならない。その使い分けの難しさを感じました。



 日本も攻撃の姿勢を見せ始めた時、いよいよ背番号10中村俊輔が登場。俊輔のボールキープ力を生かし、チャンスを演出して欲しい狙いだと思いました。しかし俊輔のプレーは、はっきり言って物足りなかった。突破しようとしない、パスは横パスばかり!走ってボールを受けようとしない。今のコンセプトから外れているプレーにがっかりしました。シュートチャンスの時にも打たなかった。サポーターから批判が出るのは当然で、この大会が代表の区切りになってもいいと思いました。



 更に岡田監督は、攻撃的なカードを投入。FW玉田・岡崎を投入しました。守備から攻撃へ!1点を取る姿勢を示しました。ただ玉田のポジションがどこなのかはっきりせず、完全に試合から消えていました。2トップなのかわからず、中途半端感が否めません。こういうときに流れを替えられる選手は、仕掛けられる選手です。田中達也や石川がいればと思ったのは、私だけではないでしょう。やっぱり選手選考に疑問を感じました。



 オランダもエリアとアフェライを投入。2人ともスピードがあって厄介な選手ですから、岡田監督は左サイドバックの長友を右サイドにチェンジしました。エリアには、昨年やられているのでその対策でしたがこれは非常に効いていました。しかし飛び出しの上手いアフェライに裏を取られて2度川島と1対1の場面を作られました。このピンチを川島が気迫のセーブで防ぎ、追加点を獲られたら終わりだったチームを救いました。流石にこの時は声出しましたね。



 ピンチの後にはチャンスあり!残り5分を切って、闘莉王を前線に上げてパワープレーを仕掛ける日本。それが実りロスタイム直前、闘莉王がヘディングで落としてボールはペナルティエリアへ転がり、走りこんだ岡崎が左足のダイレクトボレー!決定的なチャンスでしたが、無常にもボールはクロスバーの上。思わず天を仰いだ岡崎と日本中のサムライブルーを応援するサポーターの皆さん。全員が悔しがったまま、試合は0-1の悔しい敗戦で終了しました。



 12年前のフランス大会と同じですが、今回の敗戦は互角以上に戦って負けたのだから、次に繋がる試合になったと思います。選手達も岡田監督もデンマーク戦に向けて、気持ちを新たにしてインタビューに答えていました。とても誇らしく、私を含めてサポーターの皆さんも勇気をもらったはずです。次の試合は午前3時30分からと時間はきついですが、これは絶対に見たい試合になりました。デンマークに勝つつもりで集大成を見せて欲しい。



オランダ代表 1   0 日本代表
     0(前半)0    

     1(後半)0
     

得点

ウェスレイ スナイデル(後半8分)


警告
グレゴリー ファン デル ビール(前半36分)


     9 シュート 10
     11直接FK 18
     1 間接FK 2
      4 CK 5
     2 オフサイド 1
  61 ボール支配率(%) 39



岡田武史監督のコメント
「今日、オランダという強い相手ですが、なんとか勝点を取りたいということで、選手は全力を尽くしてくれたと思います。しかし残念ながら及ばなかった。たくさんの応援してくれた方に本当に申し訳ないと思いますが、われわれは下を向いている時間はなくて、次のデンマーク戦に向けて、またチームを、まず疲れを取り、そして最高の試合ができる状態にしていきたいと思っています」




本田圭佑(CSKAモスクワ/ロシア)のコメント

「とても残念です。もっとやれると思いますし、今日は良くなかったけど、切り替えて。まだ次があるんで頑張りたい。当然、攻められる時間は長くなるんで、しっかり守備をしながら、点を取りにいくということ。チームとしてそういう気持ちで臨みました。(次のデンマーク戦は)どちらにしても勝ち点が必要になってくるんで、そういう戦い方が求められると思いますし、今日はあまり楽しくなかったんで、初戦同様に楽しみたい。(オランダは)あまり意識はしていなかったですけど、あらためてこれくらいの相手には通用しないということが分かりましたし、自分を高めていかないと、と思いました」




岡崎慎司選手(清水エスパルス)のコメント
「決めたかった。力が入ってしまった。ああいうシュートを転がすのが本当のストライカー」



前日本代表監督のイビチャ・オシム氏のコメント

 「オランダ戦も最後にいいチャンスがあった。岡崎のシュートがそう。攻撃しながら我慢、守備をしながら我慢することが大事」「チャンスがあれば絶対にものにする、という殺し屋の本能が足りなかった」