夏休み、涙子が特別講習を受けた学校では、アンチスキルの仕事を行う教師鉄装綴里が、誰も居ない職員室で仕事に追われていた。「お忙しそうですね?今日はあちらの仕事もあるのですか?」用務員の男性から声を掛けられ、綴里は時計を見た。「うああもうこんな時間。では失礼します。」このままではアンチスキルの集合時間には間に合わない。慌てて走ったが、天然なのかドジっ娘なのか何も無い所で転んでしまい結局列車に乗れなかった。「完璧に遅刻だ!」残されたのは散らばったプリントと叫び声だけだった。(まさか今回は綴里が主人公だとは。ドンくさいと思っていましたけど、天然でドジっ娘だと印象付けられました。相棒の黄泉川さんは怖いですからね。このでこぼこコンビの活躍はどうなりますか?)



 「盛大に遅刻じゃん!夏休みは生徒が浮つくから、ジャッジメンとだけじゃなくこちらも出張っているのに、お前が浮ついてどうするじゃん?」急いで走って来た綴里を説教したのは、アンチスキルの同僚体育教師の黄泉川愛穂。「すいません!」弁解も余地も無くただ平謝りする綴里。そんな時愛穂の携帯電話に強盗事件発生の連絡が入った。「失敗は仕事で取り返せ。いいな鉄装!」遅刻の失敗は、事件解決に貢献して返せ。愛穂の期待を込めた言葉に強い意志をしめる返答をしたが、綴里はまたもやってしまった。人質を救出した心の緩みの隙を突かれ強盗に捕まり、人質にされてしまったのだ。「しょうがないなあ。ちょっと貸せ!」呆れ顔の愛穂が、盾を借りて投げ付け強盗を撃退。無事事件は解決したが、足を引っ張るだけだった。



 その頃美琴達は、学園都市のゲーセンで遊んでいた。パンチゲームで高い点数を出した美琴に対し涙子は対抗心を燃やし対決していると「そろそろ完全下校時刻だな。ほら行って来い!」通り掛った愛穂から帰宅するよう指導するように言われた綴里。「ほらあなた達もうすぐ完全下校時刻ですよ。そろそろ帰りなさい!」ビシッとアンチスキルらしく指導するが、美琴達の顔を覚えていて互いにAIMバースト騒動の礼を兼ねた挨拶をした。しかも4人からは、肌の手入れがなってない。顔色が悪いなどの駄目だしをされ「大変なんですねアンチスキル。どうですか日ごろのストレスをこれにぶつけませんか?」同情されたあげくパンチゲームをやらないかと誘われた。「じゃあやってみようかな・・・・」つい仕事を忘れゲームをやろうと考えてしまった綴里。「乗せられてどうする!ほらそっちも完全下校時刻じゃん。」呆れ顔の愛穂から活を入れられ手、また任務を果たせなかった。そして違うゲームをやっていた少年鴻野江遥希も愛穂に目を付けられた。「クラスメイトなんですけど、ちょっと近寄りづらいんです。」遥希は、飾利と涙子のクラスメイトだが、近づきづらい雰囲気を持っていた。(何をやっても駄目!そんな印象を植え付けるのには、ぴったりですよね。性格も凄く分かり易く描かれていましたし。まあまさかこのゲーセンが今回の物語の舞台になるとは思いませんでした。遥希との邂逅が、思いも寄らない展開になるとは考えないですよねこの時は。)



 夜は銭湯へ向かい1日の身体の疲れを取るアンチスキルの2人。「最近なんか変じゃんお前。今日も遅刻するわ、強盗に人質に取られるわ、学生に乗せられるわ。元々出来のいいアンチスキルとは言えないが、弛んでいるんじゃないか?」風呂に入りながら愛穂から強烈な駄目出しが、綴里に飛んだ。しかし1日の仕事は終わり!全てを忘れて同僚の月詠小萌を加えた3人で腰に手を当てムサシノ牛乳を一気飲み。そのまま屋台に繰り出し酒を飲んでいると「鉄装綴里、お前の弱点は弱気の虫だ。もっとガツンと行くじゃん!」酔っ払いながらも愛穂からもっと強気で頑張れと励まされた。「ガツンか!もっと頑張らなきゃ。」アンチスキルらしく頑張らないといけない。気持ちを新たに翌日も綴里は、アンチスキルとして学園都市の巡回を行った。しかし道案内をしようとしても、現在位置が把握出来ない。迷子の子供が泣いてどうにも出来ない。手信号で交通整理しても混乱させるだけと全部失敗だらけ。



 ため息を付きながらゲーセンの前を通り掛ると、遥希が入っていく姿を目撃した。「君、もうすぐ完全下校時刻ですよ。早くお家に帰りなさい。」今度こそ責任を果たそうと注意したが、遥希はゲームを続けた。しかもそのゲームは、綴里にとって懐かしいやりこんだ格闘ゲーム「激掌9」。既に殆ど無いと思っていたが、まだ稼動している事を喜んだ。すると遥希はいう事を聞いたのかうざがったのか、1人ゲーセンから帰って行った。結局アンチスキルらしい事は何も出来ないまま1日の仕事は終了。銭湯で愛穂と小萌は、気持ちいい飲みっぷりで牛乳を飲んでいたが、綴里は浮かない顔もまま。屋台に場所を変えても酒は殆ど口にしない。「そうだ趣味は無いのか?たまには好きな事をしてみるじゃん気晴らしじゃん、羽目を外してぱーっとじゃん。」酔っ払った愛穂のアドバイスを聞いたが、翌日もやり残した1学期の評定の仕事に追われ、アンチスキルの仕事は飲み会のおごりという事で回避してもらった。(悩めば悩むほど上手くいかないのが仕事です。大切なのは自分の出来る限り貢献する事。背伸びしてもどうしようもない事がありますから。ただここでは綴里の悩みがもう少し深く掘り下げてもよかったのかもしれないです。)



 綴里が仕事を終えた頃には、既に日は西に傾いていた。学校から帰宅する途中「羽目を外す」という言葉を思い出し、通り掛ったゲーセンに立ち寄った。そこでは遥希が激掌9をプレーしていたが、敵に負けて悔しそうな表情を見せた。「大技狙いすぎよ。もっと攻守のメリハリつけなきゃ。中途半端な攻撃をするならやらない方がましだもん。ちょっと代わってくれる?このキャラ凄い好きなの!」様子を見ていた綴里。やり慣れた先輩ゲーマーからのアドバイスをして、隠しキャラジェイミーを出してプレーしようとした。しかし小萌から携帯に緊急連絡が入り「ジェイミーエンド熱いから必ず観てね。」プレーを遥希に託し、屋台で酔いつぶれた愛穂を背負って送る羽目になってしまった。「鉄装先生、今日は楽しかったですか?昨日は?その前は?」帰り道小萌から唐突に質問された綴里。「特段楽しくは・・・仕事も忙しかったですし。」質問に対してそっけなく答えた。「私は楽しいですよ。この街には色々な生徒が居ますし。困った生徒も居ますけど私生徒が大好きでなんです。」笑顔の小萌は、色々な生徒が居るけど自分は生徒が好きで楽しいと答えた。(綴里も生徒が好きだから頑張ろうと思ったのでしょね。愛穂・小萌は、とても心配していい先生です。それを如実に現したシーンでした。こういう同僚が居る事は、励みにもなりますしとても人には恵まれているなあと思いました。)



 翌日も違った場所の見回りが、アンチスキルの仕事だった。「私はLエリアから行きます。」気分が吹っ切れたのか、綴里は積極的に見回り場所を決めて歩き始めた。しかし出会ったのは、当麻の元にやって来たシスターのインデックス。「3秒ルール」と称し、落としたドーナツを食べようとしたが、清掃ロボットに取られて取り返そうと必死になっていた。「そんなルールは道路ではないけど・・・・」注意しようとした綴里の声は、インデックスには届かずまた失敗。更にはハンバーガショップの全商品を買い占めようとした姫神秋沙を止めようとしたが、ここでも止めさせる事が出来なかった。更に写真入のペンダントを探していた少女に声を掛けたが、地震と勘違いしてベンチに身を潜める始末。結局ペンダントも少女が見つけ、何も貢献出来ないまま「自分頑張っているのかな?」存在意義を失いかけていた。愛穂と小萌が銭湯の湯に浸かっている頃、またゲーセンの前に通り掛った綴里。激掌9をプレーしていると、ジェイミーを使う人間が乱入してきた。「これは負けられないって。」落ち込んだ顔はどこへやら。すっかり元気を取り戻し「大宮ジェイミー」プライドに掛けて負けられないと気合いが入った。(自分は駄目だと思った時、激掌9に再び出会った。今となったらアイデンティティの代名詞的になっている感じがして、綴里の気持ちが上向くきっかけになった。ジェイミーってザンギエフとかウルフとかそういう系統ですか。プロレス技が得意。ただそういうキャラを使う女性は観た事無い。ジェフリーやブランカもいませんね。)



 第1ラウンド積極的に攻めた綴里のジェイミーだが、攻撃はかわされラリアットから追い討ちを決められ先取された。ガチで悔しがる姿は子供みたいで、第2ラウンド意地でも取り返すと気合い十分。大宮ジェイミーと呼ばれていた実力を披露して圧勝した。「よっしゃイーブン!次の勝負は絶対取る。」仕事で落ち込んでいた顔は既に無く、やる気に満ち満ちていた。そして第3ラウンドは一進一退の攻防戦。追い詰めたと思った綴里が、超必殺技で勝負を決めようとした。しかしそれは相手に読まれていた。かわされると逆に超必殺技を決められ万事休す。「負けた!でも久々に燃えたなあ。」負けたのは悔しいが、仕事では感じられなかった充実感を得ていた。「大宮ジェイミーねえ?」叫んだ名前を聞いたのは、対戦相手だった遥希だった。ジェイミーエンドを観ようとずっとやりこんでいた。「激掌10出ないかなあ。そうすれば君に勝てるのに。」完全下校時間が過ぎていたので、綴里が自宅まで送っている時ふと激掌10の事を口にした。「出ないよ!あんな古いの。でも楽しみにしていますよ大宮ジェイミーさん。」新作は出ないだろうが、また対戦出来る事を楽しみにしている。遥希の顔はちょっと緩み自宅へ帰って行った。




 後日ゲーセンに見回りに行くと美琴達が、また集まっていた。「転校したんだって。雑草学園中等部に。そこは激掌ってゲームで有名なWEEDが経営する学校で、高校から専門的に勉強するんだって。」涙子から遥希が、夏休みに別の学校に転校した話がもたらされた。突然の事でビックリする綴里。しかし表情には笑顔がこぼれ、また次の見回りに出るのだった。(ちょっと強引なエンドで、いきなり元気になるのは変だろうと思いました。ゲームでつなげるのはどうかなって思いますし。だけど駄目なアンチスキルが、少年の道を開いたのはよかったと思います?ゲームが出ないなら自分で創る。それを動かしたのもあの対戦があったからだろうし。)