ビッグスパイダーのアジトに乗り込んだ美琴と黒子は、蜘蛛の入墨を背中に持つ男に助けられた。彼こそ本物の黒妻綿流であり、好きな牛乳の名前を言おうとした時「ムサシノ牛乳」という女性の声が聞こえた。現れたのは綿流やビッグスパイダーの名前を知り、動揺していた美偉。「先輩生きていたんですね。どうして何の連絡もくれなかったのですか?私はてっきり・・・・」死んだと思った先輩が現れた。しかし何の連絡も無かった事に苛立ちを隠せない。「安心しろ!すぐに消えるさ。」ジャッジメントの腕章を隠す美偉に迷惑を掛けない。綿流は何も追及せずにその場から立ち去った。(こりゃ出来てると直感で思いましたね。あの冷静な美偉が、あそこまで動揺するのですから。特別な人なのだとわかりますよね。こういう色恋沙汰は、このアニメには皆無でした。だからどういう風にアレンジするのか注目して観ました。)



 翌日様子を見ていた美琴は、ファミレスで飾利と涙子に綿流と美偉が関係について切り出した。「黒妻って言ったらビッグスパイダーのボスですよ。それがどうして?」「そんな寄ってたかって女の子を襲う奴と?」2人にとって黒妻とは、蛇谷である。だからとてもじゃないが、ジャッジメンとの美偉との関係性を信じられない。「だからその黒妻じゃないのよ。えっと・・・・ちょっと黒子アンタからも説明しなさい。」はっきりしない美琴は返答に四苦八苦。とりあえず黒子に説明するよう求めた。「この件に関して静観しますわ。」お姉さまのいう事でも黒子はだんまりを決め込んでしまう。すると涙子が苛立ちを募らせ、直接聞く事を提案した。「固法先輩、支部に出て来ていないのです。まだ能力者狩りも解決していないのに。」美偉はジャッジメント支部に姿を見せて居ない事が、飾利の口から明らかになった。「足を運んだ方が宜しいですわ。」直接自宅を訪れればいい。黒子の提案で4人は、美偉が住む寮へ向かった。



 出迎えたのは、ルームメイトの柳迫碧美だった。「美偉の後輩?あいつ今出掛けているのよ。」あいにく美偉は寮には居なかった。「ああ折角黒妻の事聞きたかったのに。」チャンスを逸し悔しがる涙子。「ああちょっと待って。」立ち去ろうとする4人を碧美が呼びとめた。「黒妻が戻って来たのね。まさか生きていたのね!とりあえずそっちの話を聞かせて。」綿流が戻って来た事を知ったが、話を聞かせろとせがむ美琴と涙子を制止。まずは経緯を話すように求めた。「そっかなるほどね。昔美偉はビッグスパイダーのメンバーだったのよ。」事情を聞いた碧美が、明かした事実は、美琴が想像した関係とは大きく異なる、元ビッグスパイダーのメンバーだったという事だった。「ありえないですよ!」「先輩はジャッジメントですよ。」事実を告げられ、4人の内飾利と涙子は特に信じられない様子で詰め寄った。「先輩はレベル3の能力者。それが何故無能力者の集団のスキルアウトなんかと」能力者が無能力者の集団に属していた。黒子はどうしても理解出来なかった。(まさかビッグスパイダーのメンバーだったとは驚きです。美偉は元ヤンって事になるのかと驚きました。アイドルとかにも元ヤンって居いますし、ヤンキー先生だっているわけですから、元ヤンからジャッジメントという事も十分ありえます。ただ能力者が何故無能力者の集団に入ったのかは、理由は判りませんでしたね。)



 「あなたには無いの、能力の壁にぶつかった事?それが中々乗り越えられず、暗い気持ちを持て余した事。あの頃の美偉は、どこいても居場所がないって感じだった。そんな時輝いて見える人達と出会ったのよ。スキルアウトって言っても、気の置けない仲間と馬鹿やっていただけ。最初は心配したわ。態々能力者だって事を隠してまで居る所なのって。だけどビッグスパイダーは、私が私で居られる場所だと言っていたわ。疎外感、自分探し、学園都市に居ると必ず掛かるはしかみたいなものね。」能力の限界を感じていた美偉。それが喧嘩をして相手を叩きのめす綿流の姿に、オーラや輝きを感じた。彼らは無能力者だが、自分も振りをして共に時間を過ごし居場所を見つけた。そんな思いは必ず掛かる心の病だと碧美は強調した。「でもはしかに掛かるのは一度だけです。」悩むのは1度だけ!今はジャッジメントだから責任を果たすべき。美琴は、過去を知った上で言い放った。(居場所と自分らしさ。これらはもの凄く密接な関係だと思いますね。自分らしさが発揮出来ず、苦悩したり壁にぶち当たるとどうしようもない。挙句の果てに疎外感を感じてしまう。美偉は綿流と出会ってそれを払拭する事が出来た。涙子もレベルアッパーを使った弱い自分から立ち上がろうと一歩を踏み出した。心情を深く掘り下げる事で、この作品は非常に考えさせられる事が多い。自分らしさってありのままに振舞う事だけど、今は立場などが絡んで、中々発揮出来ない場合が結構見受けられますし。)



 美偉は恋していた綿流との思い出の場所にいた。そこはビルの屋上で見晴らしが良く、手すりにはあいあい傘が記されていた。1人立ち尽くし綿流の真意が知りたいと考えて居た頃、美琴達は寮を後にしていた。「スキルアウトだった事もショックだけど、何でジャッジメント休んでいるの?何か関係あるわけ?」過去と今は関係ない!話を聞いた美琴には、未だに美偉の行動が納得出来ないままだった。「そんな簡単に割り切れないのじゃないかな?過去があって今の自分があるのだから。それに過去が特別ならば尚更・・・」美偉の気持ちをくみ取る涙子は、払拭出来ない過去だから割り切れないと告げた。一方ビッグスパイダーのメンバー達の中から、綿流にやられた蛇谷が「偽者」ではないかと疑い始める者が現れ「蛇谷って言われてビビっていたよな?それじゃやっぱり・・・・」疑念が大勢を占め始めた時、背後から銃を突きつけた蛇谷が苛立ちながら「誰がビビってるって?そんなこと考える暇があったら、あの偽者野郎を探し出してぶち殺せ!黒妻綿流は2人もいらねえだよ。」手下達に命令を下した。



 しかし本物の存在は恐怖心を募らせ、電話が鳴っただけでもびびった。「キャパシティーダウン?ああ上手く使っているよ。こっちもゴタゴタしていてな能力者狩りどころじゃねえ。はあ何だと?」能力を減退させるキャパシティーダウンを渡した者からの電話だった。情報内容を聞いて蛇谷は、驚きを隠せなかった。もたらされた電話の情報とは、スキルアウトに対抗してアンチスキルが、翌日の朝10時から第10学区の通称ストレンジの一斉摘発を行う事だった。メールは美偉にも届き、意を決して寮から出て行った。ジャッジメントの腕章を持たず、固法美偉個人として。そして再び思い出のビルに1人立っていると「やっぱりここだったのですね。ひょっとして黒妻に明日の一斉摘発の事知らせる為ですか?」行動を予測した美琴。もしかして情報をリークするのではと思い問いただした。「ここは私の居場所じゃない。でもねそれを教えてくれたのは黒妻なのよ。」美偉も自分の居場所じゃない事は判っていた。それを知らしめてくれた綿流は、蛇谷を見せてられず爆発に巻き込まれてしまった。それから2年が経過して、未だに払拭出来ない思いが残っているのだ。(過去があって今がある。凄く重い言葉ですね!教えてくれた張本人が、生死不明となった。しかも恋する相手だから心配でたまらない。過去を紹介して今の事件に絡めるのは、やっぱり重い話になりますね。美琴はそういう経験がなく、現状の方が大切だと思ってしまうのは致し方ない。過去が心に引っ掛かる事があるのは、経験しないとわからない。)



 「でもおかしいですよ!先輩はジャッジメントじゃないですか?犯罪者を逃すとか。」過去にこだわる美偉の行動が、美琴には納得出来ない。「ああ間違ってるよな。気が付いた時には、ベッドの上だった。施設に送られて出て来れたのは半年前だ。お前にも会わない方が良いと思った。ビッグスパイダーを作ったのは俺だ。だから潰すのも俺だ!アンチスキルじゃない。」美琴の言葉に同調したのは、思い出の場所に戻って来た綿流。過去を清算して間違った方向に向かった組織を潰しケリをつけようと考えていた。「行かないで!あなたはいつでもそう。勝手に思いやって、行動して!そんなだから私は・・・・・」2年前の悪夢は繰り返したくない。真意を知った美偉は、1人で何でも仕様とする綿流の腕を掴み引き止めた。「もういいから帰れ。今居る所を大切にしろよ。」それでも自分で解決しようして、美偉を引き離そうとする綿流。「私も行きます。もうあんな思いをしたくないのです。今とか昔とか関係ありません。居場所が違っても私の気持ちは変わりません。」また大切な人を危険に巻き込みたくない。美偉の綿流に対する想いは、立場とかそういう事で揺らぐ事はなかった。(珍しく黒子がまた良い事言いました。最近多いな黒子のイメージアップ作戦でしょうか?人を好きになるのは、人の本質を好きになること。過去からの積み重ねがあって、よりそれが強く結ばれる。でもそれがビッグスパイダーとして、けじめをつける事ではなく、ジャッジメントとして行動させるのが美琴のやり方なんですね。)



 翌朝アンチスキルが、一斉摘発を開始しようとしていた。同じ頃美偉は、ケリをつけようと赤いジャンパーを着て単身ビッグスパイダーのアジトに向かった。しかし黒子の計らいで、ジャッジメンとの腕章を身に付けさせられた。「固法先輩格好いいですよ。」一緒に居た美琴も非難した善事とは打って変わって笑顔だった。そして綿流は単身アジトに乗り込み「終わらせに来たぜ!わかっていると思うけど俺は強えぞ!」ビッグスパイダー壊滅宣言をしてから、メンバーを次から次へと蹴散らした。「確かにアンタは強い。そんなのは能力者と一緒だ。数と武器には敵わねえよ。」多勢に無勢!蛇谷は武器を突き付け、綿流を殺そうと仕向けた。「待ちなさい!蛇谷君あなた、随分下衆な男に成り下がったわね。数に物を言わせてその上武器?」そこに現れたのは、ジャッジメントとしての美偉だった。「うるせえ!俺達を裏切ってジャッジメントになった奴に何が判る。ほらやっちまえ。」動かないメンバーを無理矢理でも従わせて、殺すように命じた蛇谷。しかし黒子と美琴が登場して、八方の阻止とキャパシティーダウンの破壊を行った。



 「あなた達は手を出さないで。たまには先輩を立てなさい。」決着を自分でつける!美偉の言葉が発端となり、綿流と共にビッグスパイダーのメンバーに立ち向かった。しかしメンバーの中に武器を隠し持っている者がいた。綿流はそれに気付かないと、美偉の透視能力(クレアポイアンス)でそれを発見。更に隠して持っていたスタンガンで気絶させた。「それがお前の能力か。すげえじゃねえか。なら俺も負けていられないな。」能力を見せられ、綿流の闘志に火が付きあっという間に蹴散らすと蛇谷を追いつめた。「おいこれを見ろ!どかんだぞ!」身体の周りにダイナマイトを仕込み、ライターを付け全員を脅す蛇谷。「昔は楽しかったよな!馬鹿やってさ。それがどうしちまったんだ?」かつての仲間の変貌振りを見て綿流も理由が判らないが、思いっきり原をぶん殴った。「しょうがなかったんだよ。俺達には居場所が無い!ビッグスパイダーをまとめていくには、俺が黒妻じゃなきゃ駄目なんだ。だからアンタは今更要らないんだ。」追い詰められて本心を明かしたが、蛇谷は綿流を殺そうと刃を向けた。「居場所って言うのは、自分らしく居られる場所の事だぜ。」とっさの判断で顔面に一発パンチを入れると、居場所の意味を口にした。



 ビッグスパイダーは、アンチスキルの到着後全員拘束された。「終わった終わった!ほら美偉。」自分が作った組織にケジメをつけ、綿流は手錠をかけるよう求めた。「黒妻綿流、あなたを暴行障害により拘束します。」過去を払拭した美偉は、きちんと自分の仕事を果たした。しかし彼らは立場が変わっても冗談が言い合える仲は、変わる事は無かった。「こんな所でも誰かが誰かを想う場所ってあるのよ。」事件が解決して美琴は、2人の思い出の場所で美偉の想いが詰まっているのだと物思いにふけっていた。(今回は今までの中で、一番秀逸だったと思います。居場所は自分らしい場所であり、美偉の居場所はジャッジメンとだと綿流もわかっていたから、あえて拘束を求めたのだと思いました。そんな色々な人の思いがある学園都市ですけど、皆必死に生きている街なのですね。それがどうやら危機に瀕しそうな気がしてしょうがない。)