幻想御手(レベルアッパー)を利用した者達が、次々と意識不明に陥った。調べても身体に以上は無く、グラビトン事件の犯人介旅初矢の情報を得て病院を訪れた美琴と黒子は、大脳生理学者で調査を依頼された木山春生と出会った。以前駐車場に止めた車を一緒に探した間柄の美琴は、暑いと思い服を脱ぎだす「脱ぎ女」を忘れておらず驚きの表情を見せた。「暑いなあここは真夏日でも冷房を入れない主義なのか?」病院内が美琴のせいで発生した停電により、冷房が使用できない状態だった。非常用電源は医療用に優先的に利用され「また始まった!」呆れ顔の美琴が見た事ある光景、服を脱ぎ下着姿になり始めた。「殿方の目がありますの!」脱ぎ女初体験の黒子には、非常識この上ない行動。しかも本能のまま動く春生から情報を聞き出せる状況ではなかった。



 同じ頃涙子と待ち合わせをしていた飾利。連絡が無く気になっていると、いつもの様にパンツの柄をチェックする待ち人が現れた。実は見せたいものがあるというメールを貰い、飾利は呼び出されたが何を見せたいのか見当もつかない。一方呼び出した涙子は、小躍りして早く見せたい気満々。「手に入れたのよ噂のアイテムを。刮目(かつもく)しなさい!」自信満々の様子で見せたのは、何の変哲も無い音楽プレイヤー。実は隠しダウンロードした曲が入っているのだが、見せられた飾利は何が何だか判らない。「中身が問題なのよ!後で教えてあげる。」能力をアップ出来るアイテムを手に入れ嬉しい涙子。ただ直ぐには中身を教えなかった。(涙子は欲しい物を手に入れて自慢したい気持ちがありありだが、副作用については知る由も無い。一方脱ぎ女から情報を聞き出そうと美琴と黒子も一筋縄ではいかない。ただこういう人ほど凄いんですよね。)



 2人の説得で春生服を着て、ようやくレベルアッパーの副作用についての議論が、場所を変え喫茶店で始まった。「君達は昏睡状態に陥った学生は、レベルアッパーの副作用のせいだと考えているのか。しかし何故私に?」アイテムの存在を知り2人の考えを確かめ、何故自分に聞くのか疑問に思った春生。「能力を向上させる事は、脳に干渉する可能性が高いですの。だからレベルアッパーが見つかったら、脳に影響があるか専門家の先生に調べて欲しいですの。」レベルアッパーの副作用が、干渉する脳に影響があるから調べて欲しい。黒子は明確な理由を答えた。「むしろこちらからお願いしたいね。」判らない現象だから調べたい。大脳生理学者として研究したい気持ちを伝えた。真面目な議論が続く中春生は、外で様子を窺っている涙子と飾利の存在を指摘。2人も同じ席に座りレベルアッパーについての内容を聞いた。(脱ぎ女は只者ではなかった。学者だから調べたいというきちんとした考えを持っている。脱ぎ女というのはただの性格ですね。大雑把というから周りの目を気にしないというか。)



 美琴と黒子にもレベルアッパーを持っている事を教えようと思った涙子。「先生はレベルアッパーを持っている人を保護したいんですって。」「調査中ですのでハッキリした事は言えませんが、使用者に副作用が出ています。それに容易に犯罪に走る傾向が見受けられますの。」レベルアッパーに関する集約した意見を伝える2人。思わず音楽プレイヤーを隠し、涙子は動揺してアイスコーヒーを春生のスカートにこぼしてしまった。時刻は夕方になり春生は、以前教師だった頃の記憶を思い出したという感想を残し去って行った。黒子と飾利もジャッジメント支部に戻ろうとしたが、涙子は突然姿を消した。「やっぱり手放したくない。まだ使ったわけじゃないんだもん。黙っていれば良いよね。」能力に憧れる気持ちが、レベルアッパーを手放さない、自分に都合のいい解釈を思ってしまった。「どうしたの?急にいなくなるんだもん。心配するでしょ。」後を追い掛けた美琴が声を掛け落ちていたお守りを拾った。いつもカバンに付けているそれは、能力に憧れる娘の健康と安全を祈り母親がくれたものだった。



 「優しいお母さんじゃない。佐天さんを気遣ってお守りをくれたんでしょ。」エピソードを聞いて娘思いの母親だと告げた美琴。「科学的根拠はないけど、母親が自分を考えてくれる気持ちはわかります。でも時にそれが重い時もあるんです。何時までもレベル0だし。」自分の気持ちを尊重して送り出してくれた。しかし自分は何時まで立ってもレベルが上がらない。つらい思いを涙子は明かした。「レベルなんてどうでも良い事じゃない。」レベルなんて関係ない。美琴の言葉に心が揺れ動き、ついに翌日1人外に出た時害があると考え音楽データを消去しようとした。「約束だっただろレベルアッパーを譲ってくれるって。」ジャッジメントの支部で、飾利が絞り込んだ取り引き場所の1つが涙子がいる近くで、小太りの男が不良達に約束が違うから金を返せと抗議していた。しかし不良達はレベルアッパーを使っておりボコボコにしていた。涙子は隠れて様子を窺いながら、ジャッジメントかアンチスキルに連絡をしようとした。「やば充電切れ?しょうがないよねあっちはいかにもって奴が3人。こっちはこないだまで小学生やってたし、あたしなんかが何か出きる訳じゃ・・・・・」自分に言い訳して1度は逃げた。しかし涙子は引き返した。



 「止めなさいよ!その人怪我してるじゃない。すぐにアンチスキルが来るんだから。」アンチスキルが来るから暴行を止めろ。勇気を出して不良達に訴える声が木霊した。「ガキが生意気言うじゃねえか。何の力もない奴にごちゃごちゃ指図される覚えはねえよ。」強烈な蹴りを壁に食らわせ、涙子の頭を鷲掴みにする不良のリーダー。「もらい物の力を自分の実力を思うあなた方に彼女をとやかく言う権利はありませんわ。ジャッジメントですの!」しらみつぶしに現場を当たっていた黒子が登場。現行犯で拘束すると通告して、不良の2人をテレポートを活かして簡単に倒した。「面白い能力だな!テレポートって奴か。俺達はレベルアッパーで手に入れる前は、ジャッジメントにびくびくしていたんだ。だからようでけえ力が手に入ったら、お前達をギタンギタンにして絵と思っていたんだぜ。」リーダーは力を手に入れた。今まで怯えていたジャッジメントを叩き潰せる。目の前のジャッジメントに猛然と襲い掛かった。(ジャッジメンとの力が絶大だから不良達も黙らせていた。だけど能力が増す力が入れば、でかい顔していた奴らを潰せる。悪い奴が力を手に入れたらろくなことない典型例ですね。)



 テレポートを用いて黒子は、素早く攻撃をかわしまわりこもうとした。しかしリーダーの姿は無く想像出来ない場所に現れた。直接体内に攻撃をしようとしても予想外の方向へ避けられ、挙句の果てには逆方向からの蹴りを食らい廃墟ビルまでぶっとばされた。「あばらの2・3本は逝ったか。まさかテレポート出来ねえって言うんじゃねえだろうな?こっちはまだ遊びたりねえんだ。ほう今度は鬼ごっこかいいぜ。けどなビルの外に逃げたらデブと女を殺すからな。」蹴りを食らわせ勝ち誇るリーダー。何とか体力を回復させて局面を打開を図ろうと知る黒子。しかし廃ビルは不良達の溜まり場であり、リーダーは隅々まで知り尽くし先回りして膝蹴りを食らわした。「鬼ごっこももう飽きた。そろそろケリ付けようや。可愛そうだなどんな能力にやられたのかわからず死んでいくんだからな。」黒子にリーダーから最後通告されるが「わかっていますの。周囲の光を捻じ曲げる目くらまし。足がありえない角度から来る。ちなみに私のテレポートは、物体を瞬間移動させる事が出来ますの。だから窓ガラスをテレポートさせ、鉄筋コンクリートの柱を折る事が出来ますのよ。これが最後通告です、大人しく投降してください。」トリックアートという光を捻じ曲げる能力を使っていると見破った上で、柱を折っているから投降しろと警告した。(光を捻じ曲げるというのは、ありえない状況作るのにちょうど良いのでしょう。余りよく判らないですけど、相手が目を使うのだから目くらましの芸当としてはピッタリなのでしょう。)



 「はあ?追い詰められているのはおめえだろうが。」状況が判らず自分が追い詰めていると思っているリーダー。「今日の黒子は危ないですのよ!覚悟なさい小ざかしい目くらましごと叩き潰して差し上げますわ。」通告を聞かなかった。黒子は窓ガラスを全てテレポートして、支える柱を真っ二つに斬った。足元が揺れリーダーが気付いた時は、既にビルは破壊され恐怖のまま地上に落とされて腰を抜かしたまま、レベルアッパーの曲が入った音楽プレイヤーを渡した。「ふざけないで!ただの音楽プレイヤーじゃないですか。」押収したレベルアッパーの正体に黒子は、とても信じられず嘘をついていると思わずにはいられなかった。事件は無事解決したが、自分と同じ年の女の子が事件を解決した姿に涙子は触発されてしまった。「嫌だなこの気持ち。あたしと同じ中学生で、女の子でなのに。違う世界に住んでいる気がする。能力者とレベル0では何もかもが違う!」能力者の黒子の活躍に嫉妬を覚え、同じになりたい気持ちが沸き上がった。そして声を掛けて来た同級生の女の子達が、レベルアッパーの噂話をすると「あたしそれ持ってるんだよね。」自分が持っている事を明かしてしまった。(憧れる気持ちと嫉妬心が重なり合い良くない方向に進んでいるのがわかります。まず友人達が興味を示し使って効果を見極めた上で使ってしまうのか?それとも判った美琴達が止めるのか?今回の話が伏線で、来週はレベルアッパーという悪魔の道具を巡る一連の話のターニングポイントになりそうですそれにしても涙子は中々ずるい所もあります。)