迷子の八九寺真宵を自宅に送り届けようと、教えられた住所に向かった暦。しかし中々辿り着けなかった。そこでひたぎは怪異蝸牛の情報を教えた忍野の元へ向かった。解決の為のアドバイスを得る為に。一方また公園に戻って来た2人だが、ここでも真宵の我侭が始まった。「私はお腹が空きました。食べ物なら何でも好きです。阿良々木さんの手なんて美味しかったです。」暦の手をかじった真宵の言葉。「しゃれにならんなこりゃ。」ガチでヤバイ気がする。暦の心の中に不安がよぎり始めると「お前はお母さんに会いたいんだよな?」ごくごく当たり前の質問をした。当然帰ってくる答えは子供らしい答えが返ってきた。



 「お母さんに会いたいのは当たり前です。阿良々木さんはご両親と一緒だからそう思えないのです。先ほどから聞いていると、ご両親の事を余り好いていないようですね。」母親に会いたいのは当然。両親と一緒であまり良いとは思っていない暦には分からない考えだと意図が含まれていた。「俺は中学までは、すげえいい子だったんだ。育ててくれる事も感謝してたしな。でも高校で勉強に付いていけなくなって、その反動で反抗しているんだ。そんな事だから僕は、何時までも大人になれない。子供のままなのさ。」両親に反目する自分は、自立する大人ではなく子供のまま成長していない。暦は自分の抱いているありのままの気持ちを明かした。「私、これでもクラスではかなり発育がいいのですよ。」身体だけが成長して、精神が追いつかない。そんな暦に対し自分の身体は大人っぽいと自慢する真宵。すると取っ組み合いをした時、思わず触って発育のよさを感じた手がエロイしぐさを見せ始めた。(目を中心にキャラクター全体を映さない。非常に斬新な表現だと思いました。それに互いが抱いている思いがぶつかり合い、今まで反目し合っていた2人の思いが共有し始めている。まだぎこちないですけどね。)


 

 「別に減るもんじゃないし。増えれば良いだろう。それに俺は他の女の子の胸に触る機会なんてなかったよ。」「私は謝罪を求めています。ははん阿良々木さんは童貞野郎なんですね。」おっぱいを触った事で始まった取っ組み合いの喧嘩。反省の色がない暦と小学生ながら童貞野郎と揶揄しながら、何でも噛み砕きそうな歯をむき出しに迫る真宵。こうなったらもう70年代アニメの煙の上がった懐かしの喧嘩シーンが再現され、高校生が小学生女子に強引なセクハラ行為に及んでいる光景が展開された。「それだけは僕ではないと信じたい。」そんな情けない県下の中心に自分がいる。そんなのはありえないと思いたくなる暦。5分経過した後の手には、いくつもの歯型が刻まれていた。(あららららぎさんとかわざとじゃないかと思うぐらい噛んだり、完全に敵対心むき出しの現状。これじゃあ本当に高校生が小学生にセクハラしているだけって感じです。しかしこの小学生はムカつくやり方で、高校生を怒らせる。意外と狡猾な少女だったと言う感じです。ここまでの内容は特に進展は無く、また喧嘩してるよ何なんだろうって思いました。)



 喧嘩は一段落して、歯形は何事も無かったかのように消え去った。すると暦は口論をした妹への良い訳を考え憂鬱になっていた。「実は私の両親も喧嘩ばかりしてました。取っ組み合いじゃないですよ。口論です。一人娘の私が言うのは変ですけど、仲の良い夫婦だったらしいです。でもいつも喧嘩ばかりしてました。私はお母さんもお父さんも好きですが、結果的に2人は別れてしまいました。しかもお父さん本当に嫌いになったみたいで、私をお母さんに会わせようとしないのです。私いつかお母さんの事をいつか忘れてしまう。お母さんの事を好きじゃなくなっちゃうかもしれない。だからとても不安なんです。」神妙な面持ちで真宵は、自分の両親について。会えなくなったら母親を嫌いになり忘れてしまうという不安感を持っていると本心を口にした。そこに自分以外の女の匂いを嗅ぎ付けたひたぎが戻って来た。(シャンプーの匂いで翼と見破った女。男を腰の形で見分けが付くと言って、自分の腰の形は素晴らしいからいい赤ちゃんを産めると自画自賛の女戦場ヶ原ひたぎ。シリアスだったのにこの落差の差が、ある意味この物語を物語っている事になるとは思いませんでした。)



 翼が来ていたことを暦に問いただすと「来てたよ。たまたま通りかかっただけだって。それで忍野から話聞いてきたんだろ?」たまたま通り掛かって来ただけと答えると逆にひたぎに忍野から聞いてきた蝸牛についての情報を明らかにするよう求めた。「蝸牛から解放される方法はとても簡単だそうよ。蝸牛に付いていくから迷う。付いていかなければ迷わない。蝸牛の場合怪異の方が、人間に寄っているのよ。だから阿良々木君が、蝸牛から離れれば解決するのよ。」暦が蝸牛から離れれば迷わずに解決すると忍野のアドバイスを噛み砕いて説明した。しかし暦は真宵が蝸牛から離れれば良いと主張した。彼女が蝸牛に取り付かれていると考えたからだ。「だから私は謝らないといけないって言ったのよ。でもそれはわざとじゃないわ。私が間違っていると思ったから。だってそうでしょ2年以上もの間、私は普通じゃなかった。おかしいのは自分だって思うのは当然だと思うわ。八九寺ちゃんよね?私には見えないのよ。」ひたぎの一言一言は、暦の焦りと動揺を誘った。それは真宵が見えていない自分がおかしいと思い、暦の視線が正しいと思っていたから。見えていない言動は決してわざとではないが、ずっと見えていないのに見えている振りをしていたからこそ謝罪したのだ。(つまり暦は怪異に関わる話の中心人物。だからそういう光景に出会うのが普通になっている。しかしひたぎは体重を取り戻したから、人間的には普通になっており真宵が見えないのが大多数の人間の兆候であると気付いた。たしかに今まで真宵を知る人物に巡り合いませんでしたからね。これは暦にとってはつらい話です。見えていない小学生を相手にマジで考えていたのですから。)



 そして真宵の本当の話が語られ始めた。暦にしか見えない真宵ではなく、本当の母を捜し求める一人娘の物語である。一人娘は両親が離婚後父親に引き取られた。アルバムには母親の顔が写っているが、自分の記憶の中では既に風化されて思い出せない。そこで母の日に一人娘で会いに行こうと旅立った。しかし会う事は出来なかった。出来なかったのは、青だったはずの横断歩道で車と衝突。命をそこで絶たれた悲しい出来事があったからだ。「その一人娘というのは、私です。」もう本当の真宵はそこには居ない。語っているのは異なる生き物。目的地に辿り着けなかった者が、他者の帰り道を阻害すると告げたひたぎ。はっきりと見えているはずの真宵の声も聞こえず、姿も見えない。見えていたのは独り言を喋り暴れていた暦だけだったのだ。「何で言わなかったんだ。見えないって。」信じられない気持ちで疑問をぶつける暦。「言える訳無いじゃない。私がまた変になったと思いたくないから。」普通の人間が見えている者が見えない。それがまた変になった兆候だと思いたくない。ひたぎのシンプルな気持ちがはっきり主張された。



 「そうか自分が変に思われたくなくて、見えていない八九寺の事を見えている振りをした。そうか蝸牛に行き当たったのは僕だったのか。」ひたぎの気持ちを理解し、ようやく自分が蝸牛を遭遇していた事を自覚した暦。その遭遇条件と対処法として「忍野さんが、蝸牛に会う条件は家に帰りたくないことと言っていたわ。でもそれぐらいは誰にでもある。だから蝸牛への対処は簡単なのよ。ついて聞かずに離れれば良いの。そんな悪質な怪異でもないし、悪質な怪異でもない。阿良々木君、その娘は死んでいるわ。だから怪異に取り付かれているんじゃな無くて、怪異そのものなのよ。」忍野からのアドバイスを伝えたひたぎ。しかし暦には、真宵を母親に会わせたい純粋な思いで今自分は行動しているのだと訴えた。「そう私はあなたが問題に気付いた時、私の為に助けてくれたと思った。でもそうじゃなかった。阿良々木君って誰も助けるのね。でも怪異の問題に気付いた人は沢山いたけど、阿良々木君みたいなのは、阿良々木君だけだったから。忍野さんからの最後の伝言を伝えるわ。今回限り使える裏技を伝授しようと。じゃあ行くわよ!勿論綱手さんの家よ。それからI Love you.」自分の力で怪異に困っている人を助けるのが暦の役目だと自覚している。それは自分だけに向けてはいないが、気付いて行動したのは暦だけだった。そんな暦に告白して、蝸牛の問題を片付けようと忍野から与えられた裏技を実行すべく3人は公園を後にした。(まさか告白するなんて思わなかった。自分に一生懸命やってくれたのは暦だけだったから心が動いたのでしょう。しかも願い事を叶えて欲しいというのは、口実だったようでまさかまさかのフラグ成立には参りました。ちなみに真宵のシュールなおめでとうございますは本当にシュールでした。



 再び住宅地の中を歩く3人。蝸牛の特徴は情報的記憶つまり知識が無い事。知識が無ければどこにどう行って良いのかわからない。だから土地勘の無い暦は勿論。見えていないひたぎも土地勘があっても迷ってしまうのだ。しかしそれを逆手に取り、区画整理された新しい道ばかりを選べば、蝸牛は知識も無く知らないから迷わせる事が出来ず、連れてくる人間は目的地に到着する事が出来るのだった。その場所は私有地となっており、既に他人の手に渡っていた。「うああああああんただいま帰りました。」しかしそこは紛れも無く綱手家跡地。呪縛霊だった蝸牛は、目的が成就して天に上り消えて行った。「お疲れ様でした。まだ返事を聞いていないわ。私はそこまであなたに恩を感じていないわ。阿良々木君は誰でも助けるわ。でも私はたとえ羽川さんを助けていてもあなたに惹かれたわ。強いて言うなら一緒に話すのが楽しいだけ。そんなに話していないからもっと話をしていたい。あなたはちょっと優しくされたメンヘル処女に目を付けられたのよ。ちゃんと答えてね。考えているなんてふぬけた答えをしたら軽蔑するわ。」自分のために尽くしてくれた暦を愛してしまったひたぎ。女からの告白に対しきちんと答えるよう求めた。「1つ条件を出していいか?約束みたいなものなんだけど。見えていないものを見えている振りをしたり、見えているものを見えていない振りをしたり、そういうのは無しだ。意見が食い違ったらちゃんと話し合おう。これが約束だ。」嘘は付かないで欲しい。ちゃんと話し合おう。暦は条件を提示するとひたぎはそれを了承して、晴れてカップル成立となった。(よかったよかった!じけんをきっかけに2人の愛が成就しました。しかも幽霊となって真宵が戻って来て、笑顔で再開したり。人というのは出会いに寄って大きく変わるのだなと再認識させられた良作でした。新シリーズが始まりますけど、ひたぎがレギュラーで登場するなら問題ないですね。)