期末試験と並行して、生徒会主催のクリスマスパーティの準備が始まった。竜児と大河が、準備委員として積極的に取り組んでいた頃、ソフトボール部の練習に向かう実乃梨と出くわした。改めてクリスマスパーティに誘った竜児だったが、練習が厳しくなったという理由で拒否した。しかもすれ違いと感じながら、あえて距離を置こうとする様子に、大河も違和感を感じた。更に失恋した祐作と惚れている大河をくっつけようとする動きが、クラス内で発生していた。



 祐作と大河を一緒の作業に従事させるベく、久光が率先して動き出した。そんな様子を見て恋愛に口を挟むなと苛立つ竜児。話を聞いていた亜美は、親のように見つめる大河との関係を清算して、自分も竜児にゼロから見て欲しいとアプローチをかけた。定期試験が終わり、午前中で学校が終わった後実乃梨と竜児の関係回復のきっかけ作ろうとした大河。しかしここでも部活を理由に断わられてしまった。その後郵便局に荷物を届ける事を知った竜児。大河と祐作をくっつけたくない麻耶の相談を断り、マンションに出向いた。



 そこには大量の荷物が置かれ、送り先の宛て名には父陸郎と継母夕の名前もあり、自分を傷つけた相手に贈る大河の行動が信じられない竜児。しかし大河にとってクリスマスは特別な日であり、カトリックの学校時代シスターと一緒に恵まれない子供達をボランティアとして訪れてからずっとプレゼントを贈っていたのだ。理由は、誰かが自分を見ている事を証明したいから。それがサンタクロースであり、大河は自分の存在を見てくれる存在だと信じていた。



 クリスマスパーティが翌日に迫る中、亜美が用意したクリスマスツリーを力をあわせて組み立てる竜児達。大河は最高のツリーにしようと星を持って来て、クラスメイトに付けて持った。その様子を見ながら、今まで1人だったかもしれないが、自分を含めて祐作・泰子・インコちゃん皆が側に居ると思い、幸せになって欲しいと思っていた。しかしせっかく取り付けたツリーが、飛んで来たソフトボールにぶつかり倒れてしまった。謝罪に来た実乃梨に対し、気にしないと優しく慰めた大河。それに対して責任を取ると、壊れた星を拾い集め元に戻そうとした実乃梨。そこに竜児も加わり、絶対に元に戻ると強く主張しながら協力して直した。無事ツリーは元通りになった後、立ち去ろうとした実乃梨に対し、再びパーティ参加を打診した竜児。しかし壊した事を理由にして

再び拒否された。それでも大声で参加して欲しい思いを告げた。



 いよいよクリスマスパーティ当日。終業式が終わり自宅に戻った竜児は、クリスマスプレゼントの準備も済み、どうしても参加して欲しいと思い実乃梨に電話を掛けた。電話は留守電で直接話せず溜め息をつきながら「あっ櫛枝今夜のイブのパーティのなんだけど絶対来いよな。楽しいからさ!」大河に呼ばれたので用件だけ伝えた。「これ受け取って!良いからそれを直ぐに開ける事。私も支度して30分でそっちに行く。」竜児は窓越しに大きな白い箱を投げつけられた。その中には、パーティ用のスーツがあり着替えるとピッタリで、選んだ大河も似合っていると評価した。髪形もバックに決めてパーティの準備は整った。(泰子ちゃんがんすとかやんすとか古いアニメファンならケムンパスや怪物くんのおおかみ男を思い出すじゃないですか。ホステスのママがそんな言葉使わないで下さいよ。陸郎のお下がりですけど竜児ピッタリで、ビシッと決めてパーティに出陣です。竜児の想いは実るのか?)



 出掛ける前竜児が、陸郎のスーツネームを取り外していると、自称魔女っ子の泰子が登場。大河にパーティ用の香水をふりかけ、竜児には家出の時に盗んできた時計を渡した。高校生らしからぬドレスアップをした2人。体育館で会場を待っている間、並んでいる生徒の余りの多さに驚いていた。「何人来ようが関係ない。いい分かってる?あんたは今夜やるべき事があるんだからね!」パーティ参加の目的が、実乃梨へ想いを伝える事だと念を押した大河。ただどうしても竜児が参加して欲しいと思った人の姿は無かった。そしてクリスマスイブを別の意味で、人生の新たな区切りと考えていたのが独身三十路のゆりだった。「先生、シングル女性の為の不動産購入講座に行くんです。イブの夜にデートする女は、まだまだ覚悟完了してないって事です。理想の物件が不意に現れても、当方に迎撃の用意無しって事なんです。皆さんくれぐれも問題を起こさないようにね。」男運がなく、金を溜めても使い道がない悲しい女ゆりの決断は不動産投資。その購入講座に参加して、男とデートする女とは違うと意気込み、パーティに参加すると思った麻耶と奈々子にアピールした。しかし衣装だけは負けないと思っている空気がありありとしていた。(住宅減税とは、企業の正社員を主に対象とする所得税の年末調整というシステムがあります。その時にローン組んでマイホームを購入している人に対し、所得税の減税をしてくれるのです。国による住宅購入政策の一環です。ゆりちゃんは、男よりもマンションという資産を買って頑張ろうと思っているんですね。いやはや三十路の資産運用ですか。その内容をブログに紹介でもしたら、アクセス凄いでしょう独身三十路女の資産運用ライフなんて。(笑))



 夜になりいよいよパーティが始まろうとしていた。サンタの格好と新宿2丁目のホモキャラをたして2で割った、ツッコミ所満載の失恋大明神祐作の挨拶が始まった。「それでは今年のクリスマスイブを祝して。メリークリスマス!」クリスマスらしい挨拶が終わり、一斉にクラッカーがパーティを開催を祝い鳴らされた。光り輝くクリスマスツリーの元、参加した生徒達は思い思いの格好をしてパーティを楽しんでいた。「あれこれとりももだ。俺知ってるよ、これターキーって言うんでしょ?」またお約束の勘違いをした浩次。色気より食い気だと思いきや、ドレスアップした麻耶と清純なスタイルの奈々子に魅了された。「何で皆お洒落してるの。俺すげえ地味で貧祖。」普段着で来た久光は、やっちゃった感ありありだった。その中でスーツで決めているのに、いつも通りにお節介を焼く男が居た。フルーツポンチを盛り付ける手際の悪さを指摘して、見かねて自分から係りになった竜児。しかし今日はどうしても実乃梨との関係に、決着を付けたいと考えていた。だからつい似た髪形の女子生徒を見て心ときめかせたが、違うと知りがっかりした。(わかるわかる竜児の気持ち。好きな女の子を見るとドキッとしませんか?しかも後姿が似ていると尚更。声掛けてみようかなって思うんですけど、違ったらどうしようというドキドキ感です。そんな中でも相変わらず、掃除とか盛り付けとかを気にする竜児もらしいなって思いますけど。更に素でチキンとターキーを間違える浩次もらしいなって思います。)



 「あれ亜美ちゃん見た?」「タイガーも居ないなあ。」大河と亜美が姿を見せて居ないと事に気付いた浩次と久光。その時体育館の電気が消えステージの幕が上がると、大河と亜美が同じドレス姿と口紅を付けて登場した。学校でも1・2を争う美少女2人のノースリーブの格好と歌声は

パーティに参加していた生徒達を魅了した。「あいつら何時こんな練習を?」いつも大河と一緒に居るはずの竜児でも、歌と振り付けの練習をしていた事実を知らず素で驚いた。歌が進むにつれ手拍子を合わせる生徒も現れ、盛り上がりは最高潮のクリスマスパーティ。大河がサンタクロースとして贈ったプレゼントも恵まれない子供達に届き、笑顔が満開になった。楽しいクリスマスイブの一方で、パーティに参加するつもりがない実乃梨。酒屋のバイトをこなし、誰も居ない自宅の部屋で、竜児と大河の声が混じった留守電を聞いた。そしてゆりは、クリスマスとは無縁の講座を真剣に受講していた。それぞれの人が、異なったクリスマスイブを過ごしていた。(クリスマスといっても色々な生活があるなって思いました。それを楽しさと個人の思いを混在させた、表現方法は違いを明確にする上でよかったと思います。それにしても大河と亜美の格好は、本当に大人っぽくて悩殺されちゃいます。フレディ・マーキュリーみたいな格好の祐作もその道の人達にとっては、注目の的かもしれませんが。)



 やたらエロ可愛いとはしゃぐ祐作を尻目に、相変わらずフルーツポンチを盛り付けをし続けていた竜児。亜美から声を掛けられ、サプライズな歌の披露に驚いた感想を話した。「内緒にしておかないとサプライズにならないからね。喜んでもらえてよかった。あっタイガーなら帰ったよ。知らなかったの?実乃梨ちゃんの家に寄って、引っ張り出してから帰るって。サンタを迎える準備をするんだとか言っちゃって。」竜児が喜び、サプライズが成功したと喜ぶ亜美。しかし竜児の意外な反応に驚いていた。「何で帰るって言ってたんだ?」パーティが終わる前に帰った大河の行動を疑問に思った竜児。「見たくないものでもあるんじゃない。だから忠告したのに、幼稚なおままごとは止めろって。何でパパ役なんてやってるの?」大河を見守る父親役を演じる竜児に憤りを隠せない亜美。自分の言葉が受け入れられず、不快感ありありで立ち去った。(竜児は、大河も恋愛対象と見ていない。幸せになって欲しいと願う父親の様に見ている。それを亜美ちゃんは、おままごとだと切って捨てた。竜児の事が好きだけどそれが届かない。想いが届かないのはつらいなって痛感します。亜美ちゃんは意外と純粋ですよね。)



 大河は1人だけ先に帰ってしまった。自分のために実乃梨と引き合わせようとして、クリスマスイブに生み出される笑顔を導くエンジェルとしてのみ、頑張る姿を見ていた竜児。「本当にそれで良いのか?やっぱいいわけねえだろ!」自分だけ幸せになるのは、良いことじゃない。大河にも幸せになって欲しい。パーティそっちのけで、1人体育館から飛び出した。その頃実乃梨の自宅を訪れ、竜児はずっと待っていると伝言を残した大河。1人自宅に戻りロウソクをぼんやりと見つめながら「やっぱりサンタさんは来ないか。まあいないって分かっているし。」子供の頃から望んでいたサンタとの対面を諦めていた。「来年も再来年もずっと1人。誰にもすがらない!」自分は1人切りで、誰にもすがらずに頑張ろうと決意した。その時寝室の窓をノックする音が聞こえて来た。竹刀を構えた大河は、侵入者に備え緊張感を高めていった。しかしそこに現れたのは、サンタクロースの格好の熊のぬいぐるみ。窓を開けてくれと促すぬいぐるみが、落ちそうになると必死で寝室の中に入れてあげた大河。自分をサンタだとアピールする姿に大笑いした。(中に入っているのは勿論竜児。大河は1人だと考えているけど、自分も居るし仲間も居る。なのに1人だけ帰って、わかった顔をする姿がよくないと考え、大河にも笑顔になって欲しいと思い行動に移した。もし本当に実乃梨が大切に思うなら、大河の事を無視してもおかしくない。そうしなかった竜児の心の中には、大河の存在が大きいなあと思わせるのに十分な行動だと思います。)



 「ねえこっちこっち。サンタさん見て見て、あれが今年の家のツリーなの。」小さい頃の夢が実現したと思い、ぬいぐるみにクリスマスツリーを紹介した大河。ぬいぐるみが、グッドだと評価すると子供のようにはしゃぎ、嬉しさを爆発させた。そしてぬいぐるみと触れ合う中で、今まで見せた事のない屈託のない笑顔を見せ「ありがとう、本当にありがとう竜児。」夢を現実にしてくれたぬいぐるみの頭を取り竜児に感謝した。「途中で借りて来たんだよ。スーツは後で返してもらうつもりだ。」大河の為にぬいぐるみを借り、ビシッと決めたスーツを脱いだ。竜児にとってクリスマスイブは、大河を喜ばせる日に変わっていた。「バカバカ!せっかく用意してやったのに、せっかくみのりんに会えるのに。まだ間に合うから急ぐのよ!」エンジェル大河は、竜児と実乃梨がカップルになって欲しい。竜児に急いで戻るように急かした。「俺はお前を1人にさせたくない。」大河を1人にさせたくない、今の気持ちを素直に明かした竜児。



 「何言ってるのよ、私ならもう大丈夫。なりきりサンタとなりきりいい娘、とっても楽しかったわ。万一みのりんと上手くいったって、明日のクリスマスは高須家でご馳走よ。」1人でも大丈夫だから実乃梨と会って告白して欲しい。竜児を安心させ、高須家でのクリスマスパーティに胸躍らせた大河。いい娘の所にサンタが来たから、最後までいい娘を演じ竜児を無理矢理実乃梨の元に向かわせた。大河の行為を素直に受け取り、竜児は実乃梨がいるであろう学校に戻った。「やっと行った!あれどうして?そうか私竜児にすがっていた。竜児の優しさにすがっていた。でも猛終わりになった。みのりんはきっと竜児に引かれている。竜児は本当にみのりんが好きだ。つまり2人は両想い。そうしたら私はもう竜児の隣に居られない。側に居るのは私じゃない。でもそれは嫌だ!」出会ってから竜児の優しさにすがって来たが、みのりんとカップルにそれも終わりになる。それは大河にとって喜ばしい事のはずだった。しかしもう竜児の隣に居られなくなるのは嫌という本心が悲しい涙という形で表現され、追い出したはずなのに後を追った。(2人は共同戦線を張ったはずなのに大河の想いは、祐作ではなく竜児に向いていた事になります。いつも自分を見ていてくれる優しさは、近くに居たから感じられた。そうなれば他の人に獲られるともうその関係が崩れてしまう。それが我慢できなくなってしまったという事だと感じましたキューピットになって喜ばせようとしたのに、大河の中に焼き餅という感情が表れた証拠ですね。)



 マンションの外に出て、泣きながら竜児の名を叫んだ大河。その光景を実乃梨は見ていた。そして締められた校門の前で待つ竜児に向き合った。「高須君先に言わせて。ねえ覚えてる夏休みあーみんの別荘で、2人で話したよね。あのねUFOも幽霊も見えなくいいんだ。最近を色々考えたんだ。だからそれを言いに来たんだ。櫛枝はこれで帰ります!」実乃梨にも見えるはずだと言ったはずのUFOや幽霊は、別に見えなくていい。つまり竜児とは付き合う事は出来ない。考えていた結論を言って立ち去った実乃梨。「えっ何だ?これは失恋?」恋が実らなかったと知り、ばったりと倒れこんだ竜児。それぞれの想いが揺れ動く中、クリスマスイブの夜は過ぎていった。みのりんは、身を引いたと想うんですよ。それは大河の想いを知ったから。大河の気持ちが、竜児に向いている事を知り、親友を悲しませない為に身を引いたのだと。竜児にとっては悲しい失恋ですけど、3学期に向かってどういう展開になるのか楽しみが広がりました。)