雨宿りの為立ち寄った教会で「銀の貨幣価値が上がる。」という情報をゼーレンという男から

持ちかけられたロレンス。「その話は嘘だな。」ホロはゼーレンの話を嘘と見破りながら、ロレンスは話に乗った振りをして、いかにして自分が儲ける事が出来るのかを考えながら、落ち会う

約束をした港町バッティオに向かった。「おい顔を隠さないで良いのか?」ホロは少女となって

姿を現す言い伝えがあり、もし尻尾と耳を見せたらまずい事になるので、ロレンスは警告したが

「まあ耳と尻尾を見せなければ、気が付くまいて。わっちの事なんか忘れていんだから。」ホロは自分の存在は既に、人々の記憶から消え、もうばれる事は無いと思っていた。

 バッティオに到着したすると、ホロは、露店から漂う料理の匂いを嗅ぎ、すっかりお腹が空き

新鮮なりんごを見ると「上手そうじゃなあ。」と思わず言葉を洩らす。「じゃあこれで買って来い。」

商売の話をしていたロレンスからお金を貰い、好きなだけりんごを買って来た。「自分の食い扶持ぐらいは稼げよ。あの銀貨で宿代と夕食代に当てようと思ったのだから。」りんごを好きなだけ

買われたロレンスはホロに通告した。(賢狼ならば稼ぐのは簡単らしいさてお手並み拝見

 一休みした後再び馬車に乗った2人が向かった先は、バッティオで3番目に大きなミローネ

商会。もっと大きな商会があるのだが、遠い南の国に本拠地を持つ大商会の支店あるので、地元の商会とは異なり買取に高値を付けているのだ。「他の支店から本店から様々な情報が入って来るからじゃろ国境を超えて商売をする分貨幣相場に変動に対しても耳が鋭いじゃろうて。」ホロはロレンスの真の目的をずばりと言い当てた。「その通り!ゼーレンという若造の事も聞いてみるつもりだ。」目的を言い当てられたロレンスは、ゼーレンの情報の真偽についても調べようとしていた。(さすが賢狼、伊達に長生きしている訳では無いです。)

 「数年前麦を買い取って貰ったのだが、今日は毛皮を買い取って貰いたい。」ミローネ商会の

案内人に話をすると、快く了承され早速査定係の所に案内された。今回売ろうとしているのは

テンという動物の毛皮70枚で、今年はテンの入荷が少く希少であり、以前取引があったロレンスなので、査定人はトレニー銀貨132枚という買い取り価格を提示した。「10年に1度か、途中

雨に降られても全く失われていない艶を見てくれ。」ロレンスは毛皮のセールスポイントを説明

すると、ロレンスの言葉を受け入れた査定人は、8枚上げてトレニー銀貨140枚を提示し、価格交渉はまとまろうとした。

 しかしホロが「わっちには相場がわからん。」とロレンスに質問して来た。「上々だ!」一言

高値で売れそうであると答えた。その時突然「トレニー銀貨140枚と言われたかや?」ホロが

口を挟んで来た。「トレニー銀貨140枚です。」査定人がはっきり答えた。するとホロは見落としたところがあると指摘し、ロレンスが査定人にそれを教える事を了承し、毛皮を1枚手に取らせて匂いを嗅がせた。「これは果物の匂い。」査定人は果物の匂いを嗅ぐと、ホロはつい最近まで

森を駆け回っていたテンの毛皮であり、沢山果物を食べたのでその匂いが付いたと説明し、剥ぎ取るのに男2人で剥ぎ取り、困難を極めた事を付け加え、査定人に毛皮を引っ張らせた。

 「ただ1つ甘い香りがする所を想像せよ。」ホロは強く引っ張っても崩れない頑丈さと、他には無い希少な毛皮であると強調した。「ではトレニー銀貨200枚でどうでしょうか?」驚く事に60枚上乗せの200枚を提示した査定人。「1枚当り銀貨3枚はどうじゃろう?」更に10枚上乗せ

を狙うホロは、査定人に他の商会に行く事をちらつかせながら、更に10枚上乗せのトレニー銀貨210枚を提示させた。ホロの言葉巧みな交渉術にロレンスは思わず舌を巻き、頭を抱える

のだった。(ロレンス立場無いですね。でもホロの巧みな交渉術にはさすがの一言です

 夜酒場に繰り出した2人。おいしそうにワインを飲み干すホロに対して、ロレンスはどこか浮かない顔で「お前商売やった事があるのか?」と質問した。「何時だったかかなり昔ことじゃったか村を通りかかった、随分頭の切れる商人が、思いついた方法じゃ。わっちが思い付いた方法じゃ

ありんせん。」ホロはかつて商人が使っていた話術を引用した。勿論ロレンスは前日の夜果物の匂いに気付くはずはなかったが、ホロが食べたりんごの匂いがついており、その状況と話術を巧みに利用し、半分騙し取ったみたいな儲けだった。(確かに買い取りは、市場価格がなければ胸三寸1つで決まりますから、ちょっと頭の切れる人がいれば、騙し取られても仕方ない。そういう方法があったんだと思わなければならないですね。)

 買取後ロレンスはゼーレンから持ちかけられた「銀貨の価値が上がる!」話の裏付けを取って

みたのだが、そんな話は無かった。「ゼーレンの話には何かからくりがあるはずだ。俺が得をして損しなければそれでいい。」ロレンスは自分が得をする為に行動しようとした。約束通り

ヨーレンドで落ち合った3人はまず乾杯をしてから「銀切り上げの話を売る代わりに、俺が儲けた

銀を渡すという事だったが、銀切り上げは本当なのか?」ロレンスはゼーレンに質問した。しかし「信用していいとおもうのですが、商売に絶対は無いですから。」と歯切れの悪い返答をした

ゼーレンだったが、ロレンスは「絶対!」などと言われたら逆に怪しいと指摘し取引話を受け入れ事を通告した。ほっとしたゼーレンは、儲け話代で銀貨10枚と儲けの1割を要求し、もしロレンスが損しても、儲け話代を返すという話を持ちかけた。「大体それで良いだろう!」その申し出

をロレンスが受け入れて交渉は成立した。

 宿舎に戻ると、銀貨の種類を教わっていたホロは覚えるのが面倒くさくなり、酔っていたので

すぐに寝てしまった。ロレンスはそっと上から布を掛けてあげた。翌朝ゼーレンから貨幣価値が

上がるトレニー銀貨を受け取った2人。銀貨は各国が発行しており、国力がその価値を決めると言っても過言ではなく更に本来の金・銀の含有量と比較してもずっと高く設定されている

のであった。そしてロレンスの知り合いの両替商ワイズの所を訪ねた。もし貨幣の価値が上がる

ならば、その予兆としてちょっとだけ含有量が上がり純度が増す、皆に「この銀貨は含有量が

上がったので価値が上がりそうだ。」と思わせるのだ。ロレンスはそれを確かめようとしたのだ。

 女たらしのワイズから数枚のトレニー銀貨を渡され、手の中で触ってみたホロ。これはベテランの両替商でも含有量の上下が判るかどうかのやり方で、ワイズは「判るわけない。」と鷹をくくりながら眺めていた。(本当にすけべな奴です)「なあわかったのか?含有量が上がったか

どうか?」帰り道ロレンスはホロに尋ねた。ホロはワイズがとった行動にロレンスが焼き餅を

焼いていたので、その場で言わずに2人っきりになってから「新しくなるほど、本の少しじゃが音が鈍くなっておるな。」と指摘した。つまり新しく発行されたトレニー銀貨ほど銀の含有量と純度が下がっているのだ。

 夜再び酒場に繰り出したロレンスは、もう一度ゼーレンの儲け話について整理していた。一度

価値が下がった貨幣が、再び価値が上がるには時間が掛かる。だからゼーレンが得するには

今よりも価値が上がらなければならないはずだった。「主騙されたんじゃ。」ホロがロレンスが騙されたのだと指摘した。理由はもし価値が上がらなければ、話の情報料を返すだけだ。それで

ロレンスが損をしても、ゼーレンは全く損をしない。しかも上がれば儲けの1割を受け取れるので

あった。まさに濡れ手に粟の状況だ!(中々考えましたなゼーレンさん)

 ただ銀貨の純度は細心の注意を払うので、そうそう簡単に変わる事が無い。そんな時に価値が変動する話が持ちかけられた。「わっちら狼は、獲物を狙う時木の上に上がり眺めると、意外な獲物の隠れ場所が判る。そういう時は新たな視点を入れてみるもんじゃ。あの若者の利益は

直接相手をした者から貰わなくても良いはずじゃ。儲け話を考えたのが、あの若者でなかったら

どうじゃろうか?手間賃としてもらう為に妙な話を持ちかけたのかもしれん。」ホロは視点を変えるようにロレンスにアドバイスした。「判ったぞ価値が下がる銀貨を、買えば買うほど利益が

出る仕組みが。」アドバイスでゼーレンが持ちかけた話のからくりに気付いたロレンスは、急に

酒場の席を立ち上がり、ミローネ商会に向かうのだった。

 ちょっと難しい話ですが、貨幣の上がるどころか下がる銀貨を掴まされそうになったロレンスが

ゼーレンの儲け話のからくりに気付きました。来週は解明編!これ本当に面白い。