入院中、主治医は土日以外
毎日病室に来てくれました



1日に2、3回

必ず



もちろん私にだけではなくて

病室の出入り口まで見送った時
数m先の病室に入って行ったのを見ました





傷口を見ない時もあった

真顔「ほいこさんどう?元気?痛みない?」

ニコニコ「不思議なくらい元気です
リハビリ頑張ってます」

真顔「よかった
じゃまたね」

それだけの会話
1分居ない時もあった

忙しい中来てくださってるのだ



それでも
朝食を食べ終えた頃、夕食の前など
いつもタイミングのいい時間を
見計らって来てくれていたかもしれない



まずノックをしてゆっくり入り
プライバシーカーテンの向こうで立ち止まる

真顔「ほいこさーん
いま中入って大丈夫かなあ」

ニコニコ「大丈夫でーす」

必ずこのやりとりを経て
入って来てくれる

紳士的な方なんだろう





術後、毎日順調に減っていたドレーンの量が
増えてしまったことがあった

私から何か言う前に
主治医は常に現在の状態を知っている

真顔「退院日決めようとしてたんだけどね
ちょっと増えちゃったからね
あと少し様子みよう」

病室に来る前に
細かく状況を確認しているとわかった




手術日、病室から一緒に歩いて
手術室まで案内してくれた
いかにもベテランそうな看護師さんと
その後お話する機会が一度だけあった

照れ「実は私、しばらく
傷口を見ないつもりだったんですが
見てしまって..
想像と全然違って
すごく簡易なものでキレイに覆われていて
傷口が短くて
嬉しくて感動して
はじめて泣いてしまいました」

ニコニコ「そうだったのね
私も傷口見ますね」

照れ「見てください」


するとベテラン看護師さん

ちょっと不満「これは先生、
とても考えてやってくださってる」

と言って、しばらくじーーーっと見てる




ちょっと不満「先生ね、相当丁寧に縫ってる
この上から見てもわかるわ
そして傷口に合わせて
細く丁寧にガーゼを切って当ててるのよ
今はよく見えないように配慮されてるんだわ
これは痕の治りもいいと思う

これ剥がす時、見てみて
よくわかるわよ、先生のお仕事が」


えーん「はい(また涙出てきた)」





術後6日目
朝食を食べ終わり
食後のウォーキング1.000歩と
リハビリを終えて一息ついていた頃
いつものようにちょうどいいタイミングで
主治医が来た

私の顔を見るなり

真顔「明日退院する?」

びっくり「あ、明日ですか」

真顔「しない?」

びっくり「し、します
え本当に退院?明日?しますします」

ウインク「よし、じゃドレーン取っちゃお」


ベッドに横になると
あっという間に手早く処置してくれた

多分2分間くらいの出来事



ドレーンを抜く直前
ニヤニヤ「ごめんねニュルッとして
ちょっと気持ち悪いと思う」

確かにニュルッとした感覚がしたけれど
痛みは全くない

真顔「ドレーン抜いた所は自然に塞がるから
安心してね
3日くらいかかるかな
一応ガーゼで止めとくけど、
ガーゼに色が付かないようだったら
もう剥がしちゃって
何もしなくていい」



キョロキョロ「先生変なこと聞いてもいいですか」

真顔「どーぞー」

キョロキョロ「傷の長短というのは
体型とかお胸の大きさによる訳ですか」

真顔「そうでもない
それはあんまり関係ない」

キョロキョロ「じゃあ私の傷も
先生にとってはいつもの技術
ということでしょうか」

真顔「んー、そう言われてみれば
確かにほいこさんのは短いかもしれないな」

照れ「本当にありがとうございます」

ウインク「じゃ、明日退院ね
泡でよく洗って大丈夫だからね
詳しいやり方は看護師から聞いて」

もう外来診察の時間が近づいてたと思う





その後看護師さんが来て
次回の外来受診日や
退院後の生活などについて説明があった





入院最後の夜

夕食を食べ終え

食後のウォーキング1.000歩と
リハビリを終えて一息ついて
二息ついて三息ついても
主治医が夜来ないのは、はじめてだった

お疲れで来ないのかな

何も問題ないし
明日退院するだけだもん

でもなんだかちょっとさびしい

やださびしいってなんだなんだ

明日の退院日は先生いらっしゃらない
だから今夜のうちに
もう一度きちんとお礼を言いたかったな

さすがにもうこの時間は来ない

早めに寝る準備しようかな
そう思った頃


コンコン

真顔「ほいこさーん

いま中入って大丈夫かなあ」


いつも通り
いつもよりだいぶ遅い時間に来てくれた


真顔「よし!
傷口もドレーンの痕もいいね」

朝に説明してくれたことを
もう一度詳しく説明してくれた


真顔「何か質問、不安なこととかある?」

私は持病の甲状腺疾患について
少し気になっていたことを質問した

それについて
的確に答えてくれた

主治医は甲状腺についても
専門をお持ちなので
本当に心強いのです


真顔「あと不安な事とか大丈夫かな
じゃあ次、2週間後、外来で会いましょう」


私は病室のドアまで主治医について行き

想像(覚悟)していたより
傷がとても短かくきれいなことに
感動していること
心から先生に感謝していることを伝えました


真顔「そうか... そんな風に思ってくれてたのか
そうか...
いやいや、うん、じゃ、また外来でね」





退院日の午前中

コンコン

ひらめき「乳腺外科の○○です
今日先生いらっしゃらないので代わりに来ました
お傷見せてくださーい」

主治医に頼まれてわざわざ来てくれたのか
そういう先生同士のルールなのかは
わからない


傷口を見せると、

あんぐり「うっわ!
マ. ジ. か!
傷めっちゃきれーっ!」

とすごく大きい声で言われました😅


ひらめき「それと、先生からの伝言です
ほいこさんの甲状腺は...」

昨夜、私の質問に答えてくれた内容を
もう一度主治医の言葉で伝えてくれたのです

多分、退院後の不安を
こうして繰り返す言葉で取り除こうと
気遣ってくれたのかもしれない

もう先生そんなそこまでいいのにぃ





退院後日

母とゆっくり話をすることがありました


手術日
私の記憶では

「麻酔の前に眠り易くするお薬入れていきますね」
で、すぐ寝てしまい

看護師さんに起こされて、目が覚め
手術が終わったことを知り

真顔主治医の声で
「ほいこさーん、安心してね」

まだ朦朧としながら
照れ「はーい」
と先生に返事して

家族と少し話しして

それから
ベッドのままエレベーターに乗って
病室へ移動した、のは知っている


母の話では

執刀を終えた主治医は白衣に着替え
家族が希望していた摘出物の
詳細説明を終えると
そのまま私のそばにずっと居てくれたそう

そして病室への移動には
主治医が誘導すべくベッドの先頭に立ち、
後方に看護師さんが続き
移動してくれたというのです


びっくり「え!先生が?
手術終えて?
病室まで先頭で?ずっと一緒に?」


そういえば
病室に着いて
先生の声はしてたけど...

後から来てくれてたとばかり思ってた

まさかベッドの先頭に立って
誘導までしてくれていたとは
私は全く知らなんだ





退院から2週間後

術後の病理結果が待っています