−−MCのお仕事について、イベント当日の流れを教えていただけませんか?

場合によりますけど、例えば、夜公演なのに朝9時に現場入りとかは普通にありますね。出演者がメイクをする前にリハーサルをすることもありますし、さらにその前に、台本の打ち合わせをすることも多いですし……。リハーサル自体は、アーティストと一緒にしない時も多いんですが、技術さんとスタッフさんとは念入りにします。最近だと、韓国の舞台制作チームと仕事することも多いんですね。ワールドツアーの一環で日本に来る場合、韓国のスタッフがそのまま演出・技術を担当することが多いので。以前は、日本側が制作を担当することが多かったんですけど……。なので、今はリハーサルを念入りにやるようにしています。

空き時間はドラマを観たり、通訳さんと控室が一緒のことが多いので、一緒にお話したりすることが多いですね。でも意外と時間はないです。調べなきゃいけないものも多いので。場合によっては、当日の台本を手書きで書いてます(笑)。韓国側が台本を制作する場合は、それを日本にローカライズする仕事は僕の務めです。韓国語の表現と日本語の表現ではニュアンスがまったく違うこともあるので、それを日本語らしい表現に置き換えるということをしたりします。この作業も意外と時間がかかるんです。なので、本番まで残された時間は、あまりないですね。

あとよくあるのが、「古家さんのフリートーク」ですね(笑)。「この間を5分、10分トークで繋いでください」というのは結構あります。しかも当日に明らかになることも多いんです(笑)。かつて、とあるファンミーティングでは、当日に「ここで衣装を着替えることになったので、トークで繋いでほしいです」と言われて、「どれぐらい時間がかかりますか?」と聞いたら「わからないです」って(笑)。「準備が済んだら合図するので、それまで繋いでください」って言われたことがあるんですが。その時は最長で30分、一人でつなぎました。あれは本当に困りましたね。ファンの皆さんが楽しみにしている空間・時間に、おじさんがステージで何分もしゃべらなきゃいけないんですよ(笑)。「早くスターを出して!」という訴えは、当然ファンの皆さんの目力で伝わってくるんですが、気持ちは僕も一緒です(苦笑)。



−−アーティストや俳優とのお仕事で嬉しかったことはありますか?

僕はポリシーとして、スターと個人的な関係を持って、それで関係性を強化して仕事に生かそうというタイプではないんです。ですから、現場での仕事っぷりを評価されて、次の仕事に繋がったときはうれしいですね。例えば「アーティストさんがご指名です」とか、「あの俳優さんが、またMCは古家さんでお願いしますと言ってます」という風に言われると、「あ~、この仕事をやっててよかったな」って、思います。



−−ファンの方から言われて嬉しかった言葉はありますか?

「スターが、普段見せない姿を見せてくださってありがとうございます」という言葉ですね。MCの仕事って、簡単にやろうと思えば、どこまでも簡単にできてしまうんです。台本があって、その通りにすれば、イベントは滞りなくできるようになってるんです。でも、皆さん外国人ですから、どんな人でも当然緊張しているわけです。ですからそういう時は、韓国でイベントをやっているような、韓国で音楽番組に出てるような環境を少しでも作ってあげたいと思っています。そうすれば、皆さんも少しはホッとできるでしょうし、普段なかなか見せないような素の表情、姿を見せてくれると思うんですね。でも、その空気感を作るのって意外と難しくて。僕も「できるようになったな」って感じるようになったのは、ここ10年ぐらいなんです。それまでは僕もずいぶん悩みました。結果的に、「僕がすべての責任を負うから、とにかく自由にやってください」と伝えるようになったんです。スターが困った時には、僕がサポートすればいいやと。そうすると、韓国でも見せないような姿だったり、おしゃべりだったり、表情だったりを見せてくれることが多くなりましたね。それで先のファンの方からのコメントにつながるわけです。言われたときは「ああ、よかったな」って思います。それが僕にとって一番の褒め言葉です。



−−「人気が出るアーティストはここが違う」、というのは感じますか?

一瞬でわかります。それは、オーラです。新人グループであっても、事務所パワーとか関係なく、この子たちは瞬間的に「人気が出るだろうな」と感じることはありますね。やっぱり20年もこの仕事をやっているから、パターンにしちゃいけないんですけど、やっぱりパターンがあって。一瞬で「あっ!」って気づく魅力があります。

例えばStray Kidsが日本で初めて行ったコンサートを観た時、「この子たちは絶対に人気が出ます!」って、みんなに力説したんですよ。初めてのコンサートなのに、ステージワークがすごすぎて。K-POPアイドルのステージを見ていると、フォーメーションのために意外と自由に動けないことに気づいた人もいるのではないでしょうか。そう、動きがテレビの音楽番組サイズで留まっていることが多いんです。でもStray Kidsは日本で初めてコンサートをした時から、ステージの端から端まで走り回っていたんです。「こんなパフォーマンスができる新人はそうそういない」と思って、「絶対に人気が出る」って確信しました。今や世界中で大人気となりましたね。

BTSも一番最初のショーケースのリハーサルを見た瞬間に「人気が出る!」と直感しました。彼らのパフォーマンス力はすごかったですよね。そういう、一瞬で人を虜にする魅力みたいのって、人気が出るアーティストにはやっぱり備わっているんですよね。

今年のKCONではTEMPESTというボーイズ・グループと仕事をさせてもらったんですけど、「この子たちは人気が出そうだな」と思いました。2023年、TEMPESTは人気が出るかも、いや出てほしいと思います。



−−オーラというのはパフォーマンスしている時のものですか? それとも実際に近くで会った時に感じるものですか?

例えばショーケースなどで一緒にお仕事したりする時に感じることが多いですね。言葉で表現するのは難しいんですけど、肝は「また会いたい」と思えるかどうか。「この子たちとまた仕事したい」と思うグループは、これまでほぼ人気が出ています。



−−個人的に印象に残っているライブはありますか?

ライブで言えばやっぱりBIGBANGのドーム公演ですね。日本語を使いこなし、縦横無尽にステージを走り回る彼らの姿を見たときに、感動しましたね。デビューして以降、早い段階から小さな会場からこつこつとライブ経験を積んできたからこそ、東京ドームという大きいステージを自分たちのものにして、客席を1つにできたと思うんです。あのライブ力は、BIGBANGがこれまで見てきたK-POPアーティストの中ではズバ抜けて一番だと僕は思いますね。ライブって<いきもの>だから、その時、その瞬間の空気を掴まなきゃいけない。しかもそれを日本語でできるというのは本当にすごいなって思います。BIGBANGのすごさはそういうところですね。トークもうまいし、トークから曲に行く流れも自然だし。また彼らのステージが観たいですね。『FANTASTIC BABY』みたいに盛り上がる曲をライブ前に流して盛り上げるのも、今でこそ他のアーティストもみんなやってるけど、BIGBANGが始まりですから。『FANTASTIC BABY』が流れてきたらライブが始まる……みたいなね。あそこからもうライブが始まってるっていう。本当にライブバンドですよね、彼らは。










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