台風一過の10月某日。

静岡駅から約1km、駿府城公園に筆者は向かっていた。

 

https://maps.multisoup.co.jp/exsample/geometry/circle.html

 

 

この日の最高気温は30度。10月だというのにクソ暑い。夏じゃん。

駿府城公園には駅からバスも出ているが、1km程度なら十分歩ける距離だ。

ちなみにこれは静岡県警の入っている静岡県庁別館。

駿府城公園の周りには、県庁舎、市庁舎、県警と、静岡行政の重要施設が集まっているのだ。

 

外堀にかかる横断歩道を渡ると、県庁の本館が見えてくる。

この建物を迂回し、駿府城公園へ。

駿府城公園には東西南北に入口があるが、こちらの入り口は南側。

内堀にかかる橋を渡った先に、駿府城公園がある。目的地到着だ。

 

なお、静岡市の市街地には、いたるところにこういう謎の彫刻が置いてある。タイトルは「指人形」とあるが、なぜ指人形以外の衣類を身に着けていないのか。右手より隠さなければいけないところがあるだろう。人形ですら服を着ているのに。というかこれは指人形か? 謎は深まるばかりだ。

 

これが公園の地図。前掲の地図を見てもらっても分かると思うが、意外とこの公園は広い。

この日は日曜日で晴れていたこともあり、公園は家族連れでにぎわっていた。

子供向けの遊具や運動が出来る広場もあり、普通の公園としても楽しめるが、やはりそこは「駿府城」公園。駿府城の歴史を知ることの出来る施設も用意されている。

 

公園内には、有料での見学施設が全部で3つ。

全施設を見学できる共通券が大人350円なので、かなりお買い得だ。

しかもこの共通券を見せると、公園内のおでん屋でおでんが1本タダになる。これは買いだ。

県外の方は「おでん屋?」と思われるかもしれないが、静岡にはマジでいたるところにおでん屋がある。また、あらゆる居酒屋がおでんをメニューとして出してくる。

「静岡おでん」という県民のソウルフードがあるのだ。この話はまた後述。

 

さて、まずは見学施設の1つ目、東御門・巽櫓(たつみやぐら)へ。

ここで今更解説しておくが、「駿府城公園」に「駿府城」はない。

この場所は、駿府城の「跡地」なのだ。城は現存しておらず、城風の外見をした見学施設も再建されたものだ。

筆者も静岡に住み始めた頃、「駿府城公園」と聞いてわくわくし、「城はない」と聞いてしょんぼりしたものである。

 

この場所が、駿府城公園内の見学施設で一番ボリュームがある。筆者はここに入ってから出てくるまで1時間弱かかった。

ただ、券売所のお姉さんが「3施設全部回るのに1時間か1時間半くらいかかります」と言っていたのを考えると、一般的には30分程度で回れる施設なのかもしれない。筆者は3施設全部回るのに2時間半を要した。こういう見学施設に来ると高確率で時間消失バグに出くわすので、筆者が要した時間は参考にならない可能性が高い。

 

内部にはこのような駿府城天守閣の再現ジオラマや、城下町のジオラマ、発掘調査で見つかった当時の生活用品などが展示されている。

この駿府城、元は将軍引退後の徳川家康の居城でもあったのだが、度重なる火災で天守閣は焼失。最終的には江戸時代という平和な世で天守閣の必要性がなくなったこともあり、再建されなかったらしい。

そしてこの駿府城天守閣がどのような姿をしていたのか、はっきりしたことは実は分かっていないのだ。駿府城だと思われていた絵が、実は駿府城ではなく江戸城説が浮上するなど、まだまだ謎が多い。

発掘調査は現在も行われており、その現場を見学することも出来る。この話も後述しよう。

東御門・巽櫓は、駿府城の二の丸への入り口を守る施設だったそうだ。

なお、この東御門・巽櫓をはじめ、園内各所にはガイドスタッフさんがおり、展示物や由来について説明してくれる。これが結構面白いので、ぜひ耳を傾けてもらいたい。というかこのブログもスタッフさんから聞いた話を織り交ぜて書いている。スペシャルサンクスである。

 

さて、前述の通り東御門・巽櫓を回るのに1時間弱を要した筆者は、他2つを回る前に昼食をとることにした。

先ほどのおでん屋に行き、おでんを注文。1本タダにしてもらったが、そもそもが1本100円+税なのでそれほど高くない。お手頃価格で県民のソウルフードが食べられるのでおススメだ。

さて、こちらが「静岡おでん」である。

まず黒い。圧倒的に黒い。静岡おでんは、出汁の色がはちゃめちゃに濃いのだ。筆者は関東出身なのだが静岡に暮らして数年、このおでんにすっかり見慣れてしまい、関東のおでんを見ると「なんか白い」と思ってしまう体になってしまった。もう何も知らないあの頃には戻れない。

そして、このおでんにかかっている謎の粉は「おでん粉」という謎の粉だ。青のりと魚の削り節を混ぜたもの。

また、筆者は注文しなかったが静岡ははんぺんも黒い。原料が青魚なのだ。静岡ではこれがスタンダードで、普通のはんぺんは「白はんぺん」という名で売られている。筆者はこの黒はんぺん、おでんに入っているような普通に煮たものは魚の苦みがちょっと強いので苦手だが、フライは好きだ。ソースをかけて食べる黒はんぺんフライはいい感じに苦みが緩和されるので結構おいしい。

この黒はんぺんおよび黒はんぺんフライも、静岡県のあらゆる居酒屋で食べられるので、興味があればぜひ。

 

話が逸れてしまったが、とにかく公園内で静岡おでんが食べられる。意外と種類も豊富だ。

 

さて、静岡おでんを食べて元気になったところで、次の施設に向かう。

見学施設2つ目、坤櫓(ひつじさるやぐら)。先ほどの巽櫓と同じく、二の丸を守る要衝だ。これも再建されたもの。

内部にはこのように、甲冑などが展示されている。本来はこれを着ることも出来るらしいのだが、感染症対策のために現在は見るだけだ。残念。元通り見学できるようになる日が来ることを願ってやまない。

これはちょっと分かりづらいかもしれないが、天井を見上げて撮ったもの。

坤櫓は上階に上がることは出来ないが、こうした建物の骨組みまでしっかり再現されており、それをこうして見ることが出来る。木の良い香りもする。新築の家を見学している気分になる空間だ。

展示スペース自体はそう広くない建物だが、坤櫓復元の様子が展示されている。地元の子供たちも復元作業に参加することが出来たそうだ。展示スペース内に「次回の開催日」として2年前の日付が書いてあったが、その辺はまあご愛敬だ。

 

そしてこちらが見学施設3つ目、紅葉山庭園。

こちらは実際にあった庭園の再現というわけではなく、城郭の大名庭園を意識して設計された庭園だそうだ。

名勝を再現するなどちゃんと本格的。言わずもがなこれは富士山の再現だ。

庭園内には茶の湯を楽しめる場所もある。また、事前予約で茶室を借りることも出来るらしい。世の中には茶室を借りる用事のある上流階級の人間も存在するのだという静かな驚きがあった。

この日はクソ暑かったので、滝の周辺は涼しげで良かった。

どこからかツクツクボウシの鳴き声も聞こえ、趣を感じる空間だった。いや待て、今書いてて気づいたけど10月だぞ。なんで蝉が鳴いてたんだ。おかしいだろ。

 

ということで課金施設は上記の3つだが、無課金でも見学できるのがこちらの、

駿府城天守閣跡の発掘現場。

 

日曜だったせいか発掘調査もお休み。見て回って特に楽しい場所ではなかったが、とにかくスケール感がすごい。とても広い。これが徳川の威光か……と筆者は慄くしかなかった。

画面左端のポールに注目。12mあるそうだが、あれが「天守台」の高さだったそうだ。

つまり、天守閣の土台の部分だ。あの高さでまだ土台なのである。

写真だと分かりづらいかもしれないが、実際行ってみるとスケールにビビる。どれだけデカかったんだ、天守閣……。

 

他にも、鷹狩りが好きだったという徳川家康の鷹とのツーショの像があったり、

 

家康が植えたとされるみかんの木が残っていたり、

 

園内の時計が2時5分とかいう中途半端な時間に、どう聞いても経年劣化で半音下がってしまい短調になったとしか思えない物悲しい「大きなのっぽの古時計」を奏で始めたり、

 

若干手入れが行き届いていない雰囲気は感じるものの、またそれが味のある公園だ。

 

この日は晴れていたので、富士山もよく見えた。

 

聞くところによると、2022年には新しく歴史文化施設がオープンするらしい。

歴史を学べるだけではなく、ゆかりのある市内各地の観光地を結ぶ要衝ともなるそうだ。

公園内を散策するだけでも結構時間が潰せる。この場所だけを目当てに遠くから来るほどの観光地ではないかもしれないが、ついでに寄るくらいなら十分なボリュームだ。静岡駅近くに来る用事があるのならついでに寄ってみてほしい。

 

静岡は色々なものを名物として売り出そうとしている。芸術だったり、プラモだったり、この「歴史」もその1つである。

まあどれも中途半端というか、大成しているイメージはないのだが、ガイドスタッフさんは皆さんとても優しかった。歴史の町静岡の今後の盛り上がりを願ってやまない。