今思えばひどい話である。
検査の結果が出る1ヶ月の間、
保育器の中の我が子の顔をジロジロ見ては、
多分ダウン症だよなぁとか、
いや、ほとんど当てはまらないとか、
そういう確認するような面会をしていたのだから。
事実、「たたり神」を産んでしまったのかもしれないと、本気で考えていた。
もしそうなら、シシ神の森へ連れていき、私もそこで共に暮らそう……。
仙人のような暮らしになるかもしれないと覚悟をしながらも、現実から逃げ出したくてしょうがなかった。
こんな母親でごめんね。ちゃんと産んであげられなくてごめんね。
初めて泣いたのは産後1週間くらい経ってから。
母乳を絞り出すことが出来ない事、
抱っこをしてあげられない自分。
ただただやるせなくて、苦しくて、母として失格だと思い詰めていたんだ……。
そんな私に看護師さんが、
「無理しなくても大丈夫。あなたは充分頑張ってる」
と言ってくれた。その瞬間、子どものようにワンワン泣き叫んだんだっけ。
人間は泣くことで、色々なことを忘れられる。嫌なこと、辛いこと、怖いこと、心配なこと。そんな気持ちを全て洗い流してくれた涙と、看護師さんの言葉を私は忘れないだろう。