第六話 喪われた世界 ②


星核螺旋研究所の屋上を目指す。


途中で発見した端末のデータログを復旧させる事に成功。スクリーンにシーズライトが映し出された。アリアたちはシーズライトの事を『レッドクイーン』と呼んでおり、この研究所はそれを研究する為に造られたものだった。

あやなおたちの時代にある物と同じ個体かどうかは分からないが、突然地殻を突き破って都市の真ん中に現れたレッドクイーンは、アリア達にとって災厄の象徴でしかなかったと言う。


何故ならば、レッドクイーンが現れてから世界は『ガイアダスト』と呼ばれる粒子に覆われ、それを多量に吸入した生命が死に絶えていったからである。そう、あやなおたちの時代にある『死季』のような物がアリアの時代にもあったのだ。


先へ進んだ所にある別の端末では映像が再生できた。どうやら映っているのはレッドクイーンを調査している時のアリアのようだ。


アリアは、レッドクイーンの中心には星の遺伝子があると仮定される『星核』があり、この映像はそれを調査していた時のものだが、自分でこの映像を観るのは初めてだと言った。

そう、アリアはこの調査中に何らかの時間災害に巻き込まれ、あやなおたちの居る過去へ飛ばされてしまったのだ。


更に上を目指して進んで行く中で見つけた端末では『三度目の大戦を防ぐことが出来なかった人類は、自分たちの危険な知性を管理する事は出来ない。だから自分たち人類の管理をレーベンエルベに託す。人類は人類として正しく生きられなかった』というメッセージと肉体は正常なのに意識活動のみを喪失した被験体チャイルドフッド1は目覚める気配が無いままだ』というメッセージあり、このチャイルドフッド1』とはアリアの事だという事まで分かった。


ここで大きな疑問が生まれる事となる。

アリアが目覚めないとはどういう事だろうか?今、あやなおたちの目の前に居るアリアは?

魔族のディアンサスはその全てを知っているようだ。苛立つアリアがディアンサスに答えを問い掛けたその時、「私が答える」と何者かの声が響いた。


なんと、その声の主はガイストだった。だが、あやなおたちに危害を加えたガイストとは別人格だと言う。戸惑うあやなおたちに対して、どういう事かは追々説明するとし、アリアが知りたい事…この場所で何があり人類はどこへ行ったのかは、この塔の最上階の"全てが始まった場所"で確認すると良いと言った。


最上階に向かう途中で見つけた研究レポートには、チャイルドフッドとは進化前の幼年期に入ったという意味で名付けられた。心理進化学では、進化の過程で弱い個体に突然変異した人類が生き残れるように、仕方なく心が発生したものとされる。ならば心無い彼女…つまり眠り続けるアリアは進化の系統樹の最先端に居るのではないか?心の無い魔族の知性が人類を凌駕しているように。心は知性の蓋なのか?心があるから人類は終末を迎えたのか?…そんな事が書かれていた。




辿り着いた最上階でマクロファージを撃破し、一行は真実を知る。

アリアはレッドクイーン調査に赴いた際に何らかの時間災害に巻き込まれて過去に転移したと思っていたが、そこには決定的な誤解があった。アリアがレッドクイーン調査中に意識を失い目を覚した場所は、過去ではなく未来だったのだ。


戸惑うアリアは、それはガイストのメモリーチップで動いたポッドがタイムマシンだったからであり、それまでに居たあやなおたちの世界は過去ではないのか?と問う。


ガイストは言い切った。

「あのポッドには時間移動機能は無かった。自身が設計した物だから間違いない。アリアは未来から過去にやって来た人間ではない。時間移動など一度もせずに、ただ過去から未来へと正しく時を歩んできただけだ』と。


それなら、あやなおたちが住む世界がある時代はなんなのか?と言う問いに対しても、ポッドでやって来た今居る星『ロストガイア』は、かつて西暦と呼ばれた時代に人類によって棄てられた人類発祥の地『地球』であり、シーズライトや幻影城があるあやなおたちの星と同じ時代にある別の星だと淡々と答えた。


アリアが暮らしていた地球は2,000年近く前に棄てられた喪われた世界。つまり、アリアは未来から来た人間ではなく、過去から来た人間と言った方が正しい。しかもアリアは時間災害などにも巻き込まれていない…。

そうなるとアリアは2,000年もの間生きている事になる。それは一体どういう事なのか。


それには、ディアンサスやガイストたち魔族が深く関わっていた。あやなおたちが魔族と呼ぶ者たちの正式な名称は『レーベンエルベ型 高次人工知能』。彼等は、人類という種を未来に残す為に人間によって造られた、人間を超える頭脳を持つ知性体だったのだ。

アリアを2,000年生かし続けたレーベンエルベ型高次人工知能たちだが、アリア以外の人たちの事はどうしたのだろうか?


そんな疑問を抱くあやなおたちに、自分たちレーベンエルベの計劃の全てを理解させる為、ガイストは『月の揺り籠』へ招待しようと言った─


つづく



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