
この平六隧道は1933年(昭和4年)に完成した、長さおよそ90mの隧道だ。今でこそ一般的な人道用隧道や防災用隧道と変わりない姿をしているが、完成当時は素掘りであり、電灯も裸電球1箇所という時期が長く続いたと言う。そもそもこの隧道は、地域の子供達が学校へ行くための通学路として掘られたものである。だから当然、高さは子供達が通行するのに十分であればよく、大人にとってはだいぶ狭苦しい隧道だった。
1976年(昭和51年)になると、横須賀市による改修工事が行われ、軽自動車がギリギリ通れるくらいの高さとなった。電灯の数こそ増えたものの、飾り気のない坑門には昼間でも日が当たらず、隧道内も暗かったことから、一部の界隈からは心霊がどうのこうのという話が囁かれるようになった。もっとも、この隧道に関しては曰くなど全くない。
ここまで地味ながらも地域の大事な道として存在してきた平六隧道に転機が訪れたのは、2011年(平成24年)のこと。三菱地所株式会社が、追浜東町に「ザ・パークハウス追浜」の建設を決定し、同事業の敷地内に留まらず近隣の道路等も、同社主導で整備することとなった。
この一環で新しく掘削されたのが、浦郷町に存在する山ノ脇トンネルであり、現在は横須賀市道7659号の隧道として現役だ。そして平六隧道も同事業による整備が行われた結果、従来の陰鬱とした雰囲気から一転、白色を基調とした明るく洒落た坑門を構える、立派な人道用隧道へと生まれ変わった。
かつての写真は事情により掲載出来ないが、興味のある方は検索エンジンで探して頂ければ、簡単に見ることが出来る。
隧道内部の照明はLEDを使用している他、水漏れ防止のため防水シートを敷設、更には上下左右へ隧道そのものを拡張するなど、使いやすい隧道にするために工夫が施されている。
現在は先述した通学の他に、ザ・パークハウス追浜と京急線追浜駅との徒歩最短経路としても利用されている。
かつて縁の下の力持ちだった素掘りの隧道は、時代の要求に合わせて姿を変え続け、来たる貫通100周年を今か今かと待ち続けているようだった。
訪問 2024年5月23日 8:30
執筆 2025年3月7日