⚪術後12日目、ICUのドクターから話がありました。
「麻痺の回復の可能性と、それを待つリスクとの兼ね合いが難しい。耳鼻科、循環器科、心臓血管外科といった各科ともよく話合う必要があり、方針決定までに時間を要している。」

と言われました。


とくに小児の両側半回神経麻痺 は事例が少ない為、大人の症例を参考に回復までどの程度待つかを検証しているようでした。

人口呼吸器を挿管してから、バイタルは安定しました。

しかし挿管が長引くと、それに伴い感染症や無気肺が悪化するリスク、また鎮静により筋力も落ちる問題が出てきます。

息子は、鎮静を最低限に抑えながら、なるべく覚醒時間を長引かせていました。



⚪抜管できたのは4日間。

私たち家族にとって、とても長く苦しく、永遠のように感じました。

目の前で我が子が苦しんでいるのに、何も出来ない。

もどかしい。

気が狂いそうでした。
息子にとっては、もっともっと長く、苦しい4日間だったと思います。


ICUでは、24時間体制で厳重に管理をされていました。

ネーザルハイフローを鼻から入れられ、肺動脈を拡張させるためにNOを吸入。

難治性胸水となり胸のドレーンは三本付いたまま。

体外ペースメーカーを付けられ、血中のHbが下がると輸血も何回もされました。
鎮静が切れて覚醒すると、サチュレーションも下がって呼吸が苦しくなり、その苦しさによって更に覚醒するという、悪循環が生まれました。



ICUのオープンスペースでは、息子の喘鳴が響き渡りました。


まるで水の中で溺れかけているような呼吸状態でした。

苦しいのを少しでも楽にしてほしくて、もっと鎮静できないのか何度も確認しました。

あまり深い鎮静をかけると、今度は心機能が落ちてしまうので、それも出来ないのです。

鎮静は保てても2~3時間。

少しの刺激で覚醒するので、手を握ることも、頭を撫でることも出来ませんでした。
呼吸障害によって体力の消耗も激しく、術後の回復が遅れていました。

術前、ふくよかでプクプクしていたのに、手足も痩せていきました。


挿管した後日、ICUのドクターからは「当院の万全の設備下でも、状態を保つのが精一杯。あの状況に本人を置くのはあまりにも酷だった。本当に、いつ窒息死してもおかしくなかった。」と言われました。




⚪一番望ましいのは、再抜管して麻痺が改善安定する事です。
しかし状況は厳しいものでした。


前回の抜管では、ほとんど状態に進歩が無く横這いであったこと。
このままでは他の発育にも影響が出ること。
また状態としてICUで万全の体制でも窒息リスクは常に顕在していること。
その状態ではラインを外す事も病棟に上がる事も出来ないこと。


気管切開をしても誤嚥はなくならないが、誤嚥の対応(吸引)は容易になること。
ラインも外れ、病棟にも戻れるし、筋力のリハビリや知育のリハビリも格段に進み、自宅に戻れる目処が立つこと。
気管切開は術方が色々あるが、食事が出来るケースも多数あり、元々の病状や、患者の状況により様々であること。

…などを説明され、私達家族も気管切開について情報収集をし始めました。