検体の採り方で一番重要なのは血液培養(血培)です。病棟できちんと採られていないのを時に見かけます。血培は2セット採るのが原則です。嫌気性菌用と好気性菌用のボトル各1本で1セットになります。日本では血培を1セットしか採らないことが多いのが問題です。欧米では2セットが決まり事になっています。
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血培の検体採取の手順(写真:村田和聡)

 血培ボトルのプラスチックキャップを開けるとゴム栓が出てきます。「未使用だからゴム栓の先端は清潔」と思っている人が結構います。実はゴム栓の表面には菌がついていることがあります。コンタミネーション(コンタミ)を防ぐためにも、血培ボトルのゴム栓は必ずアルコール綿で消毒する必要があります

 採血する部位を決めたら、いきなりイソジンで消毒し始める人がいます。まずアルコール綿で拭くのが原則です。患者の皮膚に垢や汚れが付いていると、イソジンが浸透しません。

 また、イソジン消毒してすぐに針を刺す人がいます。ポビドンヨードは乾燥する過程で殺菌効果が出るので、2分ほど乾燥させてから針を刺しましょう。通常は2回イソジン消毒しますので、結構時間がかかります。

 消毒したら、滅菌手袋をして20mL採血。針を抜く時に圧迫止血するアルコール綿に針が触れないように注意。採った血液は嫌気ボトル、好気ボトルの順に10mLずつ入れます。この順番は、注射器内の空気を嫌気ボトルになるべく入れないようにするためです。量は少なすぎても多すぎても検出率が低くなるので、8mLから10mLぐらいが適切です。血培ボトルに血液を入れたら、軽く転倒混和します。

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血培ボトル(写真:村田和聡)

 昔は、採血したら新しい針に替えてから血培ボトルに分注していました。現在では、針を替えないのが基本です。替えた方がコンタミを防げますが、針刺し事故の危険があるので、やらないようになりました。

 1セット目を右腕で採ったら、今度は左腕から2セット目を採ります。2セット目以降の採取は時間を置いてからと書いてある本もあります。余裕がある時はいいのですが、緊急事態では右腕で採って、すぐ左腕で採って、検体を検査室に出して直ちに抗菌薬を開始することが多いと思います。


 なお、血培ボトルには「抗酸菌(真菌)用」というのもあります。例えば、粟粒結核で骨髄穿刺をして骨髄液の結核菌の培養をする場合などに使います。NICUには、少量の検体で済むピンク色のボトルもあります。

なぜ2セット以上なのか
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講師は臨床検査医学(検査部)の東田修二氏。(写真:村田和聡)

東田 どんなケースで血培を採るか、分かりますか。

 誰もが考えるのは敗血症が疑われる時ですが、それだけではないですね。一番重要なのが感染性心内膜炎。血培でどういった菌が出るかが重要なので、3セット以上採るのが原則です。他には髄膜炎や骨髄炎や胆道感染症。胆嚢や胆管から検体を採れない時は血培は必須です。肺炎や腎盂腎炎でも、血培も採るのが一般的です。

 では、血培は2セット、可能なら3セット採る理由は何でしょうか。2つあります。

 答えは、まず、菌の検出率を高めるためですね。

 血培を何セット採ればよいか調べた研究があります。実際に血流感染症があった症例で、どのくらいの率で血培が陽性になるかを調べると、1セットだと3分の2ぐらいしか陽性になりません。2セットだと陽性率が8割ぐらい、3セット以上採ると9割以上と報告されています。

 とはいえ、同時に3セット採るのは現実には難しいですね。右腕で1セット、左腕で1セット採って、3セット目を採る腕がない。2セットが妥当ですね。亜急性心内膜炎といった、少し時間がとれる場合には、時間を置いてから3セット目も採った方がいいです。

 血培を複数セット採る理由の2つ目は、コンタミか否かを判断する材料にするためです。皮膚表面の常在菌や、血培ボトルのゴム栓についた環境菌を押し込んで、それが増えてきた場合を、「コンタミ」とか「汚染菌」と言います。

 国立感染症研究所の調査によると、血培で出たニキビ菌(Propionibacterium acnes)は、ほぼ100%汚染菌、セレウス菌(Bacillus cereus)も9割以上は汚染菌、表皮ブドウ球菌も高率で汚染菌だったという統計が出ています。

 ただ本当に汚染菌かどうかは問題です。後ろ2つは起炎菌である可能性も十分あります。これは後で触れます。汚染菌か起炎菌かの判断として、2セット両方から検出されれば汚染菌ではないと考えるわけです。ただ、検出率の問題があるので、1セットだけの場合でも起炎菌である可能性もありますし、清潔操作が不十分ならば、両方から同じ汚染菌が出る可能性もあり得ます。

検体を採るタイミングは
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東田 次に、いつ血培を採るべきか考えましょう。

 体温上昇と血液中の菌量を調べたグラフを示します。体温がピークになる時よりも前、熱の上がりかけに菌量が多いとされています。敗血症などでは悪寒戦慄が起きてから熱が上がりだしますので、このタイミングで採るのが理想的です。

 ただ、熱が出るタイミングや、熱の経過は後になって分かることですから、血培が必要と思ったらすぐ採らざるを得ないのが現実です。

 また、血培を採る前にすでに抗菌薬を使っている場合はどうしますか。

 一つは、抗菌薬の次の投与の直前、要するに血液中の抗菌薬の濃度が一番低くなっている時に採る。もう一つは、意図的に抗菌薬を1、2日止めて、その後に血培を採ることもあります。

 抗菌薬が入った後だと、菌が弱りますし、検体内にも抗菌薬が入ってくるので、検出率が下がります。ただ最近の血培ボトルにはレジンと呼ばれる粒々が入っていて、ある程度、抗菌薬を吸着し、抗菌薬の影響を軽減できる工夫がなされています。

真夜中でも遠慮せず
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東田 細菌検査をより有用にする方法があります。

 検体を採ったら直ちに、夜間でも休日でも検査室に提出してください。検査室には血培の自動装置があり、ワインセラーのようにボトルを挿して培養します。ボトルの中で菌が増えてくると、機械が自動的に検出して、「何番目にあるボトルが陽性です」というアラームを自動的に出す仕組みになっています。検査室での作業は自動装置にボトルを挿すだけ。だから、真夜中に血培を出すと検査技師に迷惑をかけると思う必要はなく、遠慮せずに出してください。

 一方、手が離せなくて、すぐには検体を出せない場合はどうしますか。

 昔の本には「血培ボトルを保管する際は37度でインキュベート」と書いてありました。今の自動化装置は、ボトルを入れてからのpHの変化を捉える仕組みですので、入れる前に菌が増殖していると変化が捉えにくくなります。すぐに検査室に出せない場合には、そのまま室温で保存してください。