2026.1.25(日)大雪

 

体がぐったりしていて眠い。
小学生の頃のプールの授業の後のような、心地よい疲労感に包まれている。
まだ午後4時なのに。
2時間弱雪かきをして、お風呂に入り、録画してあった「教場」を見ながら
とんでもない睡魔に襲われている。




数日前から雪が降っているが、25日(日)未明の雪は、静かに静かに恐ろしい積雪をもたらした。
石川県に4回にわたって「顕著な大雪に関する気象情報」が発表された。
金沢市で5年ぶりに積雪が60センチを超え、午前6時までの6時間に37センチの雪が降り、観測史上1位を更新した。


 

泊まっていた彼が「外、やばいね」と言う。

「うん、やばいね」

「ちょっと様子を見てくるよ」


私のマンションから彼の職場までは遠いので、あすに備え、きょう中に家に帰るという。窓の外を見ていると、近くの企業が依頼したであろう除雪車が稼働している。
「あの除雪車、こっちまで来てくれんかね?」などと、淡い期待を寄せながら窓の外を見る。

きょうは午前中に再配達を依頼していた荷物があるので、正午までピンポン待ちをしなければならない。駐車場はマンションの裏なので、トラックが正面口に来た場合、気づかない可能性があるのだ。私は「正午以降なら、一緒に雪かきできるわ」と言って、宅配トラックが来るのを待っていた。


しかし、正午を過ぎてもトラックは来なかった。

私はその宅配会社に電話をかけ「雪で大変なところ申し訳ないんですが、きょう午前中にお願いしていた荷物、どうなりますかね?」と、聞いた。すると電話口の女性が「きょうは大雪ですべての配送をストップしているんです」と言う。


ええっ!?そうなの? 
「もちろんこんな大雪ですから配送がないのは仕方ないんですけど、それなら連絡が欲しかったです。一刻も早く雪かきをしたいのに、入れ違いになったら悪いから家で待っていたのに…」と私は言った。
「すいません。ドライバーから電話を入れるはずなのですが」
「ないです…。その1本の電話さえあればよかったんですが」という。

そもそも、今月に入ってからうちのマンションの宅配ボックスがすべて埋まっていることも問題なのだ。

誰が占領しているんだろう?誰が連日に渡って荷物を出していないんだろう?
だからせっかく宅配ボックスがあるにも関わらず、再配達の依頼をすることが増えているのだ。

 

1本の電話がないこと、宅配ボックスがずっと使えないこと…私の怒りも静かに静かに積もっていくようだ。



荷物が届かないことは確定したので、私はダウンコート、マフラー、手袋、長靴姿で、雪かきに向かった。
そういえば先週金曜日にTVで雪かきのポイントを解説していた。
「ストレッチをしてから行うこと」「利き腕とは逆の腕も使うこと」など。ポイントを頭に入れながら、体を傷めないように、でも手際よく、スコップ1本で除雪を進めていく。まず車の雪を落とし、そのあと大通りまで30mほどある住宅道路の雪かきを

行っていく。

同じマンションに住む男性が、ガシガシ道を造ってくれている。
近くのレストランのシェフたちも「ようやく店の前が終わりました」と言い、裏道の除雪をし始めた。みんなで道を造っていく一体感。

「今週末はジムに行けない分、雪かきトレーニングだ!」と、気持ちも爽やかだ。



ようやく大通りに通じる道が出来たので、まずは私の4WD車で走ってみることに。
私の4駆で道を踏み固めてから、彼の2駆を出そうという作戦だ。
やはり4駆は強い。大通りまで出ることができた。そのあと私はバックで引き返し、駐車場に戻ろうとしていた。


すると彼が大慌てでやってきた。「運転、代わるよ」と。
「そう?」とドアを開けようとしたら、彼が「ずももも・・・」と溝に落ちていった。

その様子がスローモーションのように見えた。衝撃的だった。
私の車が溝に落ちないよう運転を代わろうとしてくれた彼が、溝に落ちていったのである。

 彼が落ちた跡

 


彼がGパンをめくって、自分の足を確認する姿を見てぎょっとした。
膝のあたりとすねのあたりが擦り剝けて、血が出ていた。
私に見せる感じではなく、彼が自分で確認している瞬間だったのだけれど、私は見てしまった。

 

その後、無事私の車を駐車場に収め、彼の2駆を大通りまで出すことはできたのだが

彼の怪我が気にかかる。


「私とレクサスを守るために、体を張って守ってくれてありがとう。ごめんね」と伝える。
「名誉の負傷」と返ってきた。ちょっと高い絆創膏を貼っている写真が送られてきた。

北陸に生まれ雪には慣れているつもりだけれど、大雪になると家から出るだけで一苦労だ。けがや事故と隣り合わせだということを、身をもって感じた。

 

2026.1.17(土)くもり

 

土曜日の仕事終わり18:00。
きょうは彼が昼すぎから開かれる新年会に行った。「昼からだから、夕方か夜ごろに会えるかもしれない。連絡するね」と言っていたが、何ひとつ連絡がない。
「盛り上がっています」とか「これから〇次回です」など、何か指針があればいいものを、この時点で何もないならと、私は好きにすることにした。

普段は母が夕食を作ってくれているのだが、「今夜は彼が来るかもしれないから要らない」と伝えてあった。その肝心な彼から何一つ音沙汰がない「今夜は心おきなく自分の好きな物を好きなだけ食べることにしよう!」と気持ちを切り替えた。

たこ焼きをテイクアウトしようか、スーパーで贅沢なおかずを探そうか、などと思いを巡らせていたのだが、ふと思いついたのが、一度富山で食べて美味しい!と思った「岐阜タンメン」だ。

キムタクが織田信長役で「ぎふ信長まつり」に登場した2022年。友達が「キムタクは見に行けないけれど、せめてキムタクが今いる土地の名物「岐阜タンメン」を食べに行こうよ」と、わかったようなわからないような理由で私を誘ったのだ。そうして行ってみたら、替玉(かえだま)をしてしまうほど美味しかったのだ。

あの岐阜タンメンよ、再び!
去年11月に石川県内にもオープンしたことは知っており、機会があれば行きたいと思っていたのだ。

「いざ、ゆかん!」と会社を出ようとしたときに、後輩から声をかけられた。仕事の相談だった。まあ、相談というか、愚痴寄りの相談なのだが。
私は話を聞き「そりゃそうだ、同感だ!私もあの件については怒っている!!」と同調したのち、いそいそとナビに住所を入れて、野々市市にある「岐阜タンメン」を目指した。

気の利く先輩なら「私、今から岐阜タンメン食べに行くけど一緒に行く?」と誘うのだろうが、私はひとりになりたかった。
ずずず~っと、誰に気兼ねすることなくラーメンをすすりたかったのだ。

店の駐車場に交通誘導員がいたので「えっ、そんな人気なの?」と思った。
確かに店の外に行列ができている。一人で並ぶのはやや心細いが、引き返す気もない。19:00 寒空の中、ダウンコートを着て行列に並ぶ。



 

私の前に並んでいたカップルの男性は「トイレ、めっちゃ暖かかった」と言って列に戻ってきた。この店はトイレが外にあるのだが、贅沢にも暖房が効いているという。
暖かいトイレ。気になったが、私は一人なので行列を離れるわけにはいくまい。

私の後ろに並んでいた家族連れの父親は、並びながらガラス越しに店の中をチェックし「席の使い方、めっちゃ下手!」などと言っていた。
5人グループ、カップル、おひとり様など様々な数の客を、無駄なく効率よく、テーブル席やカウンター席に配置するのは、センスが問われるところではある。

私はつくづく「後輩を連れてこなくて良かった…」と思った。
「寒い?別の店にしよっか」などと気を使い、また新たな店を探す面倒臭さよ。
寒空だろうが行列だろうが、私は並んででも岐阜タンメンが食べたいのだ。

外にメニュー表が張り付けてあったので、それを見ながら何をオーダーしようか考える。
辛さは2辛にしよう。トッピングはどうしようか。トッピングもいいけれど、替玉も気になるな、などと思い、結局ノーマルの岐阜タンメン880円にした。


 

前清算の食券機に「替玉」のボタンはあるものの、先に買ってしまうのは怖い。
「替玉注文 現金対応OK!」と書いてあるので、食べ終えた後、足りなかったら替え玉を注文しよう。

結局、25分ほど待って、店に通された。
カウンター席でわくわくしながら、ラーメンを待つ。

 



見た目はシンプルなんだけれど、スープを一口すすった瞬間「おおうっ、これよ、これこれ!!」と思い出す。ニンニクがごつんと効いている。
おとなしい顔して、わりとやんちゃな味が冷えた体にしみ渡る。
「ふぁあ うんま~」と思う。
食べ進めながら「替玉しよっかな~」と思う。

そこで目に飛び込んできたのが「プラス50円でこんにゃく麺にできます」という文字。
小麦にこんにゃくが練りこんである、おしゃれで意識高めの麺なのだろうか。

ちょっと食べてみたい。



私はチーンとベルを鳴らし「替玉、こんにゃく麺でお願いします」とオーダーした。
替玉は150円なのだが、200円でこんにゃく麺になった。

一体どんな麺なのだろう、とわくわくして待っていた。
そして「お待たせしました こんにゃく麺です」と、別皿に盛られたこんにゃく麺を見てのけぞった。
あっ・・・。こういうこと!?

 


 

そこに盛られていたのはまさしくこんにゃく。しらたきを太くしたような感じだ。
「こんにゃく麺ってこういうこと!?!?」と、動揺する。

なんとなくヘルシーな麺なのだろうとは思っていたけれど、まさか「まんま、こんにゃく」だとは思っていなかったのだ。

誰も嘘をついていないし、店側も大真面目だ。
ただ、私が想像したものと違っていただけだ。


完全なるリサーチ不足。
でも今夜は一人なので「ぎゃあ、マジのこんにゃくだ!」などと言う相手もおらず、私は「そうです。私が食べたかったのはこれです」という顔で、こんにゃく麺をずずず~っとすすった。
 

味は悪くないし、これがお好きな方もいるのだろうが「岐阜タンメンが食べたい!」という気分の私が、求めている味ではなかった。

 



店を出たらさらに長い行列が出来ていた。
何とも言えない気持ちで国道8号を走る。
途中「かっぱ寿司」の看板が目に入り「今度は替え玉なしで、2軒目に回転寿司という手もあるなぁ」などと思った。

 

家に帰ってこんにゃく麺に思いを馳せていると、21:00ごろようやく彼から「今、新年会が終わりました~」と、電話がかかってきた。12:30~21:00まで…エンドレスな新年会。コーヒーだけだと驚くほど無口な人なのだが、お酒があるとどれだけでも楽しめてしまうんだなぁと改めて思う。そんな一日。

人と旅行をするときのリズムがわかってきた。相手が起きる時間を聞いて、その1時間10分前に起きればバタつかない。まあ、1時間前でもいいのだが、10分というのはプラスαの心の余裕だ。


私は髪が長くて、量が多くて、髪質がキシキシ・ゴワゴワしているなので、髪を乾かし切るのに時間がかかる。他人にはわかりにくい苦労なのだが、地味にしんどい。
ふつうの人の洗髪が「ハンドタオルを洗って乾かす」くらいの手間だとすると、私の洗髪は「じゅうたんを洗って乾かす」レベルの手間なのだ。

準備でバタバタして「ちょっと待って、ちょっと待って」と言わないためには、1時間10分前行動がスムーズなのである。

 

寝ている彼を気遣いながら、浴槽に湯を溜めて髪を洗う。ドライヤーに「しーっ」と言いながら髪を乾かす。スキンケアをして、メイクをして、タオルの数がちゃんと揃っているか確認して、荷物を整えて、忘れ物がないかチェックして、そこまである程度できた時に、彼がむっくりと起きた。完璧。

チェックアウト後、歩いて阪急梅田本店へ。ここの地下1階には「スナックパーク」なる立ち食い天国がある。ガッツリ系から小腹満たしまで、幅広いメニュー設定となっている。

 

 

 

きょうはここで阪神名物「いか焼き」を食べたかったのだ。北陸の催事にも出店していたのだが、10枚単位での販売でとても食べきれそうになかったので、本場で1枚食べようと思っていた。いか焼きの生地に卵を混ぜて焼き上げたのが「デラバンである。デラックス版の略らしい。

 

私はほかに明石焼をチョイス。ほっちゃほちゃで、期待通りのおいしさだった。
彼はちょっと目を離した隙に「トラボール」なるお酒を持って、にやにやしながらやってきた。ウイスキーをジンジャービアで割ったハイボールらしい。

 

 

 

 

 

 

軽く小腹を満たしたのち、大阪から京都へ。京都駅ビルで電車の中で食べるものを物色する。ここで気になったのが豆狸(まめだ)の「いなりずし」。これまで寿司と言えば「海鮮」と思い込んでいたのだが、店頭で見た「いなりずし」が、どうにもこうにも美味しそうなのである。私たちはこのいなりずしを軸に、それぞれコロッケや、お菓子や、お酒など、電車の中も天国になるよう買い物を済ませ、サンダーバードに乗り込んだ。

 

 

 

スーツケースの上に置いた袋に「電車の中で食べるものたち」

 


さて、いなりずし。こんなに美味しいものだとは再発見だ。これまでいなりは、寿司詰め合わせの中の「はずれキャラ」だと思っていたのだが、「そんな風に思っていた自分よ、大馬鹿者め」と、𠮟りつけたい。

特に「いなり」に特化したお店のいなりだったからか、その味付けもバリエーションに富んでおり、だからといってどれも外すことなく完璧な美味しさを確立している。

「はぁ~ おいひぃ~」と、唸りながら食べた。

 

いなりの後は、スナックタイム

 

ゆっくりしたいところだが、敦賀駅で乗り換え。北陸新幹線が敦賀まで開業してから初めて関西方面に来た。乗り換えは少々面倒だが、やむを得まい。

 

敦賀駅で北陸新幹線を待っていると、虹が見えた。穏やかな旅だったなぁ…と改めて思う。食べたいものを食べて、気になることはやってみて(主に変なガチャなど)、互いの息遣いや疲れ具合などを気にしつつ、マナーを守って旅をする。彼といると私はとても楽だ。そして彼も楽そうだ。(たぶん・・・)

 

 

 

 


いなりずしで食欲に火がついた私は、新幹線の中でコロッケにも手をつけようとした。彼は「それはおうちに帰ってから、トースターで温めた方がおいしいよ」と言ったが、私は「冷たくてもいいが。今食べたいが」と言って、トリュフ香る6種のきのこのクリームコロッケをたいらげた。(おわり)

 

 

通天閣コロッケに、ヘレビフカツサンド、串カツなど…。食べたいものを食べて、怪しいガチャガチャを回し、新天地に思い残すことはない。

 

環状線に乗っていったんホテルに戻ることした。たまたま乗った電車の天井や壁にシャボン玉のような画像が、色を変えてどんどん映し出されていく。「何これ!?と、電車を降りて外から電車を見てみると「JR WEST Parade Train」と書いてある。検索したら、大阪・関西万博を盛り上げるために、去年導入された車両らしい。

 

明るいトロピカルカラーの電車

 

 

 

ホテルに戻る前に夜ご飯のお店を下見しようと、近くの福島聖天通商店街を散策した。「売れても占い商店街!!」というのぼり旗が「ドヤ顔」で商店街のあちこちに、はためいている。

 

「なんかうまいこと言ってやったぞ」という雰囲気はつかめるのだが、「売れても占い(うらない)」だなんて、本当に商店街の魅力につながるキャッチフレーズなのだろうか。ご丁寧にRマーク(商標登録)までついている。「そんな・・・こんなエッジの効きすぎているキャッチフレーズ、どこもマネしませんよ・・・」と静かに思う。

 

占いに特化していることは伝わるのだが、耳で聞くと「うらない」が「売らない」に変換されてしまい、「売れても売らないだなんて、マイナスイメージになるのでは?」と思うのは私だけだろうか。

 

なんたるインパクト!!その勢いは止められない

 

今、気付いた「オーガニックストリート」という一面もあるらしい

 

 

結局、おなかいっぱいの時間にうろついたところで、夜ご飯の店が決まるはずもなく、ホテルに戻って一休みすることにした。こうして昼寝的な時間がとれる気楽さよ。女性同士だと、旅の途中で「昼寝」タイムなど挟まないので、恋人と行く旅の気楽さを痛感する。まさに「食っちゃ寝」を地で行く旅である。

 

18:00ごろむっくり起きて、夕食に向かう。そんなにおなかが空いているわけではないのだけれど、「あまり夜遅くなるのもよくないよね」ということで、出かけることにした。昼寝の後コンタクトを入れるのも面倒だったので、メガネでよいだろう。

 

お好み焼きや串カツなど大阪らしいものは食べたし、今夜はどうしようか…と思っているところに興味を惹かれたのが「焼き肉」である。2人とも「いいね~」と言いながら店に入る。「モツの関ちゃん」

 

若いスタッフが笑顔でさくさくと対応してくれる。カルビやハラミなど「いつもの大好きなもの」を一通りオーダーしたあと、おすすめを聞くと「塩ミノ」「生キムチ」だそうだ。生キムチは漬けていないキムチのことで、白菜に特製の「キムチだれ」がかかっているそうである。せっかくなので、おすすめ2品もオーダーした。

 

普段ホルモン系はあまり食べたいのだけれど、塩ミノはぶにぶにしていて、歯ごたえが面白く、味付けも良くて美味しかった。生キムチなるものも「漬けてないキムチって美味しいの?」と半信半疑だったが、特製のたれがたいそう良い味だ。「これはここでしか食べられないよね。注文して良かったね」

 

おすすめ①「生キムチ」

 

おすすめ②「塩ミノ」

 

 

全体的にリーズナブル この物価高の時代に、安心して注文できる

 

 

肉の上に「もち」が乗っている 「それも焼いて食べてください」と。プチお得感

 

 

ふらりと入った店だったけれど、何を食べても美味しくて、雰囲気もよくて、店員さんも感じがよく、「当たりだったね~」と言い合う。その場で口コミを書いて、ドリンク代をそれぞれ1杯無料にしてもらった。彼が「あなたといる旅が楽しい。ふらっと入った店も、ことごとく当たりだし」と口にした。それはそれは恐縮です。なんかちょっとした勝利の女神のようでうれしい。

 

 

ご機嫌な帰り道、コンビニでカールを買った。「カール」保育園のときから大好きだったおやつなのに、現在北陸では販売されていない。「関西ならあるのか~」と懐かしくなり「チーズ味」「うす味」を1袋ずつ買った。そうして2泊3日の旅にしては大きすぎるスーツケースに「にひひ」と詰めた。

 

 

最終回【7】につづく

 

大阪・新世界に降り立ってまず目についたのが、いかがわしいカプセルトイである。「ガチャの穴場」なるスポットがあり、そこには「虫」と書かれたカプセルトイや、アダルト的な文言が書かれたカプセルトイなどがずらり堂々と並んでいる。1回500円なのだがカプセルは真っ黒で、まるで何が入っているかわからない。

 

一瞬、自分の人生とはあまりに関係ないと思い、通り過ぎてしまう・・・

 

虫って何よ!?

 


中がまったく見えない 透けない黒いカプセル

 

最初はまったく関心がなかった。自分が回すことになろうなんて思いもしなかった。思春期の男子中学生じゃあるまいし、そんな文言に騙されてなるものか。


最近、観光地に行くと、カプセルトイが1室を占めるガチャガチャセンター(私が勝手にそう呼んでいるのだが)なるものをよく見かける。アニメのキャラクターや、ご当地もの、キーホルダー系、置物系など、実にバリエーション豊かである。

 

私は「光る通天閣」なるオブジェが出てくるガチャガチャに心奪われていた。ピンクか、ブルーか、イエローに光る通天閣。大阪らしくていいじゃないか。今回の旅のガチャはこれにしよっかな~と思っていたのだが、ふと、さっき見たあのアダルティーなガチャガチャが脳裏に浮かんだ。光る通天閣は出てくるものが明確だ。必ず光る通天閣が出てくるのだ。お楽しみは色だけだ。

 

しかし、さっき見たあの真っ黒なカプセルの中身は想像がつかない。

むくむくと湧き上がってくるジャーナリズム精神。

あの中身を見ないで帰ったら、後悔しそうだ。「何が入っていたのだろう、何が入っていたのだろう…」と、無駄な想像に時間がとられることになるだろう。どうせろくなものが出てこないだろうが、500円で社会勉強をすると思えば安い投資ではないか。

 

私は彼に「ねぇねぇ…光る通天閣まわすくらいなら、さっきの怪しいガチャまわそうかな」と言ってみた。彼は「さっきビフカツサンド買ったときにおつりもらったから、500円玉ならあるよ」と言う。

 

500円玉がある。彼が止めない。どころか、背中を押してくれている・・・。ええい、ままよ。回してみようではないか。

 

心を決めてずらりと並ぶガチャガチャの前に立ってみる。自動販売機には「たった500円で人生最高のエロい笑顔が生まれます 悩んでないでレッツガチャ!!」と、またまた私の背中を押すような文言が書かれている。

 

悩ましいのが、並んでいるガチャガチャが、少しずつ文言を変えて書かれていることである。「カップルと夫婦が必ず燃え上がるアレが入ってます」「エロすぎるあなたが…泣いて悦ぶ♡ガチャガチャ」「あまりにも…巨乳すぎるガチャガチャ」など。

 

「どうしよう、どれがいいと思う?」と彼に意見を求めてみるが、いまいち積極的なアドバイスがもらえない。「好きなのにしまっし」という感じである。結局、「エロすぎるあなたが…泣いて悦ぶ♡ガチャガチャ」を回してみることにした。

 

いざ、500円投入!心していかがわしいガチャガチャを回してみる。

 

ごとん。真っ黒なカプセルが落ちてきた。

 

恐る恐る開けてみると・・・

 

 

「何これーーー」開けた瞬間、私は膝から崩れ落ちそうなほど力が抜けた。カプセル内は、肌色のまあるいものでパンパンだった。それは、カプセルと同じ大きさ・丸さのおっぱいキーホルダーであった。

 

「は~。こういうことか~~~」

手にした瞬間から「要らないものを所有してしまったなぁ・・・」と、脱力した。

 

これ、どうしよう・・・

 

カプセルトイも、福袋も、開けるまでが1番楽しい。開けた後、そこにあるのは夢ではなく現実だ。これ、どうしようか。

 

そんなことを思いながら、出たばかりのキーホルダーを手に握りしめて歩く。

 

ぶにぶに。ほちゃほちゃ。ふにょふにょ。

 

それは思いのほか、私の手に幸せな感触をもたらした。

 

ぷにぷに。ほにょほにょ。ぼよんぼよん。

 

だんだん可愛いなと思えてきた。

 

 

借景にこだわって撮影してみる・・・スーパーボールすくいをバックにするといいかな、とか思って( ´艸`)

 


「ガチャガチャ、回してよかった。気が済んだ」と、思った。

「気が済んだ」ってすごく大事だ。よくよく考えてみれば、私の人生のテーマは「気が済む」ことなのだ。仕事も、恋愛も、趣味も、口論も…。何でも「気が済んだ」と思えないと次にいけない。だから本当に、この旅で、気になるガチャを回してよかったなぁと思っている。

 

そして、要らないなぁ・・・と思ったおっぱいは、私の下着の引き出しの中で、ごろんごろんと転がっている。非常に愛想らしい。

 

【6】につづく