妖共 ~Unearthly Guys~
第一匹 悪鬼羅刹 5


           4

 人が妖怪になる。
 それは実際に無いとは言い切れない現象である。
 仮に例を挙げてみよう。
 有名か、どうかは別としてその言葉だけなら誰しも聞いたことがあるであろう。
 『鬼女』
 心の酷い女性を例えるのに使われていたりするが、これも妖怪の一種だ。
 元々人間であった女性が、恨み、憎しみ等の不の感情により鬼と化す。
 それが鬼女だ。
 つまりは人間でも己が心の内に酷く歪んだ感情を抱いていると、いつしかその感情に支配され化け物に化すというわけだ。
 実に中々怖い話だ。
 くわばら、くわばら。

〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆

「人間が妖怪にねぇ…。嫌な話だぜ」
 雷千(ライチ)はポツリと独り言のように呟いた。
「はい?何か言いましたか?雷千さん」
 亜美は既に落ち着きを取り戻し、今度は泣かないようにと頬を軽く叩いたところだった。
「いや、別に…」
 そうですか、と笑顔を作り微笑んでみせる。
 無理にでも微笑んでいた方が気持ちが楽になる。
「落ち着いてすぐにで悪いんだけどさぁ~、一つ質問良いかなぁ?」
 ミイが小首を傾げながら話しかけてきた。
「何でしょう?」
「高田さんのお兄さんが妖怪になったっていう確信的な証拠みたいなのはあるのぉ?」
 それは丁度雷千も気になっていたようで、ミイの質問に軽く頷いた。
「…さっきも言ったように、これは私と友達の推測でしか無いんですけど…。うーん…。どこから説明すれば良いのかな…」
 ゆっくりと言葉を選ぶようにポツリポツリと話していく。
「まずこの推測の根っこからはっきりとしているわけじゃあ無いんですよね…。人を襲うのは幽霊には出来ないっていう事が前提でこの推測は成り立っているんですけど…。そこは妖怪の雷千さん達から聞いてみてOKなところですか?」
「OKと言われても…。幽霊とかの存在は俺らでも知らねぇし…。今のところは何とも言えないとしか言いようがないね。もっと詳しく話してくれ」
「はい、分かりました。えーとですね…」
 しかし何から話せば良いのか中々整理が付かない。
 状況を整理していたら、頭を抱えたまま暫く固まってしまうことになった。
「さっき襲われたって言ってたよねぇ~」
 そこですかさずミイが助け舟を出した。
「は、はい」
「それについて詳しく教えてくれると嬉しかったりぃ」
「そうですね…。結構最近だったから…二週間前くらいのことだと思うんですけど…」
 亜美は頭を抱え込んだ体勢のまま話を続ける。
「私が部屋の掃除をしていた時、転んだんですね」
 そう言った瞬間、雷千とミイが顔を見つめあわせてくすりと笑った。
 …気がした。
 ―気にしなくていっか。
 亜美は気にせず話を続ける事にした。
「最初は何かに躓いたのかと思ったんですけど、そうじゃなかったんですよ。…床から手が生えてきている感じで…その手が私の足首をがっちり掴んでたんです…」
 そこで亜美はするりと左足の靴下を下げる。
「これ、その時についた痕です」
 雷千とミイの視線が左足に注がれる。
 そこにはおよそ可愛らしい容姿には似つかわしくない禍々しい傷痕があった。
 傷痕の部分は紫色に変色し、指の一本一本まではっきりと確認することが出来る。
「ひでぇな、こりゃ…。襲われてからはずっとこんな感じのままなのか?」
「はい…。医者にも見せたんですけど、原因は分からないと…」
「原因不明ね…。ミイ」
「ん~?」
 ずっと亜美の足を眺めていたミイはのんびりと顔を上げる。
「何か分かったか?」
「ん~。これは完全に妖怪の仕業ってことくらいかなぁ」
「えっ!?これで見ただけで分かっちゃうんですか!?」
「まぁね。正確には『見る』んじゃあなくて『嗅ぐ』んだけどね」
「嗅ぐ…?匂いをですか?」
「そ。私猫の妖怪ちゃんだから♪」
 ミイは横に垂れていた髪を軽く持ち上げてみせる。
 人間でいう耳と呼ばれる感覚器官が本来ある場所に猫の耳がちょこんと生えていた。
「だからね、なんとなぁ~くだけど匂いとか嗅ぎ分けれるわけ」
 舌をちろりと出して得意げに微笑む。
 確かに、言われてみればその微笑みはどこか猫らしい。
「んじゃあ高田さんが言っていた通りこれは妖怪の仕業だったってことで…」
 雷千が気だるそうな声で会話に入ってくる。
「足を掴まれた後はどうなったんだ?」
「えーと。気味が悪くてすぐに振りほどこうと暴れたんですけど、全然取れなくてどうしようかと思ってた時に手が成長したんですよ」
「手が成長した?」
「成長っていうか…床からどんどん天井へと伸びていく感じです。」
 自分でも分かりづらい表現をしたな、と言った後に後悔した。
「で、そのままずんずん床から出てきて…。最終的に肩くらいまで出てきたんですけどね、その後…」
 亜美はそこで口を閉じる。
 今でも脳裏に焼きついて離れないあの光景を喋る…。
 ごくん
 唾を飲み込み、口をゆっくりと、だが確実に動かしていく。
「床から兄の顔が出てきて…何か言ってるんです。しきりに口を動かしていたから。でも何を言っているのか全く分からない…。だから聞き取ろうと思って近づいたら消えちゃって…。そしたらいきなり床から生えた手が私の足首を引っ張り出して…そのまま床の中に引きずり込もうとしてるから私無我夢中でソファにしがみついてたらタイミングよく携帯電話が鳴って…そしたら何故かさっきの手が消えてて…電話に出たらお母さんからでお兄ちゃんが行方不明になってるって電話で…」
 後半からは自分でも何を言っているのか分からなかった。
 このことを口にするたび、頭の中で映像が流れ出す。
 あの兄の悲痛な顔を―
「それで兄が妖怪になったかもしれないって思ったわけか」
「…はい」
「それからは何かあったぁ?」
「いえ、襲われたといえるのはこれくらいです。ただ何もしてこないんですけど、いきなり私の目の前に現れることはあります」
 何もせず、じっと見つめているだけ。
 それはそれで気味が悪いものがる。
「こうして状況が分かった状態だからこそ言わしてもらうけどさぁ…」
 雷千は少し困ったような顔をし、頭を掻く仕草をした。
「ここは基本的には護衛のようなものを生業にしてる。つまりだなぁ…高田さんのお兄さんを助けて欲しいって依頼なのなら、ここじゃあお門違いってことになんだが…」
「分かってます」
 亜美はしっかりと言い放つ。
 そんなことはここを教えてくれた友達にしっかりと教えてもらった。
「大丈夫です。ちゃんとそこら辺は分かっていますから」
 だが彼女はこの話を聞いてこの『雷來組』を紹介した。
 やけに自信たっぷりに。
 行けば分かる、と。
「…そうか。なら良いけどよ」
 正直こうして来て見たが、まだその自信が何処から来ているのかは分からない。
 彼女がああ言っているのだからきっと何か意味があるに違いないのだが。
「なら、依頼内容をどうぞ」
 だけど、彼女のあの表情は絶対と言って良いほど信頼出来るものだ。
「私を妖怪から護って下さい」
 私はこの二匹の妖怪に望みを託すことにした。



£あとがき£
 お久しぶりです、雷武です!!
 小説更新もんのすんごく遅くなってしまって本当にごめんなさぁーい!!(土下座)私の使っているPCが壊れたり、使っている無線ランが壊れたり(事実です)本当に大変ですた…。こんな小説を待ってくれている方はいないはずなので良いですが、暫く放置しているとどうしても続きが書きたくて書きたくてたまりませんでした← いえ、本当ですよ?
 ってことで私のPCさんも無線ランちゃんも復活、ついでに雷武も復活ということでこれからもこんな奴ですがどうぞ宜しくお願いします!!またブログは毎週月曜日更新になると思うので、暇な人はお付き合い宜しくお願いします☆
 それでは、こんな低レベルな小説&毎回くだらないことしか書いてないあとがきを読んで下さった貴方に感謝の言葉を!

○余談○
 小説の感想、アドバイス、質問等ありましたらコメント宜しくお願いします♪