奇奇怪怪 ~出会い、矛盾、心、化~3
路地裏に住まうは鼠。
路地裏に集まるは黒き青年。
路地裏に捨てられるは容易く処分出来ぬごみたち。
路地裏を作り上げているビルの壁は薄汚れ、窓のふちにはくもの巣が張り、地面からは今にも茶色い生物が湧き出てきそうな…そんな路地裏に僕-大津良太郎はいた。
嘘だ。
そんな場所に僕はいない。
路地裏にはいるが、前述の様な路地裏にはいない。
そんな汚らしい場所は路地裏じゃない。
ただのごみの吹き溜まりだ。
けれど今僕がいる場所だって決して気分の良い場所とは言えない。
路地裏はどう突き詰めたところで路地裏に変わりは無い。
僕はこの場所が嫌いだ。
しかも自分から入ったのではなく、半強制的に連れ込まれたとなればなおさらだ。
「ここら辺でいいか…」
純白のスーツに身を包んだ男-僕をこの路地裏に連れ込んだ張本人はそこでやっと足を止めた。
さっきは焦りすぎててこのまま付いてきちゃったけど…さて、ここからどうしよう。
今まで僕に背を向けていた男が振り返る。
こいつ…なんかやばそうだもんなぁ…。早いとこ逃げた方が得策かもしれないな。
男は例のやたらと目つきの悪い瞳で僕を見つめている。
…いや。睨んでるのかも。
「なぁ、おい」
不意に男は口を開いた。
反射的に僕は鞄を握っていた手に力を入れる。
「…そんなに身構えんなよ。何もしやしねぇよ」
それが大勢の人の前で子供の胸倉を掴む奴の台詞か?
そうは思ったが、絶対に口には出さない。
それこそ口に出したら自分の寿命を縮めるだけにしかならない。
「俺はただお前に質問したいだけだ」
そう。それ。
さっきから僕はそれが気になっていた。
正直ここまでこの男におとなしく付いていったのも、それが理由だったりする。
「その、質問。さっきからずっと言ってますけど一体何なんですか?」
「ああ、たぶん。お前にとっちゃ簡単な質問だ」
男は自分の言葉に軽く頷く動作をした後に、ひどくゆっくりとした調子で喋りだした。
「今は一体世紀なんだ?そしてここは何処の国だ?」
「…はぁ?」
思わず拍子抜けした声が喉からもれる。
そんな質問をされるとは思ってもみなかった。
いや、こんな質問をされるなど超能力者でもない限り絶対に予想出来はしないだろう。
「…21世紀の日本です」
自分でもなんて間抜けな会話をしているんだろうと思う。
ってかこの男、こんなことを聞くためだけに僕を襲撃(未遂)したのか!?
「はぁ~ん。21世紀…。日本ね。なるほど」
男は妙に納得したように何度も頷きながら独り言を呟いていた。
かなり変な人である。
「何でそんなこと聞くんですか?」
興味本位で聞いてみた。
実は私記憶喪失なのでーす、みたいな漫画的展開だったら面白いのに…なんちゃって。
「俺、記憶喪失なんだ」
この男、見事に僕の期待に応えてくれた。
しかも超的確に。
「えぇ…。本当ですか…?」
「マジだ」
真顔で答えられちゃいました。
さて、これからどうしたものか…。
「ほ、本当に記憶喪失だって言うんなら僕なんかに構う前に、病院に行った方が良いですよ」
「いや、お前に構えって言われた」
「どなたに?」
「神に」
この人記憶喪失のうえに頭がかなり電波っているらしい。
いや、記憶が吹っ飛んだのと一緒に頭の大事な部分に傷を負っているのかもしれない。
それじゃあなおさら病院に行くべきだ。
僕じゃとてもじゃないが手に負えない。
「神にお前に話しかけろと言われたんだ。こりゃ一種のお告げって奴だろ?普通はそのお告げにしたがうだろ?」
普通はお告げなんて聞こえねぇよ。
それにあれは話しかけれれたというか、かつあげされたと言った方が正しい。ほとんど。
「神に言われたくらいだ。お前、俺のことなんか知ってんだろ?」
「いえ、何も。全く微塵も存知あげません」
こんな人知っていたら一生忘れられない。
ってかそれよりそろそろ逃げた方が良いかもしれない…。
「本当になんも知れねぇのかよ…」
男はひどく落胆したように大きく溜息をつき、壁に体を預けた。
一瞬。
本当に一瞬、男は僕から注意を逸らした。
その一瞬だけで僕には十分すぎるほど、十分すぎた。
「っおい!」
男が声を上げた時には、僕はもう既に走り出していた。
限界にまで足を開き、走る。走る。
後ろから追いかけてくる様子はない。
いける。このままなら逃げ切れる。
そして-大通りにたどり着いた。
苦しい。息が切れた…。久しぶりに本気で走ったな。
暴れる心臓を押さえつけながらゆっくりと歩き出す。
はぁ…。散々な目に合った。
さて学校に…。あ、入学式。
慌てて腕時計を確認する。
時刻は11時10分前。
終了時刻まであと約20分。
ここから学校までは走って5分程度。
「…」
大きなため息をとりあえずついてからまた走り出した。
やっと落ち着き始めた心臓がまた早鐘を打つ。
まるで時を刻む時計の様に。
◆◇あとがき◇◆
こんにちはor初めまして!雷武です。
久しぶりに「奇奇怪怪」の方をupしました!覚えていて下さっている方がいたら幸いですwwもし読んだ事の無い方は良かったら1から読んでみて下さると有難いです☆
これからの更新ですが、しばらくは「奇奇怪怪」の方を更新していくかもです。
それではここまで読んで下さって有難う御座いましたー♪
■□ 余談 □■
感想、アドバイス、誤字脱字などがあいましたらコメントして下さると有難いです。
路地裏に住まうは鼠。
路地裏に集まるは黒き青年。
路地裏に捨てられるは容易く処分出来ぬごみたち。
路地裏を作り上げているビルの壁は薄汚れ、窓のふちにはくもの巣が張り、地面からは今にも茶色い生物が湧き出てきそうな…そんな路地裏に僕-大津良太郎はいた。
嘘だ。
そんな場所に僕はいない。
路地裏にはいるが、前述の様な路地裏にはいない。
そんな汚らしい場所は路地裏じゃない。
ただのごみの吹き溜まりだ。
けれど今僕がいる場所だって決して気分の良い場所とは言えない。
路地裏はどう突き詰めたところで路地裏に変わりは無い。
僕はこの場所が嫌いだ。
しかも自分から入ったのではなく、半強制的に連れ込まれたとなればなおさらだ。
「ここら辺でいいか…」
純白のスーツに身を包んだ男-僕をこの路地裏に連れ込んだ張本人はそこでやっと足を止めた。
さっきは焦りすぎててこのまま付いてきちゃったけど…さて、ここからどうしよう。
今まで僕に背を向けていた男が振り返る。
こいつ…なんかやばそうだもんなぁ…。早いとこ逃げた方が得策かもしれないな。
男は例のやたらと目つきの悪い瞳で僕を見つめている。
…いや。睨んでるのかも。
「なぁ、おい」
不意に男は口を開いた。
反射的に僕は鞄を握っていた手に力を入れる。
「…そんなに身構えんなよ。何もしやしねぇよ」
それが大勢の人の前で子供の胸倉を掴む奴の台詞か?
そうは思ったが、絶対に口には出さない。
それこそ口に出したら自分の寿命を縮めるだけにしかならない。
「俺はただお前に質問したいだけだ」
そう。それ。
さっきから僕はそれが気になっていた。
正直ここまでこの男におとなしく付いていったのも、それが理由だったりする。
「その、質問。さっきからずっと言ってますけど一体何なんですか?」
「ああ、たぶん。お前にとっちゃ簡単な質問だ」
男は自分の言葉に軽く頷く動作をした後に、ひどくゆっくりとした調子で喋りだした。
「今は一体世紀なんだ?そしてここは何処の国だ?」
「…はぁ?」
思わず拍子抜けした声が喉からもれる。
そんな質問をされるとは思ってもみなかった。
いや、こんな質問をされるなど超能力者でもない限り絶対に予想出来はしないだろう。
「…21世紀の日本です」
自分でもなんて間抜けな会話をしているんだろうと思う。
ってかこの男、こんなことを聞くためだけに僕を襲撃(未遂)したのか!?
「はぁ~ん。21世紀…。日本ね。なるほど」
男は妙に納得したように何度も頷きながら独り言を呟いていた。
かなり変な人である。
「何でそんなこと聞くんですか?」
興味本位で聞いてみた。
実は私記憶喪失なのでーす、みたいな漫画的展開だったら面白いのに…なんちゃって。
「俺、記憶喪失なんだ」
この男、見事に僕の期待に応えてくれた。
しかも超的確に。
「えぇ…。本当ですか…?」
「マジだ」
真顔で答えられちゃいました。
さて、これからどうしたものか…。
「ほ、本当に記憶喪失だって言うんなら僕なんかに構う前に、病院に行った方が良いですよ」
「いや、お前に構えって言われた」
「どなたに?」
「神に」
この人記憶喪失のうえに頭がかなり電波っているらしい。
いや、記憶が吹っ飛んだのと一緒に頭の大事な部分に傷を負っているのかもしれない。
それじゃあなおさら病院に行くべきだ。
僕じゃとてもじゃないが手に負えない。
「神にお前に話しかけろと言われたんだ。こりゃ一種のお告げって奴だろ?普通はそのお告げにしたがうだろ?」
普通はお告げなんて聞こえねぇよ。
それにあれは話しかけれれたというか、かつあげされたと言った方が正しい。ほとんど。
「神に言われたくらいだ。お前、俺のことなんか知ってんだろ?」
「いえ、何も。全く微塵も存知あげません」
こんな人知っていたら一生忘れられない。
ってかそれよりそろそろ逃げた方が良いかもしれない…。
「本当になんも知れねぇのかよ…」
男はひどく落胆したように大きく溜息をつき、壁に体を預けた。
一瞬。
本当に一瞬、男は僕から注意を逸らした。
その一瞬だけで僕には十分すぎるほど、十分すぎた。
「っおい!」
男が声を上げた時には、僕はもう既に走り出していた。
限界にまで足を開き、走る。走る。
後ろから追いかけてくる様子はない。
いける。このままなら逃げ切れる。
そして-大通りにたどり着いた。
苦しい。息が切れた…。久しぶりに本気で走ったな。
暴れる心臓を押さえつけながらゆっくりと歩き出す。
はぁ…。散々な目に合った。
さて学校に…。あ、入学式。
慌てて腕時計を確認する。
時刻は11時10分前。
終了時刻まであと約20分。
ここから学校までは走って5分程度。
「…」
大きなため息をとりあえずついてからまた走り出した。
やっと落ち着き始めた心臓がまた早鐘を打つ。
まるで時を刻む時計の様に。
◆◇あとがき◇◆
こんにちはor初めまして!雷武です。
久しぶりに「奇奇怪怪」の方をupしました!覚えていて下さっている方がいたら幸いですwwもし読んだ事の無い方は良かったら1から読んでみて下さると有難いです☆
これからの更新ですが、しばらくは「奇奇怪怪」の方を更新していくかもです。
それではここまで読んで下さって有難う御座いましたー♪
■□ 余談 □■
感想、アドバイス、誤字脱字などがあいましたらコメントして下さると有難いです。