奇奇怪怪 ~出会い、矛盾、心、化~3
結局入学式には間に合わなかった。
畜生、あの野郎…。
入学式の終わった体育館からは、同じ制服を着た人々がぞろぞろと群れを作って歩いてくる。
クラスはもう確認し終えていたので、僕は悪態をつきながら、その人の波に身を任せた。
高校校舎の廊下は、どこに行っても人がごったがえしていた。
皆クラス変えで意気揚々としている。
どこへ行っても、声、声、声。
そんな光景に少しだけ、少しだけうんざりした。
だから僕はある程度波にもまれた後、右にそれる。
そして左に曲がる。
たどり着いた場所は、全く人気のない廊下。
天井に付いた蛍光灯は役目を果たしておらず、廊下は薄暗い。
さっきの場所とは比べ物にならないくらいの静けさ。
それはそうだろう。
今ここには僕一人しかいないのだから。
「相変わらずここは嫌われてるな」
僕は独り言を呟き、自分のクラスへと歩を進める。
この始まりと終わりの廊下から、僕は2年前の様に逃げ出した。
クラス内での顔合わせも無事終え、僕は帰路についていた。
そして考える。
朝会ったあの男のことについて。
本当にあの男はあんなふざけた質問をするためだけに僕に話しかけたのだろうか…?
いや、話しかけられたんじゃなくてかつあげされたんだったけ?
まぁ、そこら辺の細かいところはいいとして…。
それにしても何故僕なんだ?
あいつは神のお告げだのなんだのとふざけた事をぬかしていたけど…実際はどうなんだ?
案外僕じゃなくても良かったのかもしえない。
あいつのことだ。あり得なくはない、
いや、それよりも、それよりもだ。
あいつの目的は一体何だったんだ?
それが一番の謎だ。
一体何の為に僕を引き止めた?
何故路地裏に引き入れる必要があった?
…話がずれた。目的、目的。
あんな質問をするなんてのが本来の目的ではないことは分かる。
きっとあれは建前か何かで…。
ちょっと待てよ。
何故僕はそんなに確信的に本来の目的があの馬鹿げた質問じゃないと言い切れる?
常識的にありえないから?
常識なんてものはただの飾りだ。
育った環境によって常識なんて違う。
それを全ての人に当てはめようってのが無理な話だ。
じゃあ…。
いや、そもそもこんなこと考えて何になる。
冷静に考えてみれば、こんなものは本人にでも聞かない限り答えなど分かるはずもないじゃないか。
くっだらねぇ。
時間を無駄にしたなー。
もっと他のどうでもいいことでも考えていた方がましだった。
あーあ。そういや反悟(はんご)の奴クラスはどこだったんだろうなー。
なんて心底どうでも良い事を考えている内に、僕の家(といってもマンションだけれど)に辿り着いた。
自動ドアをくぐり抜け、郵便ポストを確認し、固く閉ざされた扉を暗証番号によって何事も無く開ける。
扉をくぐったすぐ目の前にあるエスカレータに乗り、三階のボタンを何事も無く押す。
作動音がして、エスカレータは目的地へと上る。上る。何事も無く。
何事も無く三階に到着し、扉が自動的に開く。
そこからしばらく歩き僕の部屋の前に辿り着く。勿論何事も無くだ。
何事も無くポケットから鍵を取り出し鍵穴へと差し、ひねる。
何事も無く扉を開いて部屋の中に入ると、何事も無く僕の部屋にあの金髪ヤクザ男がいた。
「よぉ」
とりあえず僕は驚いた。何事かあったので驚いた。
心臓が今にも飛び出そうなほどに驚いた。ただただ驚いた。
そりゃ誰だってそうなるはずだろう。
ついさっきまで思考を巡らせていた男がこうしてまた目の前に現れたのだから。
しかも自分の部屋の中で。
僕は今にも逃げ出しそうになる足を無理矢理引っ張り、彼の元へと向かった。
「何で…ここにいるんですか…」
たくさんの疑問はあったが、まずはこれから質問してみた。
「ここにいるからいるんだ」
こいつは曖昧な質問は受け付けないらしい。
「…何でここが分かったんですか」
「これ」
男は僕の目の前に一冊の小さな本の用なものを突きつけた。
「お前のだろ?」
「あ…生徒手帳…」
畜生、きっちり住所まで書くんじゃあなかった。
「よく…この場所が分かりましたね」
「人に聞いた」
人に聞いた。つまりは僕の様な目にあった人が最低でも一人はいるってことか。
御愁傷様です…。
「でも何で僕の部屋にまで上がってるんです?僕は貴方をここに招待した覚えはないんですけど」
「ああ、それがな。ここまで何とか辿り着いたんだけどよ、勝手が分からなくてうろちょろしてたんだよ。そしたら親切な女の人が話しかけてくれて、事情を説明したら中に入れてくれたんだ」
うん?親切な女の人?
「そこまではいいって言ったんだけど勢いが凄くてなー。そしたら直接持ち主に返してやってくれって言われてなー。で、こうなった」
「意味が皆目分かりません。何がどうなったらこうなるんですか」
「だからだなぁー俺がここの前をうろちょろしてたらぁー」
「いえ、説明はさっきので分かりました。もう二度としなくて結構です」
「そうか」
男はそう言った後、話をするのが面倒になったのか部屋の中を見回し始めた。
…にしても親切な女の人。
「あの、一ついいですか?」
「何だ?」
男は相変わらず部屋を物珍しそうに眺めながら答える。
「その優しい女の人とやらは、一人でしたか?」
「いや、二人だ」
「どんな格好をしていました?」
「格好…?あ~一人は金髪だったかな。腰までくらいの。で、もう一人は…シックな感じって言うのか?白と黒の服着てた」
「その二人は今どちらに?」
「なんかちょっと用事があるとかで隣の部屋に入っていった」
なるほど。納得いった。
いや、まぁ予想はしていたんだけどね。
大体こんなことするのあいつ等ぐらいしかいなし。
あんの腹黒ドSシスターズめぇ…。
「今回ばかりは許さねぇ…」
「あ?何か言ったか?」
「いえ、何もありません」
「そうか。んじゃ、落とし物も渡したし俺そろそろおいとまさせてもらうわ。じゃあな」
男は腰を上げると、軽く手を振った。
「あ、はい。わざわざすみませんでした」
僕は軽く頭を下げる。
「今度からは気をつけろよ」
「はい」
男はそのまま扉の向こうへと消えて行った。
後には何も残らない。
いつもと変わらぬ僕の部屋だ。
んー。なんというか意外と良い奴?
でも落とし物を拾ったら交番に届けようよ。
確かにあのなりじゃあちょっと怪しまれるかもしれないけどさぁ。
良い子は絶対に落とし物を拾ったら交番に届けましょう。
でもまぁ、どこかのお騒がせ女共よりはましか。
僕は制服の上着を脱ぎ捨て、ベッドの上に寝転がる。
今日は一日厄介なことばっかりだった。
こういう時は早く寝るに限る。
さっさと寝よう。
僕は一度起き上がり、鍵をきっちり厳重に閉め、服をパーカーに着替えて再びベッドへと戻る。
案の定すぐに眠気が襲ってきて、僕はそれに逆らわずに静かに瞼を閉じる。
そして何事も無く、眠りについた。
⁂あとがき⁂
こんにちはor初めまして!雷武です!!
今回今までより少しだけ長めでしたけれど、ここまで読んで下さった方、有難う御座いました!まだまだ続きます←
今回名前だけ、もしくはあだ名だけ出てきた人達は、またどこかで登場させるつもりでいます。お楽しみにww
それではまた来週☆
⁑余談⁑
感想、アドバイス、誤字脱字などありましたらコメントして下さると有難いです。
結局入学式には間に合わなかった。
畜生、あの野郎…。
入学式の終わった体育館からは、同じ制服を着た人々がぞろぞろと群れを作って歩いてくる。
クラスはもう確認し終えていたので、僕は悪態をつきながら、その人の波に身を任せた。
高校校舎の廊下は、どこに行っても人がごったがえしていた。
皆クラス変えで意気揚々としている。
どこへ行っても、声、声、声。
そんな光景に少しだけ、少しだけうんざりした。
だから僕はある程度波にもまれた後、右にそれる。
そして左に曲がる。
たどり着いた場所は、全く人気のない廊下。
天井に付いた蛍光灯は役目を果たしておらず、廊下は薄暗い。
さっきの場所とは比べ物にならないくらいの静けさ。
それはそうだろう。
今ここには僕一人しかいないのだから。
「相変わらずここは嫌われてるな」
僕は独り言を呟き、自分のクラスへと歩を進める。
この始まりと終わりの廊下から、僕は2年前の様に逃げ出した。
クラス内での顔合わせも無事終え、僕は帰路についていた。
そして考える。
朝会ったあの男のことについて。
本当にあの男はあんなふざけた質問をするためだけに僕に話しかけたのだろうか…?
いや、話しかけられたんじゃなくてかつあげされたんだったけ?
まぁ、そこら辺の細かいところはいいとして…。
それにしても何故僕なんだ?
あいつは神のお告げだのなんだのとふざけた事をぬかしていたけど…実際はどうなんだ?
案外僕じゃなくても良かったのかもしえない。
あいつのことだ。あり得なくはない、
いや、それよりも、それよりもだ。
あいつの目的は一体何だったんだ?
それが一番の謎だ。
一体何の為に僕を引き止めた?
何故路地裏に引き入れる必要があった?
…話がずれた。目的、目的。
あんな質問をするなんてのが本来の目的ではないことは分かる。
きっとあれは建前か何かで…。
ちょっと待てよ。
何故僕はそんなに確信的に本来の目的があの馬鹿げた質問じゃないと言い切れる?
常識的にありえないから?
常識なんてものはただの飾りだ。
育った環境によって常識なんて違う。
それを全ての人に当てはめようってのが無理な話だ。
じゃあ…。
いや、そもそもこんなこと考えて何になる。
冷静に考えてみれば、こんなものは本人にでも聞かない限り答えなど分かるはずもないじゃないか。
くっだらねぇ。
時間を無駄にしたなー。
もっと他のどうでもいいことでも考えていた方がましだった。
あーあ。そういや反悟(はんご)の奴クラスはどこだったんだろうなー。
なんて心底どうでも良い事を考えている内に、僕の家(といってもマンションだけれど)に辿り着いた。
自動ドアをくぐり抜け、郵便ポストを確認し、固く閉ざされた扉を暗証番号によって何事も無く開ける。
扉をくぐったすぐ目の前にあるエスカレータに乗り、三階のボタンを何事も無く押す。
作動音がして、エスカレータは目的地へと上る。上る。何事も無く。
何事も無く三階に到着し、扉が自動的に開く。
そこからしばらく歩き僕の部屋の前に辿り着く。勿論何事も無くだ。
何事も無くポケットから鍵を取り出し鍵穴へと差し、ひねる。
何事も無く扉を開いて部屋の中に入ると、何事も無く僕の部屋にあの金髪ヤクザ男がいた。
「よぉ」
とりあえず僕は驚いた。何事かあったので驚いた。
心臓が今にも飛び出そうなほどに驚いた。ただただ驚いた。
そりゃ誰だってそうなるはずだろう。
ついさっきまで思考を巡らせていた男がこうしてまた目の前に現れたのだから。
しかも自分の部屋の中で。
僕は今にも逃げ出しそうになる足を無理矢理引っ張り、彼の元へと向かった。
「何で…ここにいるんですか…」
たくさんの疑問はあったが、まずはこれから質問してみた。
「ここにいるからいるんだ」
こいつは曖昧な質問は受け付けないらしい。
「…何でここが分かったんですか」
「これ」
男は僕の目の前に一冊の小さな本の用なものを突きつけた。
「お前のだろ?」
「あ…生徒手帳…」
畜生、きっちり住所まで書くんじゃあなかった。
「よく…この場所が分かりましたね」
「人に聞いた」
人に聞いた。つまりは僕の様な目にあった人が最低でも一人はいるってことか。
御愁傷様です…。
「でも何で僕の部屋にまで上がってるんです?僕は貴方をここに招待した覚えはないんですけど」
「ああ、それがな。ここまで何とか辿り着いたんだけどよ、勝手が分からなくてうろちょろしてたんだよ。そしたら親切な女の人が話しかけてくれて、事情を説明したら中に入れてくれたんだ」
うん?親切な女の人?
「そこまではいいって言ったんだけど勢いが凄くてなー。そしたら直接持ち主に返してやってくれって言われてなー。で、こうなった」
「意味が皆目分かりません。何がどうなったらこうなるんですか」
「だからだなぁー俺がここの前をうろちょろしてたらぁー」
「いえ、説明はさっきので分かりました。もう二度としなくて結構です」
「そうか」
男はそう言った後、話をするのが面倒になったのか部屋の中を見回し始めた。
…にしても親切な女の人。
「あの、一ついいですか?」
「何だ?」
男は相変わらず部屋を物珍しそうに眺めながら答える。
「その優しい女の人とやらは、一人でしたか?」
「いや、二人だ」
「どんな格好をしていました?」
「格好…?あ~一人は金髪だったかな。腰までくらいの。で、もう一人は…シックな感じって言うのか?白と黒の服着てた」
「その二人は今どちらに?」
「なんかちょっと用事があるとかで隣の部屋に入っていった」
なるほど。納得いった。
いや、まぁ予想はしていたんだけどね。
大体こんなことするのあいつ等ぐらいしかいなし。
あんの腹黒ドSシスターズめぇ…。
「今回ばかりは許さねぇ…」
「あ?何か言ったか?」
「いえ、何もありません」
「そうか。んじゃ、落とし物も渡したし俺そろそろおいとまさせてもらうわ。じゃあな」
男は腰を上げると、軽く手を振った。
「あ、はい。わざわざすみませんでした」
僕は軽く頭を下げる。
「今度からは気をつけろよ」
「はい」
男はそのまま扉の向こうへと消えて行った。
後には何も残らない。
いつもと変わらぬ僕の部屋だ。
んー。なんというか意外と良い奴?
でも落とし物を拾ったら交番に届けようよ。
確かにあのなりじゃあちょっと怪しまれるかもしれないけどさぁ。
良い子は絶対に落とし物を拾ったら交番に届けましょう。
でもまぁ、どこかのお騒がせ女共よりはましか。
僕は制服の上着を脱ぎ捨て、ベッドの上に寝転がる。
今日は一日厄介なことばっかりだった。
こういう時は早く寝るに限る。
さっさと寝よう。
僕は一度起き上がり、鍵をきっちり厳重に閉め、服をパーカーに着替えて再びベッドへと戻る。
案の定すぐに眠気が襲ってきて、僕はそれに逆らわずに静かに瞼を閉じる。
そして何事も無く、眠りについた。
⁂あとがき⁂
こんにちはor初めまして!雷武です!!
今回今までより少しだけ長めでしたけれど、ここまで読んで下さった方、有難う御座いました!まだまだ続きます←
今回名前だけ、もしくはあだ名だけ出てきた人達は、またどこかで登場させるつもりでいます。お楽しみにww
それではまた来週☆
⁑余談⁑
感想、アドバイス、誤字脱字などありましたらコメントして下さると有難いです。