Y・HONKY TONK・B


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未完の言い訳

完成しなかった小説[悪魔の歌声は闇の彼方へ]
1992年の10月
今から16年前の事ですね
この頃はワープロで書いていましたっけ…FDに保存してたけどPCでは開けない…
携帯もまだ高い時代だったので、ポケベルがメインだしね

原稿用紙に直すと320ページに及び
尚且つ、物語は中盤に差し掛かってない…

暇を見つけて資料を整理し、現在の時代背景に合わせないと…

気が遠くなる…

更新しない言い訳だったりして

雨の週末11

俺は自分の言っている事が矛盾している事に気付いた

出来ればこのまま知らん顔を決めても良かった




だが聞く気になったのは昔の女を思い出した



そういう事にしておく



そうでなければ自分自身に納得が出来なかった



『アンタってホント、馬鹿なんだから』



昔の女が笑った気がした



『生まれは…何処だい?』



香織が話しやすいように差障りのない所から聞く事にする




『秋田です…両親は10年前に他界していますけど…』




『そうか、じゃあ君とお兄さんの2人かい?』




『ええ』




『お兄さんは独身?』




『5年前に離婚しています』




『子供は?』




『いいえ、いませんでした…それが原因で離婚に…』




どうも身の上相談は俺の趣味では無い



もういい



その台詞を呑む




香織に悟られまいとして2杯目のラムをグラスに注いだ



『男女、特に夫婦なんざ他人には解らない事が多いものだ』




『変わったんです』




『変わった?何が?』




『兄です…離婚してから何かに獲りつかれたように…』




『獲りつかれた…仕事か?』




氷を入れていないグラスを煽った



50.5度のラムは食道から胃に流れるのを感じた



裂かれた傷の痛みを少しでも忘れようとしたのか



甘い自分を忘れる為なのか



今となっては問題ではなかった

雨の週末10

『本当にアンタは馬鹿なんだから』



よく言われた台詞



『そんなの知らん顔してればいいのに』


『結局損するのはアンタじゃない』


とも言われた事を思い出した



性格はキツイ女だった


それでいて面倒見が良いのは私に似ていた



何故今になって思い出したかは判らない


もう思い出す事もないと思っていたのに



香織の横顔が遠い記憶を呼び戻したのかもしれない



数時間前にずぶ濡れで店に飛び込んできた




招かれざる客の名前




佐伯香織




それが彼女





失踪した兄を探している




その兄が持っている書類を中心に事が起きている



普通のサラリーマンだと言うがそうでもないらしい



彼は何かあったら俺の所へ行けと指示していた


それで店に来た



身長は160cmに3cm位足りない



肩まで下げた髪はストレートで黒い



白いワンピースはシンプルだが安物ではないだろう



黒いタイトスカートの後ろのセンターに短いスリットがある




恐らく実年齢より若く見える


童顔だか22歳~25歳だろう




『なあ・・・そろそろ話してもいい頃じゃないのかな?』



『・・・』



『君の兄貴の事を詳しく教えて欲しい』



『・・・』



『ココまで来たら後には引けないからな』



夜の窓越しに香織の俯く姿


その唇が少し動いた

雨の週末 9

『実は・・・まだ 話していない事があったんです・・・』



香織が切り出した



グラスの中の氷に 溶け出した液体がゆっくりと混じりあう





『・・・いや 話さなくてもいい』



『・・・でも・・・』



『・・・俺は話さなくてもいいと言った それでいい』


『・・・』



『君の兄貴が 俺の店に行けと言ったんだよな?』



『・・・』



『それで君が来て 変な連中がやって来た・・・』



『・・・』



『あいつらがマトモな連中じゃないのは確かだ・・・』



煙草に火を点けて話を続けた


『新たに連中が来るのを避けてここに来た・・そうだろ?』



『・・・はい・・・』



まだ 香織は何か言おうとした目をしている


『問題は君の兄貴が 何を持っているかだ・・・』




咥え煙草が 目に沁みてきた




雨の週末 8

バスタオルを両手で 抱えるように立ち尽くす香織の姿


そして 雨に濡れた髪



数時間前には 顔も知らなかった女


それが今 自分だけの安らぎの部屋に存在している



怯えた目が 悲しげに震えている



『・・・気にしないでくれ・・・独り言だ』


『私のせいで こんなに傷だらけになってしまって・・・』



『気にするなって 言っただろう』



グラスに残った 酒を飲み干し 新たに継ぎ足す


琥珀の液体が 氷を多い尽くす






雨の週末 7

エレベーターの扉が開く


私から出ると、香織も後から降りる




部屋のドアの隙間に張っておいた髪の毛はそのままだった


誰も入った形跡はない




鍵を挿し込んで廻す


乾いた音




『今暖房を入れるから』


『・・・』


香織は黙って玄関に入る



『1年に数回しか来ないからな・・・心配するな』


そういって2つのグラスにラムを注ぎ、1つを渡した




『・・・すいません』


微かに震えている理由



店での騒ぎ


男の部屋に来た事




そのどちらかだろう




ラムを一気に煽って、買ってきた中身をテーブルに出した


『悪いが俺はシャワーを使わせてもらう、適当に座ってていてくれ』


『・・はい』



熱めのシャワーで血痕を洗う


石鹸が傷に沁みる


あの男


腕はかなりのモノだ



激しい痛みも無く、確実に肉を裂いている


学生の頃の空手が役に立った


実生活で役に立つ事など無いと思っていた




持ち出した書類の行方


その中身


ヤクザが追う理由


当事者の行方




只事では無い


もっと大きな裏がある


漠然な事だが、当たっているだろう




政界絡みかも知れない


だとしたら、益々厄介だ


だが、今となっては後戻りは出来ない




どうする?


心で呟く



全く 甘ちゃんだぜ


もう一度呟いた




シャワーから出る


香織は窓際でグラスを持ったまま佇んでいた



窓ガラスに映った香織の顔


私が見た事の無い表情



『かなりの訳アリだな』


心で呟いたつもりだった



声に出していた


それを知ったのは、私の声で香織が振り向いたからだった










雨の週末 6



女を連れて店を出た


長居は立場を悪くする


恐らく仲間を引き連れて来るだろう




店を休んだ事は無かった


それも他人の巻き添えでだ




雨に打たれたフロントガラス


規則正しいワイパー


こんな夜もあるのかと思った




カーヴ


切られた腕と胸が痛む


忘れていた感覚が呼び戻された




血を流す喧嘩


もう若くは無い


無縁の事だと思っていた




『・・・なあ、名前・・聞いてなかったな』


『・・・あ・・・さ、佐伯・・・』


『上はあのチンピラから聞いた 下の名前は?』


『かおり・・かおりです』


『ふーん・・・どんな字だ?』


『芳香の香りに機織の織です』


『そうか・・香織・・・いい名前だ』




別に名前などどうでも良かった


助手席で微かに震えている香織に対し


哀れに思ったのだろう


我ながら甘ちゃんだな


そう心で呟く




男の話では香織の兄が書類を持ち出した


返して欲しければ金を払え


だから追っている




簡単に言うと たった3行の話


中身は知らぬ存ぜぬだった


力を入れた刃先は 薄く首に食い込み


細い線が入った




暫らくすると線から 小さな赤い玉がプツプツと浮かんだ


『本当に知らなねえ 上から言われて探してるだけだ』


人間 嘘をついている眼は判る


本当に知らないようだった




『本当に御免なさい・・・私のせいで・・・』


『気にするな・・と、言っても無理だろうがな』


『私・・・なんて言ったら・・・』


『いいさ 乗りかかった船だ』




全く 甘ちゃんだぜ


もう一度 心で呟いた



バックミラーには尾行の気配は無い


24時間のドラック・ストアで買い物を済ます


抗生物質の軟膏 包帯 ガーゼ 消毒液 脱脂綿


香織に頼んだ




マンションに帰るか迷ったが 葉山の別荘に決めた


あそこなら追ってにも わからない


死んだ親父が遺産で残した場所




店を始めてからは 年に1回程度だ


窓からの景色が気に入っていた


管理費も馬鹿にならなかったが 手元に残していた




女性を連れて来るのは初めてだ


誰にも教えていない


自分だけの場所


男にはそんな場所があってもいい


勝手な思い込み




駐車場に車を止めてから エレベーターに乗り込む


緊張している香織の顔が私の視界に入った













雨の週末 5

兄貴格の男の靴がにじり寄る




剃刀の様な眼をしている


暗めの店でもよくわかった



シャツが張り付く




突然、空気を切る音


ヒュッ



反射的に身体を逸らした


自分の腕を無意識に見る



白いシャツが口を開けている


切られた



男の薄い唇の口角が少し右に上がる


『良く避けられたな・・じゃあ、次はどうかな?』


『俺は運がイイのさ・・・』


『そうかい』


鋭利な刃に着いた血痕を舐めた



男との間合い


僅かな隙を見せれば切られる



男の靴がにじり寄る音


その瞬間、2度目が襲う


ヒュッ!


下がった時、椅子に背中が当った



ガタッ


体制が崩れた


シャッ!


僅かな痛みが胸に走る


浅い傷だろう


確認している余裕はもう無い




『チッ』


男の腕は確かだった


後から襲われたら、刺された事も判らずに倒れるだろう


このまま逃げていれば不利になる


ヒュッ!



次第に壁に追い詰められた


視覚に入って来たモノ


彼女の飲み残しのグラス


咄嗟に掴み、男の顔めがけ投げつけた



上体を逸らす


今だ


カウンターの椅子を鷲掴みにして、横からぶつけた


『グウッ』


声にならない音



床に金属音が響く


髪の毛を掴んで手前に引くように廻す


男の体勢が崩れる


すかさず腹に全体重を乗せる


『グッ』



脇腹を渾身の力で蹴り上げた


もう1度蹴る


更に蹴ってから椅子で腹に振り下ろした


先の事など考えてはいない


正当防衛だ


自分に言い聞かせる




背後で若い男の罵声


身体を低くして、肘で顔面を叩き付ける


『お前は引っ込んでろ、これはサシの勝負だ』


『・・・・・』


若い男の目に戦う意思は消えていた



落ちたナイフを拾い、男の傍にしゃがみ込む


『勝負あったかな?』


『・・・・・』


倒れこむ男の髪を掴み、首にナイフを当てた



『さてと、何でその佐伯って男を追いかけている?』


『・・知らん・・・』


『理由も無く追うのかい?』


『・・・ああ、知っててもお前には関係ない事だ』


『最初はな、だがもう無関係じゃない、そうだろ?』


首のナイフの力を強めた

雨の週末 4

普通のサラリーマン



傷だらけで帰宅



ありえない話




この娘には過去がある


それも言いたくない過去が




詮索は好きじゃない


面倒は避けてきた


それが私のスタイル



突然店のドアが開く


一目で普通じゃない




『よお、佐伯って野郎はいるかい?』


凄んでいる男は下品な感じがした




『いや、見れば解るだろう、俺とこの子しかいないね』



『隠し立てするとタダじゃ済まんぜ』



『じゃあ、探すんだな』



『・・・!・・・野郎!舐めやがって!』


カウンターの椅子を荒々しく床に倒す



『まだ店のローンが残っているんだ、壊さないでくれよ』




『兄さん、いい度胸だな』


そう言って下品な若い男を手で遮った




『なにも俺たちゃ、兄さんに迷惑を掛けるつもりはないのさ』


顔は笑っていたが、目が笑ってはいない



只のチンピラじゃない


修羅場を潜って来た


生死の境を見てきた男



こいつと争うのは辞めておけ


本能がそう言っていた



シャツの背中に嫌な汗が流れた








雨の週末 3



彼女から見せられた写真を眺め

3本目のタバコに火を点けた



よく昔の女に注意された


『今に肺癌になるから』


幸いにもまだ発病はしていない


至って健康な毎日を過ごしている

もっとも自分でそう思っているだけだが



『君の兄さんか・・・記憶に無いな』


『でも・・・兄は何かあったら・・・』


『ココへ行ってみろって?』


『・・・はい・・・』



棚の奥からバーボンを出す


自分用に買ってある


店の酒は飲まない


酒飲みが営業用の酒に手を出す



一番厄介なパターン


公私の見境が付かなくなり、結局店を畳む



そんな経営者を見てきた



【ブラントン・ゴールド】

度数は51.5とかなり強めな酒


最近はこれがお気に入りな1本


最初は強いアルコールを感じるが、変化するのが好きな理由だ




『飲むかい?』


黙って首を横に振る


大き目の氷に乗せる様に液体を注ぐ



旨い酒を飲む時はタバコは控えめにしていた


折角の香りが台無しになる



他人に吸われるのも嫌いだ


だから旨い酒は独りで飲む


そんな事の繰り返し


10年目を迎えていた




『・・・2週間くらい前、兄が傷だらけで帰って来たんです』


『・・・・』


『腕にはナイフで切られた痕も・・・』



彼女はカウンターを見たまま話していた


言葉には嘘はなさそうだ



『兄は私を巻き込みたくないから・・・』


『・・・で、いなくなった?』


『・・・はい・・・』


『君の兄さんは仕事は何を?』


『・・・別に・・・普通のサラリーマンです・・けど』


『会社員が傷だらけで帰宅かい?』


『・・・でも・・・本当に普通なんです・・・』

タオルが彼女の手の中で細くなった