ごはんいこー

突然きたLINE。
相手は友達以上恋人未満の和樹。

アオイには彼氏がいる。
それを知っていても定期的に
食事にいったり
連絡をとったりしている

浮気ではない

あらゆることを終えた
もうあの時の2人に戻ることはない
恋愛感情はない

仕事で忙しい日が続き、
気持ちも限界だったため
気分転換になる誘いはうれしかった

どんな関係性になっても
ちゃんとエスコートしてくれる
どストライクな店を用意してくれる
しかも毎回違う店
1年以上たった今でも同じ店に行くことがない

それなりに会う価値がある。

心も身体もクタクタだったアオイに
和樹が用意した店は
優しい光が溢れる
ウッド調のシンプルなお店。
しかもアオイの大好きな
オーガニック野菜のカフェだった…

ほらね。
そうやって心を掴むんだ。

店の扉をあけ、どうぞ と手を出しながら

こーゆー店、好きでしょ?

と自信たっぷりの和樹。

適当に何品かオーダーされ、
料理が運ばれてくるたびに
心が晴れていく

取り分ける前に
写真とった?
とインスタのことまで配慮。笑
最後のコーヒーも、もちろんオーガニック
心のそこまで温まった。

店を出てのんびり駅まで歩く
小道に入った瞬間
一歩前を歩いていた和樹の足が止まる

…?

くるっと振り向くと同時に
和樹の匂いに身体中が包まれた

なにも言わずに
ただ、静かに
抱きしめられた

………。

拒むこともなく
むしろ
すぅっと、吸い付くような感覚に
体を預けてしまった
なんて落ち着くのだろう…

優しく背中を撫でながら

”まぢで疲れた顔してる。”

と一言。
ほっとして、思わず涙が出そうになり
慌てて背中に回した手を放し
和樹から離れようとすると
腕をひかれ、
さらに強く抱きしめられる

いいから。

と、頭を撫でられる。
ストレスが、不安が、
心のモヤモヤが、抜けていく…
ぎゅっとしがみつくと
回された腕が痛いくらいに締まり

あまり無理すんなよ

と耳元で囁かれた。

ありがとうが精一杯。
離れると顔を覗き込み

充電できた?
と、ニヤっとする。
そうやって重い空気にならないようにするのも
彼の良さのひとつ。
何事もなかったかのように
どうでもいい話をしながら改札まで歩く。

気をつけて帰るんだよ
と、いつものように背中をポンポンと
軽く叩いて去っていった…

彼氏とは少し違う
言葉で言い表せない安心感がある
心が軽くなった

だから離れられない。
必要な存在………






寝る前のちょっとした時間
人肌が恋しくなったり
誰かと無性に話したくなったりする

彼氏はきっと寝ている時間

仲のいい女友達か
妹と少し話そうか
けどこの時間かぁ…

そう思いながらも携帯を手にする

〜♪

まるで私の心を読んだかのように
ベストタイミングで電話が鳴る

和樹。

友達以上恋人未満
もはや、家族や兄弟、親友のレベル感だ。

「おつー。」

軽いテンション。
何か用があった訳でもない。
仕事がどーとか、
お昼のラーメン屋さんがどーとか。
たわいもない話

けど、さっきまでの心の寂しさが
どんどん埋まっていくのを感じる。

30分ほど話したところで
心地よい眠気が襲ってきた私は
電話を切った

今夜はきっと
よく寝られるだろう…
友達以上恋人未満の和樹に連れられ
ずっと行ってみたかった
和樹の行きつけのイタリアンへ行くことに。
今日だけはウキウキが止まらない。
心の中で、彼氏に謝る。
食事だけだから……

駅から少し歩いた小道の中
お店は小さくてアットホームで
優しい雰囲気
男性2人の友人同士で始めたお店らしい。
店内少し奥まったところのカウンター席に
Reserved”の札が立っていた

キャンドルに灯された薄暗い店内
トマトにチーズに…
いい香りが食欲を掻き立てる

席に通されるなり和樹は
ご主人に
”女の子連れてくるなんて珍しいな。
今日は良いもの出さないとな。”
なんて言われてる。

ドリンクだけ頼むと
パタンとメニューを閉じ
「てきとーに。」
とカウンターの中のシェフに一言。

肩を並べて座るのは久々
テーブルを挟まないから距離が近い…
いつもより
和樹の匂いと
温かさが
強い。

運ばれてくる料理はどれも
見た目も味も最高で
笑顔にならないわけがない

ん〜〜〜〜♡おいしい!

絶賛するアオイを
アゴに手を添え、
満足気な顔をした和樹が見つめていた。

いつものように
たわいもない話をする。
おいしい食事にワインも進む。

ほどよくお酒の入ったカラダで
気を使わない空気感と
イタリアン料理の隙間から漂う
和樹の匂いが
さらに酔いを誘う…

食後のコーヒーとともに出てきたのは
2人で一つのデザート盛り合わせだった

色々食べたいでしょ?

とご主人の粋な計らい。
2人でスプーンをつつく。
こんな小さなことでも、
居心地がいい…

ゆっくりコーヒーを飲んでいると
ふと、背中が温かくなった

和樹の手…

じわーっと広がる温かさと
締め付けられる胸の痛み

和樹の手から放たれる魔法は
今もアオイに十分効き目がある。
少し前だったらきっと手を繋いできた。
彼氏がいる今、和樹は背中に手を当てることを
選んだようだ。
ただ、添えられた手
それでも触れられたところから
一気に体温があがる

和樹を見ると目があった。
アオイが避ける気のないことに気づいたのか
ゆっくり数回さすって手を離した…

一瞬で冷める背中の熱

ほんの少し
魔法に触れた瞬間だった

お手洗いから戻ると
当たり前のようにお会計が終わっていて

行こっか

と席をたつ。
駅までの帰り道
少しだけ遠回りをして
のんびりと歩く。
別れを惜しむように。

何をするでもなく
触れそうで触れない肩を並べて歩く
一歩後ろが私のポジション。

改札前で

気をつけて。

といいながら背中を優しくポンポンとたたく
ほらね、またじわ〜と温かさが広がる。

また満たされる…
いつまでも離れなれない。