【登場人物紹介】
AYA…大学2年女子。塾のアルバイト講師。私のこと。
綿谷…30歳の独身男性。塾の校長。
島本…20代後半の独身女性。塾の副校長。綿谷との噂あり。
星野…大学4年生男子。塾のアルバイト講師。

「星野先生、何言ってるの?」
島本先生に対し、星野先生は食いつきます。
「だって、よく二人きりで飲んでるじゃないですか」
「そりゃ、仕事の話とかあるのよ。社員は何かと仕事あるんだから」
「島本先生は、仕事の話で腕を組んで歩くんすか?」
私の胸がチリチリと痛みました。
「あー、見られてたのか。先月ぐらいだっけ? あのときはちょっと酔っ払っちゃってさぁ」
島本先生に、普段と変わった様子はありませんでした。
しかし、その島本先生の態度こそが、オモテにできない何かがあることを物語っているように思えました。
星野先生は、なおも切り込みました。
「二人きりで、歩けなくなるぐらい酔うほど飲んだんすね」
島本先生は、アハハと笑いながら返しました。
「もー、星野先生、傷ついた乙女をそんなにいじめないでよね」
そして、また後でねと言い残し、島本先生は席を立ちました。
(…傷ついた乙女?)
島本先生の最後の言葉が引っかかりました。
すると、星野先生が私の耳元に顔を寄せて、小声で話し始めました。
「AYA先生、よかったね。あの二人、別れたかもよ?」
「え?」
「なんか最近、そんな気がしてたんだよな。AYA先生、頑張りなよ!」
私は、自分が耳まで赤くなるのがわかりました。
「ど、どういうことですか?」
すると、星野先生は笑いながら、小声で言いました。
「AYA先生はわかりやすすぎるんだよな。綿谷先生のことは、俺たちみんなわかってるし。だから誰もAYA先生に告らなかったんだからさぁ」
そのときの私には、動揺を押し殺して星野先生に愛想笑いを返すことしかできませんでした。
…続きます
- 前ページ
- 次ページ
【登場人物紹介】
AYA…大学2年女子。塾のアルバイト講師。私のこと。
綿谷…30歳の独身男性。塾の校長。
島本…20代後半の独身女性。塾の副校長。綿谷との噂あり。
星野…大学4年生男子。塾のアルバイト講師。

手を振っている綿谷先生に対して、私は少しはにかんで軽く頭を下げました。
そして私は、すぐに講師のみんなの方に顔を戻しました。
綿谷先生はどうしただろう。
まだ私の方を見ているのかな。
そんなことを頭の片隅で考えながらも、私は星野先生の隣で出てきた料理をつまみました。
星野先生は相変わらず豪快に笑い、みんなを笑わせ、私にも話しかけてきます。
そして私のことを大げさに褒めちぎってくれました。
これまで誰とも仲良くすることのなかった私を、星野先生は講師のみんなに溶け込ませようとしてくれているみたいでした。
このアルバイトで初めて、私は楽しい時間を過ごしている感覚になっていました。
するとそこに、副校長の島本先生がやってきました。
「AYA先生、飲んでる? いきなりバイトリーダーとかお願いしちゃってごめんね! 困ったことがあったら星野先生に聞けば教えてもらえるから大丈夫よ。ね、星野先生!」
星野先生は「何でも聞いてよ!」と胸を張りました。
すると、少しお酒が入った星野先生は、さらに大きな声で島本先生に尋ねました。
「島本先生! そういえば綿谷校長とはどうなんすか? 付き合ってるんすか?」
島本先生の目がほんの少し揺らぎました。
…続きます
こんなのも書いてます。よかったら見てくださいね。
【登場人物紹介】
AYA…大学2年女子。塾のアルバイト講師。私のこと。
綿谷…30歳の独身男性。塾の校長。
島本…20代後半の独身女性。塾の副校長。綿谷との噂あり。
星野…大学4年生男子。塾のアルバイト講師。

居酒屋では、星野先生は当たり前のように私の隣に座ってきました。
そして運ばれてくる料理やお酒を、手際よくみんなに割り振っていました。
星野先生は、周囲の講師達とよく話し、豪快に笑いました。
そして時々、私の方を向いて、「AYA先生は?」と話を振ってきました。
私は愛想笑いを浮かべながら、星野先生に答えていました。
そこに、島本先生がビールを片手にやってきました。
島本先生は、私と星野先生の後ろに立って大声を張り上げました。
「みんな、聞いてー! AYA先生がバイトリーダーを引き受けてくれました! 星野先生とAYA先生の2人体制になります! これからは、生徒さんの成績管理については、星野先生じゃなくてAYA先生に言ってくださいね!」
お酒のせいもあったのでしょう。
講師のみんなの絶叫のような「ハーーーイッ!」という返事が返ってきました。
引っ込み思案だった私でしたが、少しだけ自信が持てたような気がしました。
私は顔を上げて、楽しそうにお酒を飲んでいる講師のみんなを見渡しました。
一番奥の席にいた校長の綿谷先生が、いつもの穏やかな笑みをたたえて、私に向かって小さく手を振っていました。
…続きます
私が書きました。よろしければご覧ください。
【登場人物紹介】
AYA…大学2年女子。塾のアルバイト講師。私のこと。
綿谷…30歳の独身男性。塾の校長。
島本…20代後半の独身女性。塾の副校長。綿谷との噂あり。
星野…大学4年生男子。塾のアルバイト講師。

研修をしている校舎の出入り口付近で、島本先生が本部の先生と立ち話をしていました。
島本先生は私の姿を見かけると、本部の先生に一言話してから私の方に振り返りました。
「どうだった?」
私は、講師全員がそのまま懇親会も参加できると島本先生に伝えました。
島本先生はニコニコしながら言いました。
「それもなんだけど、アルバイトリーダーは?」
(あ…)
懇親会の出血で頭がいっぱいになっていた私は、とっさにとんでもないことを口走ってしまいました。
「一人じゃなくて誰かと一緒なら、やってみてもいいかなって思います」
「誰かと一緒って?」
「…星野先生とか…」
私がそう言うと、島本先生の口元が緩みました。
そして島本先生は言いました。
「星野先生は、前からアルバイトリーダーなのよ。じゃあ、二人でお願いね! AYA先生、ありがとう!」
そう言うと島本先生は、本部の先生に向き直って立ち話に戻りました。
私は、研修をしていた教室に戻りました。
懇親会の会場である居酒屋への移動を待つ講師達の中、笑顔で雑談している星野先生は、ひときわ大きく見えました。
…続きます
私の対談記事です。よろしければご覧ください。
【登場人物紹介】
AYA…大学2年女子。塾のアルバイト講師。私のこと。
綿谷…30歳の独身男性。塾の校長。
島本…20代後半の独身女性。塾の副校長。綿谷との噂あり。
星野…大学4年生男子。塾のアルバイト講師。
すると一人の男性講師が、呆然と立ち尽くしている私に話しかけてきました。
「AYA先生、手伝うよ?」
彼は星野先生。
私より2学年上の学生アルバイト講師です。
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
私がそう答えると、星野先生は笑いながら言いました。
「全然大丈夫そうじゃねーけど?」
星野先生は私の前までやってきて小声で言いました。
「島本先生、無茶振りだよなー」
そして星野先生は講師全員に向き直り、大きな声を張り上げました。
「今日の懇親会を欠席する人はいないよな! 全員参加決定! はい、終わり!」
星野先生はそう言うと、私に目配せをしました。
私は小さく頷き、副校長の島本先生のもと向かいました。
思わず小走りになったのは、ほんの少しだけ心が軽くなっていたからかもしれません。
…続きます
私の対談記事です。よろしければご覧ください。
【登場人物紹介】
AYA…大学2年女子。塾のアルバイト講師。私のこと。
綿谷…30歳の独身男性。塾の校長。
島本…20代後半の独身女性。塾の副校長。綿谷との噂あり。
講師研修会場の隅っこで、私がひとりでお弁当を食べていると、副校長の島本先生がやってきました。
「AYA先生、ひとり? 一緒に食べようよ!」
私の返事を待たずに、島本先生は私の隣に座り、お弁当を開けました。
そして、一方的に話し出しました。
「AYA先生、出欠取ってくれてありがとうね! 欠席者は、急に来られなくなった1人だけだったよ! 本当に助かりました!」
私は戸惑いました。
私がしたことは、出欠表を講師室に貼っただけです。
一人も欠席の×印を出欠表に書いていなかったので、ちゃんと見られてないかもしれないと不安だったぐらいなのに。
私が島本先生にそう伝えると、彼女はニコッと笑いながら言いました。
「欠席だと×印を書いてくださいってのがよかったかもね! 何も書いていない紙に×印って書きづらいもんね! AYA先生、かしこい!」
私は動揺して口籠もりました。
島本先生は続けます。
「でねAYA先生、講義だけじゃなくて、アルバイトリーダーやってみない? 先生の間で1番人気のAYA先生だからお願いしたいんだけどな」
完全にお世辞だということはわかっていましたが、私の顔は真っ赤になりました。
「それにね、AYA先生にリーダーやってもらいたいって、校長がうるさいんだよね」
(え…? 綿谷先生が…?)
私は副校長の女性に、夕方まで考えさせてほしいと返事しました。
午後の研修中、私は心ここにあらずでした。
(綿谷先生が、私をアルバイトリーダーにしたいと言っているけど、なぜ? 島本先生は、綿谷先生と付き合っているらいしけど、本当は?)
午後の研修はあっという間に終わりました。
続いて、駅前の居酒屋に移動して懇親会のはずです。
私は、懇親会に行っても居場所がないと思い、帰り支度を始めました。
すると、島本先生が私の隣にやってきて、講師達に向かって大きな声を出しました。
「これから懇親会でーす! 懇親会に出られない人は、AYA先生に伝えてくださーい!」
(え?)
島本先生は、戸惑う私のお尻をポンと叩き、そのまま何も言わずに行ってしまいました。
30人近い講師達と向かい合った私。
数秒間の沈黙が流れました。
…続きます
私の対談記事です。よろしければご覧ください。
【登場人物紹介】
AYA…大学2年女子。塾のアルバイト講師。私のこと。
綿谷…30歳の独身男性。塾の校長。
島本…20代後半の独身女性。塾の副校長。綿谷との噂あり。
私は、私が島本先生に手渡した出席者一覧表のとおりに全ての講師が出席するのか気掛かりでした。
(欠席者が多かったらどうしよう。今からでも、講師達に出欠確認をし直した方がいいんじゃなのかな。というか、このまま塾でのアルバイトを辞めてしまいたいな)
このように追い詰められた心境のまま、講師研修当日を迎えました。
講師研修開始時刻である午前10時ぎりぎりに研修会場に着いた私。
驚きのあまり、会場入口で立ち尽くしてしまいました。
30人以上の講師達が、すでに着席していたのです。
欠席者はほとんどいなかったと思います。
すると、私の背後から、聞き覚えのある優しい声が聞こえました。
「おはよう、AYA先生」
不意をつかれた私は、彼、綿谷先生に向き直り、勢いよく「おはようございます!」と頭を下げました。
そんな私の慌てようを見ていた講師達がどっと笑いました。
私は恥ずかしさのあまり、最前列の端に着席し、火照った顔が冷めるのを待ち続けました。
午前中の研修が終わり、お昼休憩になりました。
出席者全員にお弁当が配られました。
いつも孤立していた私は、研修会場の隅っこで、ひとりお弁当を食べ始めました。
するとそこに…
…続きます
私の対談記事です。よろしければご覧ください。
【登場人物紹介】
AYA…大学2年女子。塾のアルバイト講師。私のこと。
綿谷…30歳の独身男性。塾の校長。
島本…20代後半の独身女性。塾の副校長。綿谷との噂あり。
副校長の島本先生が講師室にやってきたのは、その日の最後の授業が終わってしばらくたってからでした。
私を含めたほとんどの講師は帰り支度をしていました。
島本先生は、講師研修が2週間後の土曜日にあることと、できる限りすべてのアルバイト講師に出席してほしいということを私達に告げました。
そして、講師研修終了後には、懇親会を開きたいとも言っていました。
もうこのアルバイトを辞めることを考えていた私にとっては、講師研修も懇親会もどうでもいい話でした。
もちろん、出席する気持ちなどサラサラありません。
(私がこうなったのは、あなたのせいだよ…)
しかし島本先生は、出席者の確認役として私を指名したのです。
「えっ?…えっ?」と戸惑っている私を尻目に、島本先生はどんどん話を進めていってしまいました。
結局、私は島本先生から講師一覧表を手渡され、講師研修と懇親会の出欠を取らざるを得なくなりました。
私は他のアルバイト講師とはほとんど交流がなく、講師室ではいつもひとりだったにも関わらずです。
このようなこともあり、私はいよいよアルバイトを早くやめたいと思うようになりました。
とりあえず私は、講師の一覧表に「欠席の場合は☓印を入れてください。○月○日までにお願いします」という文字を書き入れ、講師室の壁に貼っておきました。
数日経過しても、☓印は1つも付きませんでした。
(もしかしたら、この掲示に気がついていない人がいるのかもしれない)
私は少しだけ不安になりましたが、島本先生から言われたことはしたはずだと自分を納得させて、そのままにしていました。
数日後、私はアルバイト講師全員が出席するという講師一覧表を、島本先生に手渡しました。
島本先生は、「みんな来てくれるんだ!AYA先生、ありがとう!」と満面の笑みを私に向けてきました。
私は「いえ…」と小さく唇を動かし、すぐにその場を後にしました。
しかしここから、事態は急展開を迎えるのです。
…続きます
私の対談記事です。よろしければご覧ください。
【登場人物紹介】
AYA…大学2年女子。塾のアルバイト講師。私のこと。
綿谷…30歳の独身男性。塾の校長。
島本…20代後半の独身女性。塾の副校長。綿谷との噂あり。
9月になりましたが、綿谷先生の「埋め合わせ」はまだありませんでした。
自分から求めることのできない私は、モヤモヤしたままでした。
そんなとき、塾の講師室で講師同士がある話をしていました。
この校舎には、校長の綿谷先生のほかに、島本先生という女性の副校長がいましたが、その二人が付き合っているらしいと。
夜遅くに、駅前の居酒屋前で腕を組んでいたそうです。
私の心臓は早鐘のように打ちました。
想像したくもないのに、その二人のイメージが頭から離れません。
私の初恋は片思いで終わってしまった。
そう思うと、この塾で働き続ける気力がなくなっていきました。
区切りがいい時期になったら、この塾でのアルバイトはやめてしまおう。
生徒のことや塾のことを考える余裕が、その時の私にはありませんでした。
この日以降、私は塾から距離を置くようになりました。
授業のない日に予習に行くことも、授業開始よりもはるかに早く出勤することも、授業後に遅くまで残ることもなくなりました。
出勤時に綿谷先生から「おはよう!」と声をかけられても、曖昧な返事しかできなくなってしまいました。
そんなある日、副校長であるあの島本先生が、私に声をかけてきたのです。
…続きます
私の対談記事です。よろしければご覧ください。
私の頭の中には、彼の「今度埋め合わせさせてね」という言葉と、その時の綿谷先生の優しい笑みが浮かんでは消えていました。
私は帰り道のコンビニで、いつも読んでいたnon-noではなくRayを買いました。
(人はこうやってオトナになるんだね)
まるで他人事のように、私はわたし自身を眺めていました。
ところが、私の淡い思いを打ち砕くような出来事が、その翌月に訪れるのです。
…続きます
私の対談記事です。よろしければご覧ください。








