【書評】ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

【書評】ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記

街中で見かけるドトールコーヒーの店構え。

知らない人はいないのではないかというくらいに様々な街に根を下ろし、多くの人々に安らぎの時間と美味しいコーヒーを与えてくれる。


そんなドトールコーヒーを作り上げてきた創業者鳥羽博道さんによる起業物語。

ドトールコーヒーの第一号店の開店は1980年のことだというから、実に本書文庫化より28年前(もともとの単行本からは19年前)。

現在、主流となっているセルフサービス方式を日本に広めた先駆者として、今尚ナンバーワンの座に君臨している。


個人的には、最近は実はドトールコーヒーに行く機会は減ってしまった。

様々な原因があるけれど、大きいのは自分自身の禁煙。

それまでは、スターバックスコーヒーなどの外資系では完全禁煙としている店が多かったために、愛煙家だった僕はドトールコーヒー愛用者だったのだが。



今回、本書を読んで初めてドトールコーヒーに込められた鳥羽さんの想い/志を知った。

ひとりでも多くの人に、経済的な負担なくおいしいコーヒーの魅力を伝えたかった(p.6)

一杯のコーヒーを通じて安らぎと活力を提供することこそが喫茶業の使命だ(p.61)

これは、現在までドトールコーヒーの経営理念として変わらずに掲げられている精神だ。


特に鳥羽さんは「喫茶業の使命」=経営理念/志について、何度も本書の中で繰り返し、またその大切さについて述べられている。

後発組は撤退を余儀なくされ、ドトールコーヒーはその牙城を守ることができた。その理由は一体どこにあるのだろうか。

それは一言で言えば、企業哲学の違いに尽きる。

(中略)

ただ単に形式だけを真似てやったものは感動、共感、共鳴を呼び起こすことなどできない。そこに魂が入っているのかどうか。経営理念があるのかどうか。さらには、店舗、商品など、お客様に提供するすべてのものがそうした企業理念に裏打ちされたものであるのかどうかということだと思う。(p.113)


鳥羽さん自身、順風満帆できたわけではなく、様々な苦労を重ねてこられている。

ドトールコーヒーを開業されてからは28年(文庫化当時)であるが、創業からは46年(文庫化当時)なのである。

こうした熱い信念を持ってこられた方だからこそ、46期連続増収という結果を残す礎を築くことができたのであろう。



鳥羽さんの座右の銘の一つが紹介されているので引用しておきたい。

家康の、「願いが正しければ、時至れば必ず成就する」というこの言葉は私の座右の銘のひとつになっている。正しい願い、ポリシーというものは時機が来れば必ず成就する。その努力と忍耐は必ず報われるものだと思う。今の若い人たちは結果、成果、評価がすぐ出ないものにはのめり込めない傾向があるように思う。

(中略)

だが、何かを成し遂げたいと思うのであれば、忍耐はどうしても必要なものとなってくる。その際に大切なのは「時」を待つ姿勢だ。ただ単に待ちつづけるという受け身の姿勢では商機を見逃すことになりかねない。かといって「時」をつくろうつくろうとすると焦りにつながる。要は、積極的につくり、待つという姿勢だと思う。(p.94-p.95)


このように、今後を担う現役ビジネスパーソンに向けた熱いメッセージもいただいた。

宣伝文句に偽りなしの、熱い「志」に触れることで、元気と勇気を与えてくれる本であった。


起業家、経営者の方々にお薦めしたい一冊。

また、これからの時代を生き抜くお手本の一人として、鳥羽さんの生き方を学ぶことは、若いビジネスパーソンにとっては有益なことではないかと思う。


本書を読んで、またドトールコーヒーに行ってみようと思った。



【関連リンク】

株式会社ドトールコーヒー


【基礎データ】

著者: 鳥羽博道

出版社: 日本経済新聞出版社(日経ビジネス人文庫) 2008年9月

ページ数: 233頁

紹介文:

明るい店内と驚きの価格で喫茶店のイメージを激変させ、日本最大のコーヒーチェーンとなった「ドトールコーヒー」。16歳で飛び込んだ喫茶業界で、度重なる危機を克服しながら、夢を叶えてきた創業者・鳥羽博道の“150円コーヒーに賭けた人生”とは。若者やビジネス人に元気と勇気を与える起業物語。


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