クローズアップ現代 「子どもに会えない父親たち」要約
今子どもと離れて暮らす父親が引きおこす事件が相次いでいる。
1年間で30件以上の子ども連れ去り事件が起こっている。
増え続ける離婚件数。年間23万件の離婚件数、2分に1件が離婚していることになる。
別れた親子の関係をどうしていくのかが、大きな課題となっている。
◆仕事よりも家庭を大切にする父親の増加
ストーカーになりかねないという父親たちがいる。
父親と別れたあと、子どもたちの心にも課題があることが分かってきた。
昨年親が子供を連れさった事件は31件。倍増している。
父親が一緒に暮らしたいという動機で子をつれさる事件だ。
背景には、父親の意識の変化がある。
男親が育児に参画するようになってきた。
日本の制度ではどちらか一方にしか親権が与えられない。
その結果8割が母親が親権をもっている。
また、母親が父親を「怖い」という理由で子どもに会わせたくないという事情がある。
夫婦の離婚と親子関係、子どもたちの幸せをどう考えるとよいのか。
◆父親の心理状態
九州、こどもに会えない父親たちのグループ。
毎月1度会って話し合っている。参加者のほとんどは父親だ。
・グループの男性の声
1週間で6,7キロ痩せた。
子どもに近づくこともできない。
あわせてくれということもできない。
気が狂いそうだ。
・30代の男性のケース
まだベビーカーもおいたままの玄関。
小学校と保育園に通う2人の子どもを育ててきた。
余暇のほとんどを育児にあててきた。
子どもにも頑固なところがあって、この子は俺の子なんだな、って思う。
とても可愛いです。
ある日、夜遅く仕事から帰ると、妻と子どもたちの姿がなくなっていた。
実家に帰った妻から離婚が切り出された。
思い当たることはあった。
妻を無視したり、子どもの前でけんかをすることが重なっていた。
下の子が一生懸命手をあげてやめてほしいと言っていた。
妻は僕といるときは苦しかったと思う。
離婚を切り出された男性は我を忘れ、妻の実家に駆け付けた。
しかし、「恨む」とか「なんでだ」とか妻を責めてしまった。
「ごめん」なんて言葉は出てこなくて、「なんでだ」って言っていた。
再び妻の実家に行った。しかし、妻の両親が間にたち、妻や子どもに会うこともできなかった。
わが子に会いたい、と思い、がむしゃらに会いに行った。
4か月後、下の子の誕生日を祝いたいと再び会いに行くと連絡をしたところ
妻から、「二度とこないでくれ」と言われた。冷静になれっていってもむりだと思った。
今思えば、ストーカーになりかけていた。
自分の行動がおかしいと気付かされたのは実の母親からの一言だった。
あなたのことを元妻や子どもたちは「怖い」「恐ろしい」と思っているかもしれない、と言われたのだ。
男性は子どもたちにクリスマスプレゼントを買った。今はまだ元妻に連絡せずに送ることも思いとどまった。男性は、いつか妻と子どもたちに会える日を待ち続けている。
コメント
・棚村正行氏 早稲田大学教授
昔は男女の性別役割分業がはっきりしていたが、最近は共稼ぎが多くなり、父親も家事育児に関わるようになってきた。父親は子どもや妻を窓口にしてコミュニティとつながっていることが多いので、お母さんと仲が悪くなると、父親は孤立化しやすい。
また、父親は、言葉や態度でお母さんを追い詰めていることに気が付いていないことも要因。
◆別居や離婚の際のルール決めと実施
今は離婚の際、離婚届には面会交流に関する取り決めが明記されている。
面会交流とは、子どもと暮らしていない親が定期的に子どもと会うことを認めているルールのことだ。
当事者同士の話し合いがうまくいかないと、家庭裁判所で決める調停や審判があり、その際は子どもとの面会についても裁判官が決定する。
3分の1くらいの人たちは自分たちで決めているが、6,7割は審判で裁判官により決定される。しかし、決まっても、その取り決めを守れない、実現できないというのが現状だ。
◆子どもに精神面でどんな影響を及ぼすのか
・40代の女性のケース
小学校に通うこどもがいる。
別れた夫は子どもを虐待したことがあったため、子どもと会わせないでいた。
そうしている内に、娘が学校で怒ったり、心配なことがでてきた。
家庭のなかのいざこざが再現されたりして、心配な面が出てきた。
お父さんに会いたい、と頻繁に口にするようになった。
夫が虐待の心理カウンセリングを受けることを条件に、
月に1回、2時間の面会をすることにした。子どもは、父親に会いたいときにいつでも会いたいって言えるようになり、安心していった。
結果問題行動がなくなった。このことから、父子が面会をする必要性を考えるようになっている。
◆行政の関与も。明石市の取り組み
親と子の面会を進めていくための模索をしていく自治体がある。
兵庫県明石市。離婚届を出す時に、子どもとの面会についても任意で提出してもらうことになった。今、面会交流について決めているのは57%しかない。
まず、場所や手段を決めることが必要だ。
明石市の政策課の話:面会交流は子どもの権利だ。
離婚の際には面会交流の取り決めをすることが重要だと考えている。
離婚時は、夫婦間の信頼関係が崩れているので話し合いが難しいのが現状。
夫婦は自分たちが別れることばかりに気を取られ、子どもたちへの意識が薄れがちになることがある。
子どもの側にたって取り決めを促進していきたい。
◆父親が気付き、変わることで会えるようになった例
離婚したあと、自らの意識を変えたことで子どもとの面会が許された男性がいる。
元妻が子どもを連れて家を出た。
その後相手に憎しみを感じ、相手を責めるメールを送っていた。
その後、実の母親の助言をうけて、元妻を責めることは、子どものためにならないということに気付いた。
それ以後、元妻に気づかうメールを送るようになった。
そうしているうちに、妻の態度も軟化し、裁判所は男性に子どもを会わせることを決定し、妻も応じた。
3年数か月ぶりに子どもたちに会えたことを喜ぶ男性。
◆解決するには、離婚の際の関与が重要
海外では専門家によるサポートがある。
ペアレンティングコーディネーターがきちんと両者の合意やルール作りをする。
そして、関係機関が協力して、その取り決めを実施するかどうかまで関わる。
まず、面会交流や養育費について当事者たちに意識をしてもらい、取り決めをすること。
そして決めたことがきちんと守られるように関係者が関与することが大切だ。
海外では、離婚は当事者同士で決められる日本の協議離婚のような簡単な制度ではない。
離婚した後子どもの養育についてどうするのか、取り決めをきっちりする。
それを実施するまで子どもの立場に立って関係機関が関与する。
◆子どもの立場に立った支援を
日本でも、当事者の立場だけではなく、お子さんのためになるような支援を広げていくといいと思う。
明石市では相談体制を充実させている。
関係機関、弁護士会、法テラス、裁判所が一緒になってお子さんの幸せについて考えている。
画期的な取り組みだと思う。
