浅野温子×劇団男魂(メンソウル) TEAM ON×SOUL 1st
「イノチボンバイエ」 中野ザ・ポケット
ダメな女社長を支える、部下・川本を演じるのは、メンソウル座長・杉本凌士さんと同じ、熊本県人吉市出身の、谷川昭一朗さん(東京乾電池)
谷川さん、演技じゃなくて、ホントに社長思いのサラリーマンでした。で、出てきてすぐに「あっ」って。
つい先月、山本真由美さん主演の映画「Every Day」を新宿K's cinemajで観まして(上田慎一郎監督がアフタートークに登壇した日)。
この映画で、定年退職する際の送別会には幹事2名しか来ない、厄介者扱いなんだけど、心根が優しいサラリーマン役を演じてたのが谷川さんだったんです。浅野温子さん、花奈澪ちゃん以外にも知ってる人がもうひとり出演してたのでした。
食品偽装がバレて、謝罪会見をするっていうのに、「のんきなもんですね、寝言」「寝言?!何言ってた?」「怒ったり、怒ったり・・主に怒ってましたね。あっ、タダシって誰ですか?社長にしては、ずいぶんと優しく話し掛けてましたけど。ホスト?会見前に、これ、重要ですよ」
「違うわよ。ほら、前に言ったじゃん、子供の時に別れた弟がいたって」「その人は大丈夫なんですか?」「何が?」「その、スキャンダル的な・・」「だぁいじょうぶなんじゃないの?お金持ちのうちにもらわれたんだから」
「会ってないんですか?」「あぁ」「一度も?」「会ってないよ、もう、顔も覚えてないよ」
亜紀子社長は、「だいたいね、どこだって産地偽装なんてやってるんだよ、うちなんて可愛いもんよ。バレたんだって運が悪かっただけだよ」
「社長が指示したんじゃないですか?」「してないわよ」
「じゃあ、どうしてアメリカ産の牛肉に米沢産のラベルが貼ってあったんです?」
「米国産、米沢産。どっちも『米』だから、間違えちゃったんだから、しょうがないじゃない」
「やっぱり、謝罪会見、しないとダメですかね?」「だって、こんなにマスコミ来ちゃってるんだから」
「ほら、でも、謝罪会見したおかげで、余計叩かれる、みたいなことあったじゃないですか」
「大丈夫だよ、私の言った通りにすればいいんだよ。社長は適応障害を患い、入院中。にも拘わらず、謝罪のために一時退院。あとは、川本、あんたがうまく説明してよ」
「社長は黙っててくださいよ、ボロが出るから」
なんてやり取りしながら、会見場へ。
ステージ上からふたりがはけると、舞台中央の奥にテレビが。そこでは、「謝罪会見」中継が放映されてます。
今まで、ここでふざけた会話をしてた亜紀子は、大きなマスクで顔を隠し、
泣きながら(ウソ泣き)「・・スビバゼン・・」
「えー、社長は適応障害で入院しておりましたが、一言、皆さまにお詫びをしたい、ということで、一時退院して、このような場を設けさせていただいた次第です」
「マスクで顔を隠してますが、それは適応障害と関係あるんですか?」
「えーー、へーー、ヘルペス・・ストレスでヘルペスが出来まして💦」
「どうして産地偽装したんですか?!」
「その件につきましては、第三者委員会を設置いたしまして、しかるべき調査をした後に、また改めてご説明させ、て、いただいます💦」
結局、何も説明せずに、逃げるように会見場を後にした亜紀子は、マスコミに追われて、精神科のある病院に逃げ込みました。
「ほんとに入院するんですか?」
「入院なんてしないわよ。しょうがないじゃない、あいつら、ついてきちゃったんだから。ウソの診断書を書かせて、それをあんたがマスコミに見せれば、あいつらだって、納得して帰るでしょ」
「ったく、ウソが好きですね」「ハぁ?」「いえ、なんでも」
問診票を書くと、診察室へ。ここからステージは、病院内の患者さんたちが集まる談話室のワンシチュエーションになるんですが、白い、透けたカーテンがかかった棒を回転させることで、上手に「診察室」を設置するシステム。これも、かんたんに転換出来るアイデア。
精神科医で院長の高梨先生(及川いぞう)、これがまた、実際にお医者さん。川本と高梨先生のリアルさが、この作品に現実感を与えてました。あっ、冒頭のプロレスごっこのシーンでは、いぞうさん、野球帽を被って、プロレスごっこを仕切る、リーダーでした。
診察のシーンでは、高梨先生が、上手から黒い丸椅子に座ったまま、足で漕いでタイヤを転がしながら入ってきます(診察が終わると、同じように足で漕いで、上手にはけます)。
亜紀子と川本、ふたりで診察室に入ると、亜紀子は先生の頭を見て、
ジェスチャーで(わたし、ハゲ頭ダメ!川本、あんたが先生の隣に座って!)
「名前は?」
「深水亜紀子」(小さい声で)
「?」
「深水亜紀子(ふかみあきこ)です」(川本が、大きな声で)
「職業は?」
川本に耳打ち
「食品関係の会社で社長をしております」
「深水さん、あなた、社長さんなら、自分で言えるでしょう!何があったんです?」
「いろいろと・・」
「いろいろ?」
「幼い頃・・」
「子供の時に何かあったの?体罰とか?」
船場吉兆のお母さん方式を川本が導入(笑)
<2,3か月前から>(ここ、ちょっとセリフ、自信がない)
「2,3か月前から・・」
「これは診察なんだから、自分で言わなきゃダメだよ。あなた、歳は?」
「(急に元気になり)はぁ?」
「歳は?何才?」
「なぁによ、女性に歳を聞くなんて失礼じゃないの!」
「深水さん、あなたね、適応障害だけじゃないね。ヒステリー神経症もあるね。入院の手続きして。」
「ちょっと待ってよ、入院なんてしないわよ」
という亜紀子をさえぎるように川本が「じゃ、よろしくお願いします」(ぺこり)
「ったく、なんて日だ・・」とぼやきながら、高梨先生ははけて行きました。
ウソの診断書だけ書いてもらうつもりが、入院する羽目に。
川本は入院に乗り気。
夜になると、あちこちからうめき声が聞こえたり、北京原人がこっちを見ていたり。無表情で両手をだらんとさせながら、トボトボとすり足気味に歩き回る男がいたり。
翌朝、亜紀子の着替えを持って、川本がやってきました。
「まだ、マスコミ、張ってますよ。2桁はいますね。夕べは眠れました?」
「眠れるわけないじゃない!ベットは固いし、なんか、変な声は聞こえてくるし。北京原人みたいのがいるし」
「まぁ、安いホテルに泊まってると思えば」
「ホテルに鉄格子はないわよ!」
「でも、大丈夫なんですか?その・・ヒステリーしんけいプププ」
「なに、マジ笑いしてんのよ!わたしは病気なんかじゃないわよ。あのハゲが勝手に言っただけなんだから!」
川本は仕事があるからと、着替えを受付に預けときますと言い残すと、帰っちゃいました。
さぁ、これから、入院患者たちと亜紀子との初対面です!
観劇前、精神病棟が舞台ということで、重たい感じなのかなと想像してたんですけど、かなりコミカルです。さまざまな精神疾患を患っている患者さんたちが、めっちゃ個性豊か。
続く!