自民党女性局が視察という名の観光に行ったフランスの税制と社会保障 | 渾沌から湧きあがるもの



 

 




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


社会連帯は安心な生活の保障から

フランスの取り組みより



 現在日本で世代間、世代内、地域間、さまざまな分断が生まれていることについて、筆者はフランスとの比較から図1のように考えている。安心して暮らせる生活保障があり、自由に発言できる環境の中で批判精神を持ち続けることができたら、市民性が育まれ連帯していくことができるのではないだろうか。土台の生活保障から順にフランスの取り組みを検討していきたい。




なお、筆者はパリ市とその北にあるセーヌ・サン・ドニ県を調査フィールドとしている。特にパリ郊外に位置する後者は、移民の割合が非常に高く、左派政権が強いため福祉予算が他県に比べても多い。

2020年の非課税世帯はパリ市の31.5%に比べ52%、貧困率はパリ市の15.4%に比べ27.6%である(1)

筆者は福祉が非常に盛んで活気がある様子に惹かれ調査を続けている。社会的背景には2020年のパリ市での未成年の犯罪の8割を、まだ滞在許可のおりていない外国出身の子どもが占め、強盗の3割の加害が彼らによるものであることなど(2)社会統合のために誰もが安心して暮らせる社会をつくらなければならないという意識が強くある。

しかし、2022年の大統領選では41%を極右が勝ち取ったことをみても、フランスにおいても地域差がとても大きいことが窺えるため、パリとセーヌ・サン・ドニ県の様子は全国で共通とは限らない。


(1) 老後が安心であること

 年金改革に反対するデモが現在おこなわれていて、若い学生も家族連れもお年寄りも一緒に行進している。自分たちの暮らしを守る、あるべき国の姿に近づくべく年代を超えてともにたたかっている。

フランスには老後の蓄えという概念がない。65歳以上はそれまで年金を納めていなくても、基礎年金を月14万1700円受け取る(3)

定年退職の平均年齢は62.4歳で、2020年の年金生活者は1680万人。1940年生まれの人は退職と同時に最後の給料の80%を年金として受け取るが、2000年生まれは62~68%になることが危惧されている(4)

フランスの65歳以上の年金生活者の平均月収は21万4400円で、3人以上子育てをした人は増額される(5)。比較のため、稼働年齢層の平均月収は38万8000円(2587ユーロ)である。

ちなみに物価は日本の方がやや高く、フランスは生活保護費も最低賃金も平均賃金も日本の約1.5倍(6)である。

65歳以上の相対的貧困率は日本が19.6%に対しフランスはOECDで一番低く3.6%(7)、65歳以上の男性の就労率は日本が33%であるのに対しフランスは3%である8。


(2) 高齢、障害、傷病は生活保護の対象ではない

 生活保護には65歳以上、障害と傷病は含まない。それぞれ生活保護以上の手当が存在するからだ。

日本の生活保護受給者の55%が65歳以上であるのに比べると大きな違いである。最低限の生活費で人生を終えることがないというのは、尊厳を守るうえで重要な点ではないだろうか。


続きはこちら



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇