1972年公開のドキュメンタリー映画「百年の夢」。
今年11月の「GENTLE NIGHT」で紹介した映画ですが、
スロヴァキアの山岳地帯に暮らす高齢者を題材に、老人達の人生が、優れたロードムービーの様に鮮やかに浮かび上がる構成には、感銘を受けました。
この映画を観て、私が想い出したのが、ニーチェ氏の「ツァラトストゥラはかく語りき」。
この書は、人の一生を「超人→幼な子」といった変遷として説く内容ですが、映画「百年の夢」では、複数の老人達の辿ってきた人間模様、社会背景が各々の1ショットのトークで展開されていて、小宇宙の様な奥行きを持って描かれています。

更に印象的なのは、G・ヘンデル氏の音楽。
私は、この映画の音楽の使い方には、同時代に公開され、
リヒャルト・シュトラウス氏の
映画が使用された映画「2001年宇宙の旅」に対する
オマージュを感じたのですが、
G・ヘンデル氏は、現在は、英国🇬🇧の音楽家のイメージが
強いが、元来ドイツの作曲家で、英国に渡り、成功を収めました。
スロヴァキアは、ドイツやハンガリー、ロシア等大国の思惑を受けてきた国なので、英国のイメージが強いG・ヘンデル氏の音楽が映画で使用されているのは、結果として、この映画のもう一つの優れたメッセージにもなっている、と考えています。

ちなみに、この映画は、紆余曲折を経て、
1990年Los Angels 映画批評家協会賞最優秀記録映画賞を受賞しています。