私が仕事上で大事にしていた考えに、「環境を整える。」「(患者)自身の力を生かす。」というのがある。


いろんな原因で困難になっていることに対して、手出しをするのは簡単だ。

でも、すべてを手出しするのが本当の優しさや看護だとは思っていない。

それは、依存になりかねない。

その人自身がそのときに持っている力を生かしながら、生活を組み立ててあげることの方が、その人らしくあれると思う。


だから、不要な物を整理したり、室内の物を整えたり、使いやすく配置したり、ライン整理したりする。

それはお互いの安全につながるし、限られた力で少しでもその人らしく生活出来るようになる。


私が中学生の時にこの仕事をしたいと思った理由のひとつは、「愛する人のために最善を尽くせるようになりたい。」と言うのがあった。


今となっては、それが叶ったかたちになったわけだが、それ故に、ゆうくんに対してどのように子育てしていこうかと考えたとき、上記のことを同じように考えた。


ダウン症を持つために生じる体循環の悪さ、冷え、やわらかさ、運動・知的発達の遅れなど、根本的にどうしようもない部分をどのように補っていくか、不足の部分を補い、生かすために、どのように環境を整えていくか、そういうことばかりを考えて子育てをしていたように思う。


もちろん、それは最初から出来たわけではない。しかし、精一杯生きている目の前のゆうくんを前に、泣き続けるわけにはいかないと思ったときから、試行錯誤を始めたと思う。


こうやって文章にするとたいした考えっぽくなるが、実際は世の中のお母さん方は、無意識にそうしているはずである。あえていえば、どうせ出来ないという考えはせず、環境を整えることで、出来ることはたくさんあるはず、出来ないとあきらめないですむこともあるはずと考えるようにした。


ゆっくりでもいつかは出来るであろうが、わからないことを言葉でしろと言われても私だって出来ない。ならば、このような子供たちに対して、取り組みやすい環境を整えるのは有効だと考えたと言うことだ。