『トレーダーズ』映画鑑賞。エリート金融マンの主人公は金融不況を理由に、突然会社から解雇を告げられた。豪華なマンションで何不自由ない生活を送ってきた主人公は、そのすべてを失うことになる。その頃、彼の旧友で事業に失敗してばかりの友人であるシステム・エンジニアが、金の欲しい者同士が同じ金額を賭け、殺し合うといった新たなインターネット事業「トレーダー」を考え出していた。恐ろしいコンセプトを聞いた主人公は、一度はその男の誘いを断るが、不況に苦しみ仕事を失った自分の置かれた惨めな状況に嫌気が差し「一度だけなら」とゲームへの参加を決意する。『ＳＡＷ』シリーズや『キャビン』、『［リミット］』始め、驚くべきアイディアと映像センスでハリウッド大作を凌駕する作品を生み出してきた“シチュエーション・スリラー”に肉薄する傑作の登場といってよいほどの出来の良さ。経済が行き詰まって多くの失業者で溢れる現在のロンドンを舞台に、失った経済的栄光に追いすがる「カネの力」に取り憑かれた人間たちが、金を求め、文字通り「生きるか死ぬか」のタイマン勝負に挑む姿は胸に迫る切迫感がある。リアリティに溢れ他人事とは思えない設定と、それぞれのキャラクターが抱える切実な背景に、誰もがのめり込むこと間違い無い。大金を掛け一対一で命を懸ける奴らの思いを余すところなく描く秀作。意表を突いた最終盤の収束も見事。お薦め。