① バンド経験者だからこそ分かる「音の設計力」
サカナクションの音は、雰囲気で鳴っていない。
コード、リズム、音色、間――すべてが設計されている。
「バンド感が薄い」のではなく、
バンドで戦える人間が、構築美を選んだ結果の音。
元バンドマンとして、これは素直にすごいと思う。
② 打ち込み=逃げ、という価値観を壊された
昔の自分は、
打ち込み=生演奏からの逃げだと思っていた。
でもサカナクションは、
打ち込みでしか作れない精度を使って、
人の感情の“揺れ”や“不安定さ”を描いている。
これは逃げじゃない。
表現手段の更新だ。
③ 地声 hiA(約440Hz)という「ハイトーン」の使い方
僕の感覚では、
地声 hiA は十分ハイトーンだ。
山口一郎は、その高さを
張り上げず、威圧せず、淡々と使う。
この時点で、
他のロックバンドのボーカルとは明らかに違う。
さらに、hiA(440Hz)付近の音は
「人に安心感を与える効果がある」とする文献を
どこかで目にした記憶がある(※要検証)。
高いのに落ち着いて聴こえる理由が、
ここにある気がしている。
④ 地声ヘッドボイスでも上限が見えていた自分に刺さった
僕自身、
地声の上限は F#4あたり。
じゃあ地声ヘッドボイス(ミックス寄り)が
自由に使えるかというと、そうでもなく、
実用域は G4〜D5 あたりが限界だった。
つまり、
・純粋な低音が武器なわけでもない
・ハイトーンで圧倒できるわけでもない
歌い手としては、かなり中途半端なポジション。
それでもサカナクションを聴いて思った。
無理に上を目指さなくていい。
使える音域を、どう鳴らすかがすべて。
設計されたキーとメロディの中でなら、
自分の声でも戦える可能性がある。
⑤ 感情を煽らないのに、深く刺さる
叫ばない。
盛り上げない。
感情を押しつけない。
その代わり、
感情を一歩引いた場所から見つめて、
そのまま音にしている。
バンドマンだった頃の自分も、
今ひとりで歌っている自分も、
どちらも否定しない音楽。
だから僕は、
元バンドマンになってから、
サカナクションを推し始めた。
