ユーザー様よりエンジンの製作依頼から始まり、タービンはユーザー様の持ち込みタービンでTOMEI製M7960と比較的下から立ち上がる容量はそれほど大きくないタイプのタービンでのセットアップでした。
その他仕様
エンジン HKSキャパシティアップグレードキットStep.1 排気量2139cc
カム HKS IN/EX256°
タービン TOMEI M7960
フューエル DW 740inj ・ SARD 265L/hポンプ&F/レギュレータ
ヘッドボルト等はARP製を使用しましたが、ヘッド廻りも純正品で寸法合わせ・重量合わせ等最適化しうてバルブ周りは当たりを修正して特別なパーツは使用せず組付けました。
今回はR35用のエアフロセンサーを使用しエンジン仕様に合わせてパイプ径を選択しました。
またエンジンの方は元々O/Hする前のブロック状態が楕円にひずみが大きく、本来ならボアを1.00㎜程削りたかったのですが、0.50㎜で合わせてヘッド側も面研量が少し多狩った為コンプレッションは初期想定より少し高くなりましたが、それに合わせてバルタイを調整しました。
慣らしはユーザー様に依頼しECU上で4000rpmの縛りは付けましたが、今一度コンプレッションテストしてよい感じに慣らしも終わっていたので、ダイナパックで廻していきました。
初めはブースト0.9kからセットアップをはじめ1.0k1.2kと徐々に上げていき1.4kの時にクラッチが滑る症状が出てしまい、クラッチのメーカーに動摩擦での許容トルクを確認すると540N・m(55kgfm)
廻していくとやはり滑る症状が確認されたのと、実際にINJ側もブースト1.4Kで開弁率98%オーバーになってきたので、これ以上は色々と弊害が出るので今回は下記で合わせこみました。(5000rpm附近で1.2k以上でノックが出やすかったので少し落としてます)
パワー&トルクグラフ
1.05k時 335.1PS/5877rpm 43.15kgm/5877rpm
1.20k時 約351PS 45kgm
1.38k時 381.1PS/5867rpm 50.59kgm/4665rpm
ノック水色線約5000rpm附近 ・inj開弁率98.%到達したので1.4Kまでとなりました
弊社でのダイナパック出力数値はこのようになっておりますが、駆動系摩擦損失やかき回し損失を加味すると、
実際にクラッチ側の実入力トルクは55kgm以上でかつパワー430PSオーバーだと思われます。よってノッキング発生状況やINJ側のハードパーツ容量を考え今回は
1.38k時 381.1PS/5867rpm 50.59kgm/4665rpm となりました。 ブーストの立ち上がりも鋭く、実際に乗ってみましたが、本当に乗りやすかったです。サーキットが鈴鹿や富士とかになるともう少し大きめのタービンが良いと思われます。
追記
前に別のS15車輛で別メーカーのSR2.2キットを他社で組まれたエンジンでタービンやECUは同じ車をセッティングさせて頂いたことがあり、今回のエンジンとグラフを合わせて見比べてみました。
この時の車両は パワー360PSトルク53kgmほどでしたが、ブースト圧は見ての通り1.6kでの到達馬力です。(オレンジ点線)
ほぼ同じブースト圧での結果だと(水色点線と今回が緑実線)言わずもがなの差があります。
それと大きく異なるのは、同じタービンでのブーストの立ち上がりが大幅に向上している点でしょうか。大きく起因する要因はエンジンコンプレッションの違いだと思われますが、バルタイの違いがブーストの立ち上がりに大きく関わっていますしまた7000rpm以上でのパワー&トルクの伸びも違いがありますよね。
違いを書けばきりがないのでこの辺りにしますが、エンジンの組み方の違いにより同じ排気量同じリフト量のカム&タービンでもここまで変わってくるという事例です。ご参考までに。
最後に今回のセットアップコンディションは
外気温23.6℃ 気圧1008.49mbar 湿度 80.8%でした。
オートクラフト しらひげ