イメージ 1

ロマン・ポランスキーという監督、先日「オリバー・ツイスト」を見たのが久しぶりだなと思っていて、他に何を撮ってたっけ…、なんて思っていたのですが、改めてみると「フランティック」「死と処女」「チャイナタウン」など、いくつか記憶に残る作品もありました」。一時は「ポゼッション」のアンジェイ・ズラウスキー監督と勘違いしていたこともあるんですが。


これが実話かどうかも確認せずに見始めたのですが、驚くほど人が簡単に殺され、それにみんなが慣らされてゆく、という描写がつぎつぎと畳みかけられてゆき、その重さに緊張しました。そして自らの社会の中でユダヤ人を迫害せざるを得なかったポーランド人の屈折と、いずれは自分たちも同じ目に遭う、という覚悟での抵抗。崩壊を間近に迎えたドイツ軍やドイツ兵の野戦病院などを見つめる視点すらも、窓からのぞいた時に見えるわずかな情報。

隠れ住むものだけに見える、「弱きもの」の視点で一貫して描かれています。

実はこの映画でもっとも印象づけられるのは「人はパンのみにて生くるにあらず、しかしパンなしでは生きられず」というきわめて生物学的な原理原則なのだと思います。

実はピアノがうまいかどうか、主人公シュピールマンが才能あるピアニストであったかどうかは、どうでもいいことではないかとさえ、ぼくは思ったりするのです。ポーランド人も、ドイツ人も、彼にかかわった人々は、彼に協力したり、彼を見逃したりすることで、この戦争における自分の「立ち位置」を確認しているのだ、と。事実、シュピールマンは多少は放送を通じて名前を知られたかもしれないが、演奏旅行で世界中を飛び回るよりは、放送局付きでスタジオにこもって作業をする、どちらかというと地味な存在です。レストランで彼が弾いたからといって、みんなが聞きほれて食事を忘れるというわけでもなく、偽造コインの音を聞き分けるためならちょっと演奏をやめさせられる程度の存在です。

ただ、この映画で描かれているのは、恐ろしいまでの皮肉。そして、状況というのは時間とともにいかようにでも変わってしまい、人はそれに合わせて生きてゆくのだ、という冷徹とも楽観的ともとれる人間観なのではないでしょうか。