
最初にオリバーが孤児院に連れて来られるシーンから始まり、ろくな食事を与えられない孤児たち。そして、お代わりを欲しいと要求されると侮辱されたような顔をする、ぶくぶく太った教化委員のお偉方。児童虐待、なんてもんじゃなくひどい世界。不公平が当たり前だった世界。実は今からそんな昔じゃないのでしょうね。
で、引き取られた先でも表情の悲しげなところに引かれたダンナにかわいがられるが、やっかみを受けていろいろといじめられ、ロンドンに向けて家出する、みたいな話です。で、そこでスリの集団に引き込まれるが、最初のスリの現場でどじを踏んだドタバタで捕まってしまい、そこで親切な紳士に拾われる。
スリや悪党たちはオリバーに密告されて絞首刑になるんじゃないか、と疑心暗鬼に陥り、オリバーの口を封じようとしたり、引き取り先に強盗に入ろうとしたり。このへんの戦略がずいぶん大ざっぱで、効き目が薄いことを繰り返してるような気はします。
この辺のストーリーで、なんか物足りないな、と思う部分はあるのですが、それはオリバーがただかわいらしいから、みんなが構ってくれたり、「あいつは根っからの悪党じゃない」と信じてくれている、ように見えるところで、なんだか「顔さえよければこの世は楽に渡れる」みたいなメッセージとも受け取れないかなぁ、なんて思ったりします。あと、最初はオリバーはスリ集団に育ててもらってだいぶ借りがあるのですが、それが金持ちに引き取られた途端に、彼らのことはけろりと忘れ去ってしまう、そんな現金さがあります。オリバーが学問に目覚めたり、本を読むことにとりつかれる、みたいな長い目で見たエピソードがあればもう少しその辺は説得力があるのですが、なんせ2時間の中に詰め込んでるので、そのへんはどうもすっ飛ばしぎみでオリバーの人物像もただの恩知らずに見えます。
それでも、この映画には通奏低音のような悲しみが流れています。それは「しょせん、人間は平等ではない」というあきらめに似た悲しみでしょう。オリバーが最初から悲しみをたたえた表情をしていますが、その顔が最後に向けられるのは、絞首刑を待つフェイギンのところへと訪ねていくくだりです。
最後にはフェイギンも錯乱してしまっているのですが、それでもオリバーへの愛は残っていて、いろいろと財産を残してやるだとか、こっそり逃がそうとしてくれたり、やっぱり根っからの悪人ではなかったのだなぁ、と思えます。時代が時代なら、彼にだっていろんな才覚を発揮できる場はあっただろうに、ある者にはビジネスの成功が、ある者には社会の最底辺でその日暮らしを強いる社会が厳然としてあるのです。
最後の別れのシーンでは、さすがアカデミー賞俳優ベン・キングズレーの名演技が見れます。それから、オリバーを引き取ってくれるお金持ちブラウンロー氏は「シャーロック・ホームズ」のジェレミー・ブレットの相棒ワトソン役を務めたエドワード・ハードウィックでした。
監督はロマン・ボランスキー。「死と処女」や「フランティック」などを見た記憶があります。