「おばけなんてないさ」の呪い~アンコンシャス・バイアスは意識的にはなおせない~
子どもの頃、一人で夜トイレに起きたとき、「お化けなんてないさ・お化けなんて嘘さ」と唱えたことはありますか?けれども一旦、「お化け」と言葉を口にしてしまうと、その思いとは裏腹に「お化けのこと」が頭から離れなくなってしてしまうものです。これに関連して思い出されるのが、「シロクマ効果」と呼ばれる現象です。「白熊のことを考えないでください」と言われたら、私たちは、一旦、白熊を思い浮かべ、それを考えないように抑え込もうとします。そして、その後は余計に白熊を思い浮かべやすくなります。さて、前に記事で説明したアンコンシャス・バイアスについて考えてみました。よく、「アンコンシャス・バイアスに気づきましょう」「アンコンシャス・バイアスをなおそう」といったコンサルの言葉を耳にしますが、これってどうなのでしょうか。そもそも無意識を意識的に治せるのでしょうか?もし、「女性はリーダーに向かないと、考えないようにしましょう」と言ったとします。すると、「女性はリーダーに向かない」という言葉が、かえって強調され意識されてしまいます。これって、うまくいくのでしょうか?私たちは、「しないことをする」のは難しいのです。そうではなくて、他のことを考えた方が効果的なのです。たとえ話ばかりで恐縮ですが、みなさんは、ウルトラマンをご存じと思います。そのエピソードの一つに、怪獣ギャンゴというのがあります。ギャンゴは、人の願いが形となって現れた怪獣です。その人がギャンゴのことを忘れれば、怪獣は消えることになりますが、現実にはなかなかそうはいきません。忘れたいことを言語化して忘れようとすることで、忘れたいことを忘れられたという経験がありますか?私はありません。「ギャンゴのことは忘れるんだ」と、忘れたいことを意識すると、却ってそれが強調されるという皮肉な結果がもたらされるものです。「アンコンシャス・バイアス」の対策も同様です。「アンコンシャス・バイアスに気づいてなおそう」というのは、おかしなことです。(ただし、内閣府の紹介しているアンコンシャス・バイアスの意味は、アンコンシャス(無意識)ではなく、「意識」のことを言っているので、そういった意識啓発であれば有効かもしれません)では、どうしたらよいか。アンコンシャス・バイアスを改善するには、「心の体質改善」「心の柔軟体操」が重要だと考えます。そもそもの基本的な思考の在り方がカギを握っていて、柔軟なものの捉え方、豊かな認知空間の醸成が重要なのです。そういったスキルを醸成するための研修プログラム(認知的複雑性研修:Cognitive Complexity Training)を開発しました。研修プログラムでは、認知的複雑性(物事を多面的に理解する力)がステレオタイプや偏見を緩和する可能性があることに着目しています。こちらは紹介動画(英語)です。https://www.youtube.com/watch?v=9zaeOQGx2R4こちらは、プログラムの記事(英文)です。Kobayashi, A. & Tanaka, K. (2022). Cognitive complexity training reduced gender harassment in a small Japanese company. Japanese Psychological Research. Advance online publication. https://doi.org/10.1111/jpr.12419こちらの紹介動画は、日本語です(前編・後編に分かれていて、少し長目です)ジェンダー・を語らないジェンダー研修(前編)https://youtu.be/x22acqpQPccジェンダー・を語らないジェンダー研修(後編)https://youtu.be/MMeAl_EBZMg