自然と歴史

インドシナ半島の中央部。国土の中部はチャオプラヤ川の沖積平野。Aw・Am気候でモンスーンの影響を強く受け,雨季には河川が増水して氾濫する。1782年に現チャクリ王朝が成立。英領インドと仏領インドシナの間の緩衝国として機能。1932年に立憲君主制に移行したが,クーデターや与野党の対立が相次ぐ。

 

産業と現状

米・天然ゴムなどの生産のほか,チーク材やすずなどを産出。米の輸出は世界1位。繊維,電子・電気,自動車産業などが成長。1970年代以降民主化を求める動きが活発化。1997年にはバーツが暴落し,アジア通貨危機を招いた。2006年以降は内政不安で経済も影響を受けた。2011年には大洪水で工業生産が停止,多くの日本企業にも影響がおよんだ。

 

浮稲

チャオプラヤ川の沖積平野は,タイの米生産の中心地である。雨季に入ると川の水位が上昇し,水深が深くなるところでは,水位の上昇と競い合うように茎がのびる浮稲が無肥料で栽培される。茎の長さは数mにもなる。近年は灌漑の普及で浮稲は減少し,全体の約1/5の80万haとなっている。

 

エビの養殖場と養殖池の造成

エビの輸入の多くが冷凍品である1961年の輸入自由化によって天然エビの輸入が激増し,1980年代後半からは東南アジア産ブラックタイガーが主力となった。0.5から1haの養殖場での給餌・抗生剤投与・水温水質管理による高密度養殖が主流である。タイではマングローブ林の2割強が養殖池造成により消滅し,さまざまな環境問題を引き起こしたため,1998年にマングローブ林の伐採が禁止された。

 

日本企業によって植林されるマングローブの苗木

タイでは,国土の半分以上を占めていた森林が焼畑や乱伐によって約3割に急減した。この緑を回復するため,タイと日本の協力で植樹林の育成実験が行われている。

 

タイの鉱工業

アジアのデトロイト」を目指したタイでは,税の優遇措置やインフラ整備などを進め,各地に家電や自動車,電子機器などの製造業が多く進出している。タイにとって日本は最大の投資国で,日産自動車は「マーチ」の生産拠点をタイに移し,ASEAN域内の自由貿易の利点を活かした分業生産を行なっている。2011年には,集中豪雨により広範囲で洪水が発生し,部品を製造する工場が被災してサプライチェーン(供給連鎖)が途切れ,関連する多くの企業の製造ラインがストップした。一方,日本のODAも貢献したベトナムからミャンマーまでを結ぶ南部経済回廊などの交通インフラの充実や,関税障壁をゼロにするASEAN経済共同体の発足を受けて,労働集約的な工場をより人件費の低いカンボジアやラオスに移す動きも見られはじめている。

 

 

さまざまな品物が並ぶ市場と水上マーケット

タイでは大小さまざまな市場が開かれている。市場では野菜や果物,魚介類などの食料品のほか,衣類や民芸品など多くの品物が売られている。かつては水上マーケットが多く見られたが,現在は減少傾向にある。

 

 

スカイトレイン

タイのバンコクでは,1990年代以降の急激な経済発展にともない,交通渋滞や大気汚染が顕著化し,その対策として高架式の鉄道(スカイトレイン)が計画され,1999年に開通した。また,2004年には日本からの援助で建設され地下鉄も開通し,市民の足として欠かせない交通手段となっている。

 

タイのソンクラーン(水掛け祭り)

もともと仏像や仏塔へ水を掛けてお清めをするという伝統的な風習であったが,近年は街の往来で通行人同士が水を掛けあって楽しむ「水掛け祭り」として知られるようになった。現在は,雨季に入る毎年4月13日から15日の3日間に行われている。

 

 

僧侶と信者の朝食

朝食は早朝の托鉢で得られた食材や捧げ物から信者が取り分けていただく。上座仏教(南伝仏教)では,寺院への寄進や人のために尽くして徳を積むことが,来世での幸せにつながるとされている。

 

タイの原始宗教

精霊信仰(アニミズム)は,バラモン教や仏教などの外来宗教の伝来以前から東南アジア北部や中国ユンナン省に存在したとされる信仰で,ピー信仰と呼ばれている。万物に存在する精霊とその作用を信仰する自然崇拝を特色とする。

 

バンコクのトゥクトゥク

東南アジアにおけるかつての庶民の重要な交通手段は,三輪式の自転車「サムロー」であった。しかし,バンコクの都心部では自動車交通の妨げになるとして,乗り入れが禁止されてしまった。三輪式自転車にエンジンがついた「トゥクトゥク」も自動車の普及によって,現在は主に観光向けの乗り物として利用されている。トゥクトゥクと同様のものをインドネシアでは「バジャイ」という。

 

 

 

英プレミアリーグ優勝のレスター タイでファンら歓迎

サッカーのイングランド・プレミアリーグを制したレスター・シティは2016年5月18日,チーム会長の母国のタイを訪問し,熱烈な歓迎を受けた。昨季にはリーグ降格間際だったものの,劇的な躍進でリーグ勝者となったレスター・シティの会長はタイの実業家ビチャイ・スリバッダナプラバ氏。

サッカーのイングランド・プレミアリーグで初優勝したレスター・シティのオーナーは,タイの実業家ビチャイ・スリバッダナプラバ氏。スリバッダナプラバ氏は優勝を祈願し,シーズン開幕前にタイの仏僧プラ・プロマンガラチャン師に選手たちを祝福してもらった。

 

 

 

チャナティップ・ソングラシン

タイ・ナコーンパトム県出身のサッカー選手。ポジションはミッドフィールダー,フォワード。Jリーグ北海道コンサドーレ札幌所属(現川崎フロンターレ)。「タイのメッシ」の愛称で呼ばれる。2014年に東南アジアサッカー選手権で優勝し,大会選定の最優秀選手賞を史上最年少受賞した。

 

 

タイ代表の西野朗監督、2年間の契約延長合意

タイサッカー協会は22日、A代表を率いる西野朗監督と2年間の契約延長で合意に至ったと発表した。U-23代表と兼任していた西野監督は現在、地元で開催されているU-23アジア選手権で同国代表を率いて、史上初のベスト8入りを達成。東京五輪出場権は獲得できなかったが、その手腕が評価された。

 

映画「王様と私」

マーガレット・ランドンの伝記小説「アンナとシャム王」を原作とするブロードウェイの大ヒット舞台を映画化し、1957年・第29回アカデミー賞で5部門に輝いた名作ミュージカル。1862年。夫を亡くしたイギリス人女性アンナは息子を連れ、シャム王国の王子や王女の家庭教師を務めるため同国の首都バンコクへやって来る。文化や習慣の違いに戸惑うアンナは、尊大で頑固なシャム王と衝突を繰り返しながらも次第に打ち解けていくが……。ブロードウェイ版に続いてユル・ブリンナーがシャム王を演じ、アカデミー主演男優賞を受賞。「地上より永遠に」のデボラ・カーがアンナを演じた。「麗しのサブリナ」の脚本家アーネスト・レーマンが脚色を手がけ、「ショウほど素敵な商売はない」のウォルター・ラング監督がメガホンをとった。