星の成長は現在と宇宙初期ではかなり異なる。現在の星は、その昔に形成された大質量星が燃える過程で合成されたり、燃え尽きた末に起こる超新星爆発の際に合成された炭素、酸素や鉄などの金属元素が、水素やヘリウムなどの軽元素に混ざっている。そのため、これらの重元素の影響で初代星よりもかなり早い時期に核融合が始まり、その熱エネルギーによって星の外側が吹き飛ばされるので、初代星ほどには重くならず、超新星爆発で生じるブラックホールも10太陽質量以下となる。
   これに対し宇宙で最初に生まれた初代星は、軽元素だけの星間ガスからできるので、星の中心部で核融合が始まらないままガスの集積が続いて100太陽質量以上の超大質量になる。その後の星の変化でも恒星風によるガスの流失が少ないので、星は大きなサイズを保ち続け、これが超新星爆発を起こせば、10太陽質量を超えるブラックホールが形成され得る。また、理論的には星間ガスの中から初代星が生まれる際、ある程度の割合が連星になり、それらが超新星爆発を起こしてブラックホール連星になると考えられる。今回の重力波GW150914のブラックホール連星は、宇宙の初代星が起源である可能性がある。
 
<日経サイエンス 2016.5月号>