「あなたの喜びは悲しみの素顔
笑いのこみ上げてくる井戸は、しばしば涙で溢れている」
悲しみがあなたの存在をえぐれば、えぐられたところにそれだけ喜びを蓄える事が出来ます。あなたが(葡萄)ぶどう酒をうける杯は、まさに陶工のかまどで焼かれた
あの杯のようではありませんか。
あなたの心を慰める楽器、リュートは、もとは小刀でくりぬかれたあの木では
ありませんか。
うれしい時には自分の心の奥を覗き込んで御覧なさい
すると、見つけるに違いありません
かつては悲しみの原因になっていたものが今は喜びの原因になっているのを。
悲しくて仕方のないときも、心の奥を覗き込んでごらんなさい。
するとみつけるに違いありません。
かつては喜びであった事のために今は泣いているのだ、と。
あなた方の誰かがいいます。
「喜びは悲しみに勝る」と。
するとある人がいいます。
「いや、悲しみの方こそ」と。
しかし、わたしはいいます。
喜びも悲しみも分ける事が出来ません。
両方とも連れ添ってきて、一方があなたと食卓についている時
忘れてはなりません
もう一方はあなたの床に眠って待っているのです
まことにあなたは杯のようです。
悲しみと喜びの間にかかっていて
空のときだけ静止し、平衡(へいこう)をたもちます。
宝の持ち主が、自分の金と銀を量ろうとあなたを持ち上げた時
あなたの喜びと悲しみも上がり下がりせざるを得ないのです。
詩人:カリル ギブラン
ありがとう