人生で一番大きな買い物をした。長い間憧れていたレンズCanon 800mm。メーカー希望価格が175万円もする超望遠レンズで、手が届かないと思っていた。
2017年6月。横浜の家電量販店へ行き、Canon 800mmを購入した。2年ローンなら金利手数料が無料だった。店員はCanon 800mmと聞いた時、聞き間違えたと思ったそうだ。800mmを買う人は滅多にいない。店内のパソコンにCanon 800mmのデータが映し出されると、店員は顔を貼り付けるように見ており、おそらく僕よりも興奮していた。2週間ほどかかるかもしれないと店員は言う。だが実際は2日で届いた。8月の北海道の撮影旅行を控えていたため、早い方がいい。練習もできる。レンズだけで約4.5キロもあるため、構えるだけで汗が噴き出した。野生動物を撮影するのに手持ち撮影が必要になのは分かっている。日に日に、汗の量は減っていった。
2017年7月。突然だった。自宅で機材の点検をしている時、今まで使っていたカメラCanon 7Dのシャッターが切れなくなった。新しいカメラが欲しいと思ったが、ローンを背負っている僕には余裕がない。すると、父が10万円位なら貸すと言ってくれた。買うべきカメラは分かっている。すぐに、Canon 7D mark2の安いお店を調べ、手にすることが出来た。Canon 7D mark2はCanon 7Dの進化型のカメラで以前から手に入れたいと思っていた。北海道へ飛ぶ日が明るく見えた。
2017年8月。北海道。まだ完全に使いこなしている訳ではなかった。撮影を進めながら、自分の一部にして行く。レンズやカメラは生きているかのように個性がある。写真家は、機材の個性を生かしながら自分のものに仕上げ、機材を育てていく。Canon 800mmとCanon 7D mark 2は答えてくれた。ある時は、吸い込まれるような闇で輝くシマフクロウの前で。またある時は、燃えるような緑から顔を出すエゾヒグマの前で。新しい機材は、僕がどこにピントを合わせたいのか、徐々に分かるようになった。
今回の北海道の取材は、大学卒業後、初めての撮影旅行である。思い切って良い機材を手にしたことによって、大学時代より進歩できた。機材を育て使いこなし、厳しい環境にも耐える精神力があれば、いい写真を撮ることが出来る。しかし僕はいい写真を撮れたからと言って、終了するのは意味がないと思う。実際、いいのが撮れたと言って帰って行く人々の背中を見た。だがプロの写真家は違う。もっといい写真を撮ろうとする探求心がある。同じ被写体を追っていても、その時によって違う見え方がある。
2018年3月、再び北海道の地へ足を運ぶ予定だ。
photo by Atom Karita
