今回紹介するのは、2005年公開のアメリカ映画
『ブロークバック・マウンテン』です。

主演は『ダークナイト』でのジョーカーとしてその名を轟かせた早世の俳優ヒース・レジャーと、『ナイトクローラー』や『スパイダーマン』などで知られるジェイク・ギレンホールの2人です。

第78回アカデミー賞において、脚色賞、作曲賞、監督賞の三部門を受賞しています。

あらすじを紹介します。
以下完全にネタバレになるので、注意して読み進めてください。

アメリカ西部ワイオミングのブロークバック・マウンテンの農牧場に、期間限定で羊の見張りとして雇われたイニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ギレンホール)は、2人だけで山の上で何日も過ごしているうちに友情以上の感情を抱くようになり、ある日肉体関係を持ちます。雇用期間が終わり、町に降りて離れ離れになり、2人はそれぞれ結婚して幸せな家庭を築きます。

4年後、2人はイニスの家で再会します。そこでキスする姿をイニスの妻は目撃してしまいます。彼女は旦那が同性愛者であったことにショックを受けますが、見なかっことにして日々を過ごします。しかし、定期的に"釣り"と称してジャックと共に出掛けるイニスに耐えきれなくなり、ついに離婚してしまいます。

たまに会うだけの関係を10年以上続けた二人ですが、ある日大喧嘩してしまい、距離を置くようになります。

久しぶりにジャックに連絡しようと思い、イニスが彼に手紙を書くと「DECEASED」(受取人死亡)とスタンプを押された手紙がイニスの元に戻ってきました。
ジャックが事故死したことを知り、急いで彼の家を訪ねると、2人が出会ったブロークバックマウンテンで着ていたシャツが大切に保管されていたことを知り、ジャックの愛の深さを改めて感じます。

家に帰り、ブロークバック・マウンテンの絵葉書を見つめながら「I swear」とイニスが呟いて映画は終わります。


この映画は1960〜80年代の田舎町が舞台となっていて、同性愛者への差別意識が現代以上に強いという背景があります。
ジャックとイニスは互いに愛し合っていましたが、ブロークバックマウンテンでの仕事を終えた後も一緒にいるという決断をすることは出来ず、互いに数年もしないうちに妻と子供のいる"一般的な幸せな家族"を築きます。

世間や時代が許さないからと離れ離れになる2人の気持ちを考えると非常に切なくなりますが、僕がこの映画を観て最も同情してしまうのは、イニスの妻アルマです。裕福でないながらも、イニスと2人の子供たちと幸せに暮らしていた彼女が、イニスとジャックがキスする場面を目撃してしまうシーンは胸が非常に締め付けられました。
他の人と関係を持つという裏切りに加えて、イニスが同性愛者だったとすれば自分への愛は何だったのだろうかと二重三重の苦しみを味わっただろうと感じました。

主人公2人だけでなく、彼らを愛している家族のことも考えて観るとより多くのことを感じられる映画だと思います。イニスの妻・アルマをミシェル・ウィリアムズ、ジャックの妻ラリーンをアン・ハサウェイが演じるなど、脇を固める俳優たちの演技も含めて是非ご覧ください!