気まぐれ図書館 -36ページ目

気まぐれ図書館

気ままに綴っていきます。
主に、サイト更新関連かと。
社会人しながら、専門で小説の勉強中です^^

 目の前には舞台があり、自分は観客席にいる。そして、舞台の上では、今まさに、自分達が演じていたはずの芝居が、他の者によって演じられていた。


≪お前の願い、私が叶えよう≫


 そう言った“根源司りし王”が“闇集いし者”から、魔力を吸い取るシーン。それを、自分は、舞台の袖で見ていたはずなのに。


「お前が一人で舞台を見るなど、珍しいな」

「サイス…」


 先程声を掛けてきたのは、やはり、舞台の上にいたはずのサイスだった。そこで、ようやく、ライトははっきりと覚醒する。


「そうか、少し、眠っていたみたいだ」

「おいおい、酷いな。俺の舞台だぞ?」

「ってか、王帝陛下が、一人でよく来られたな。大臣が泣くぞ」


 サイスの言葉は無視してライトが問えば、サイスは、あの時から変わらない笑顔で答える。


「ライトが一緒だと言ったら、二つ返事で出してくれた」

「…どうかしてるな、この国も、お前も」


 思わず乾いた笑みを浮かべたライトに、サイスは軽く笑ってみせ、空いていた隣の席に座る。


「しかし、お前達兄弟が舞台に立たなくなって、すっかり客足が遠のいてしまったぞ」

「それは、お前が王帝陛下になって、舞台に上がれなくなったせいもあるんじゃないのか?」

「それも一理ある」


 冗談で言ったつもりだったのだが、あっさり肯定され、ライトはだんだん返すのがバカらしくなって、言葉を続けるのをやめる。


 このまま舞台に集中するのも悪くないか、そう思った時、


「何だか、急に見たくなったんだ。少しの間だけ、昔に戻れそうな気がしてな」

「……」


 サイスに言葉に、今度は別の意味で、ライトは言葉を続けることが出来なかった。


 サイス主催の舞台を演じて数ヵ月後、まるで、この芝居をなぞるかのように、ライトは、内戦の鎮圧に赴いた先で命を落とした。そして、リンが唱えた“再臨”によって復活し、今、ここにこうしている。


「皮肉なものだ。俺の書いた話が、現実になるとはな」

「それでも…」


 言いかけて、ライトはそこで一度言葉を切る。


 確かに、自分が今歩んでいる道は、サイスの描いた物語にそっくりだ。だが、まだ果たせていない部分がある。


「最後に“闇集いし者”と“光まといし者”は、国王の為に尽くし、国の英雄になる。だからこその、英雄の叙情詩(バタル・マルハマ)なんだろ?」

「…あぁ」


 そこまで言ってみれば、ようやく、サイスも笑ってみせた。


「お前達になら、出来るさ」

「えぇ、尽くしますとも、王帝陛下。この命、続く限り」

「やめろ、どこまで本気かわからん」

「お前に言われる筋合いはないぞ、バカ王子」

「王子じゃない、王帝陛下様だ」


 冗談めかしたやり取りに、今度は、二人して笑うことが出来た。


 “再臨”の前例などないのだから、自分がこの先どうなるかはわからない。それでも、リンとサイスの為にできることがあるなら、と、思わずにはいられないのは、自分の性分か、それとも、この身に宿る魔術の影響か。


「そろそろ終幕だな。久し振りに、うちに来るか? サイス」

「あぁ、そうだな」


 頷いてみせるサイスに、ライトは、どこか安心感を覚える。


 それぞれの、立場は変わってしまった。


 リンは宮廷魔道士をとうに止め、何でも屋を始めていて、今は、ライトを復活させた罪として、うちうちに処罰を与えられた。

 サイスは、ライトが“再臨”で復活したのと時を同じくして、王帝陛下に着任している。

 そして、ライトも、いまだ宮廷魔道士として席は置いているものの、日中、外を出歩けない体になって。


 それでも、確かに変わらない関係は、ここにある。


「さすがは俺の片腕だな。頼もしいことを言ってくれる」

「それ、リンが聞いたら怒るぞ」


 笑い合いながら席を立って、昔と変わらない言葉を交わしながら、会場を後にする。




 英雄、なんて、立派なものじゃない。何一つ守れず、大事な弟に責を負わせた自分には。


 だが、いや、だからこそ、出来ることがあると信じて、前に進むだけだ。

 二人で一つの双子だから。

 支え合って、乗り越えていける。


 英雄になる、とまではいかなくても。

 ただ、真っ直ぐに自分達の道を進んでいこう。

 お互いの存在を信じて、笑い合って生きていけるように。




 薄暗い部屋の中にいても、外のざわつきは否応なく聞こえてくる。

 声から察するに、かなりの人がいるのは明白だった。


「リン、大丈夫か?」


 椅子に座って茫然としている双子の弟に声をかければ、返事より先に、盛大なため息が聞こえた。


「王子直属の命令だから、仕方ないだろ。けど、何で俺が…」

「まぁ、宮廷魔道士の仕事じゃないな」


 リンの言葉に苦笑すると、突然、けたたましい音が鳴り響く。それを合図に、外の声がしんと静まり返った。


「とりあえず、これが終わったら、あのバカ王子をぶっ飛ばしに行こうぜ」

「ライトが言うと、マジに聞こえるよ」


 そう言って笑うリンに、ライトも笑顔を返すと、二人はお互いの拳を突き合わせた。




 事の発端は、数ヶ月前。


『聞いて驚け、ライト、リン! 俺達、芝居をすることにしたぞ!』

『『は…?』』


 突然部屋に呼びつけられ、突然発表された言葉に、エヴァーラスト兄弟は揃って声を上げた。


 だが、彼らの声は無視して、全ての元凶、サイス王子は熱く語っている。


『隣町に劇団が来ていたのをたまたま見てな。それで、思いついたんだ。もちろん、脚本、演出は俺、主役はお前達兄弟だ!』

『『いっぺん死んでこい、バカ王子』』


 これも発したのは二人同時。その後で、盛大なため息をついたのはライトの方だった。


『あのな、宮廷魔道士が暇じゃないことくらい、お前も知ってるだろ?』

『第一、 何で俺達なんだよ?』


 と、これはリン。その問いに、サイスは不敵に笑って答えた。


『もちろん、見栄えの問題だ』

『『やっぱり死んでこい』』


 きっぱり言い放ったサイスに、エヴァーラスト兄弟もばっさり切り捨てる。だが、そんなことで引き下がるサイスでないことは、幼馴染でもある二人にはよくわかっていた。


『あのな、俺が死んだら、臣民が泣くぞ!』

『じゃあ、その馬鹿げた脳みそ入れ替えて“再臨”で復活しろよ』

『リン、国の禁術を何だと…』


 と、そこまで言いかけて、不意にサイスの言葉が止まる。怪訝に思って、様子をうかがっていたエヴァーラスト兄弟だったが。


『それだ! 実は、テーマがなかなか決まらなかったんだが、今決まった。脚本書いとくから、また明日俺の部屋に来ること!』

『『って、今からかよ!!』』


 この無謀とも言える、サイスの暴走に思わずつっこんだ二人だったが、実際、サイスの働きは素晴らしいものだった。


 宣言通り、脚本を書き上げ、またもや数人の宮廷魔道士を巻き込んで、芝居の舞台は整っていった。


――実際、よくやったよな、あいつは。まぁ、俺達が巻き込まれなきゃ、だが。


 舞台の袖で始まった舞台を見ながら、ライトは一人嘆息した。


 サイスの書きあげた脚本はこうだ。


 リン扮する“闇集いし者”は、ライト扮する“光まといし者”と敵対関係にある。世界でも秀でた力を持った魔道士である二人は常に互いを意識し、サイス扮する自分達の使える世界王“根源司りし国王”に、自分こそが上だと主張を続ける。

 だが、そんな二人の争いは、ある日、唐突に終止符が打たれた。あまりにも予想外の形で。


≪何故だ! お前が我が永久の好敵手ではなかったのか! “光まといし者”よ!≫


 舞台の中央で崩れるリンの姿を、ライトは、複雑な気持ちで見ていた。


 “光まといし者”の、突然の死。それは、どれほど魔導に長けていても敵わない、病気のため。

 彼を慕う者は多く、みな“光まといし者”の死を悲しんだが、それを一番感じていたのは、他ならぬ“闇集いし者”だった。


≪失って、ようやく気付いたか。かけがえのない存在というものに≫


 悲しみに暮れていた“闇集いし者”に声をかけたのは、他ならぬ“根源司りし王”だった。


 彼は、哀れな青年を見下ろし、静かに告げる。


≪私は、この世界を統べるものであり、全てのものの王だ。お前の望み、叶えてやれぬことはない≫

≪本当ですか?! 私は、どうすれば…!≫


 世界王に詰め寄る“闇集いし者”に、彼は、ただ淡々と事実を述べていく。


≪お前の、その強大な魔力と引き換えだ。お前の望みどおりに“光まといし者”は復活する。だが、二度と、以前のように競う合うことは出来ぬ≫

≪それでも、私は…!≫


 そう台詞を言ったリンが、一瞬、こちらを見たような気がして、ライトは一瞬ドキリとした。


――いや、まさかな…。


 自分の中の考えを否定して、ライトは、改めて舞台上のリンとサイスを見た。


 これは、この国に伝わる伝承を題材にした物語だ。


 サイスがヒントを得た“再臨”とは、かつて、世界が“狂気(ノア)”という名の正体不明のものに負の感情を増長され、滅びの道へと歩んでいった時、創造の神、アトゥムとイシスが確立したとされる、人間復活の魔術を指す。


 それは、実在し、今は王墓に眠っているとされているが、それこそおとぎ話だ。


≪代償なら支払います! “根源司りし王”よ、どうか…!≫


――っと、そろそろ俺の出番か。


 リンの台詞に我に還って、ライトは軽く衣装を整える。


 この後、願いを聞き入れられた“闇集いし者”は、約束通り魔力を失い、それと引き換えに復活した“光まといし者”が、名実共に、世界で一番の魔導士となる。

 だが、この命は“闇集いし者”によって与えられたものだ、と、長年争ってきた二人は手を取り合い、世界を安寧へと導く。


 だから、サイスによってつけられたこの物語の名は、


「バタル・マハルマ」

「ッ…!」

 不意に、意識が覚醒したように、ライトは軽い眩暈を感じてゆっくり目を開けた。




鈴のライブの情報、

アップされていましたね。


Lantis


本当に、いろいろな葛藤とか、

問題とか、

考えるべきところもいろいろあって、

その上でのこの決断があって、

鈴の言葉があって。


昔から、鈴の言葉に支えられてきて、

その言葉にすごく共感できて、

頑張ってこられた。


だから、今回、

ホームページでコメントが上がってるのを

拝見して、

私の方でもいろいろ考えさせられるものがあって。


自分の想いを伝えて、

それを理解してもらうのはすごく大変で。

でも、自分の中にある、

心からの想いだから、伝わるものがある。


私には、鈴の言葉が、

自分の中で言葉に出来ないくらいのものをいただいたので、

あとは、この想いが伝わりますようにと、願うだけです。


この声が、たくさんの方に届きますように、と。