私が生きていると信じているこの世界に
私が生きたことを知っているものなどいるのだろうか
私が見ていると信じているこの景色に
私が見たことに気づいていものがいるのだろうか
私がいると信じているこの場このときを
私以外の誰がそれを見、知っているのだろうか
生まれ
時の中を生き
そしていずれ死を迎えるはかない人生
名もなき小さな存在が
泡のように生まれ消えていくそのさまを
誰かの記憶にとどめることはできない
けれど
私と思しき魂の記憶には
喜びと悲しみとが織り成す虹彩が
一つ一つの人生の輝きとして
くっきりと浮かび上がることだろう