2011年の3月11日のことは多くの方と同じように私にも忘れられないと思います。

それでも5月にはイタリアに行きミラノでコレクションを開きました。

 

ミラノの家に着くと偶然管理人の男性が立っていて、いつものように挨拶をしようとすると

「怖い」と言って握手を拒まれたのです。

日本の原発のニュースがイタリアでも出回っていて、管理人の男性は被爆がうつるとても思っていたのでしょうか。非常に不快な思いをしました。他のイタリア人や現地在住の日本人の方には優しいご心配の言葉をかけていただきました。

 

そして日本に帰って9月27日それでも個展が開催しました。

タイトルは「プロバンスへようこそ」Bienvenu en Provance!

案内文はこのように始まります。

「モナコやマルセイユを通リぬけ、エクスプロヴァンスに近ずくと、ラベンダーの香りとひまわりの花で溢れる景色が現れました。昨夏、南フランスのプロヴァンス地方を訪ねた時の事です」

前年ゴッホの足跡を訪ねて訪れたプロヴァンス地方が題材でした。

何もかも暗い重苦しい状況を打開するのに、私にできることは明るい話題と作品を提供すること以外にはなかったのです。

ジュエリー構成も、第一皿 花の香り 第二皿 美味しい香り 第三皿芸術の香り 第四皿 夢の香り と料理のような構成にしました。

中でも特出したいのは、華の香りです。

プロヴァンス地方の様々な花をモチーフにしました。

 

それともう一つ、大変に希少な作品があります。

リラゴールドを使った作品です。

 

このコレクションよりずっと前から、私は紫いろの金は出来ないものかと研究していたのです。

過去の文献から、アルミニウムと金を混ぜると紫色の金になると言うのを読んだことがあり

色々研究したり試してみたりしたのですが、なかなか思ったようにはいかなかったのです。

この年はラベンダーがテーマでしたので、特にいろいろ試していた時に、既にラベンダー色のジュエリーを作っている会社を発見!灯台元暗しとはまさにこのことで、それが御徒町にあるのを知りました。ジュエリ―ミウラさんがその会社でした。

 

早速その会社を訪ねると、偶然いわきのお店とセミナーで知り合い、見ず知らずなのに泊めてくれたと言う会社である事が判明しました。

これまで、金とアルミニウムの組み合わせにより、美しい紫色がつくられることは知られていましたが、加工性が悪く変色しやすいなどの課題があり、安定した商品化が困難でした。しかし日本の大学3校と産学官連携にて、あらゆる鋳造方法やコーティング技術を 研究する中で、従来のものと比べ7~10倍の驚異的な硬度をもつ、 ナノテクコーテイング膜を開発することができたそうです。こうして誕生した紫のゴールドを使わせて頂きコラボすることが出来ました。

 

 

  

9月27日に個展は代官山のASO まさにプロヴァンスのような会場で開催されました。

暗い気持ちだったこの半年間を吹き飛ばす気持ちで一杯でした。