お父さんってどんな人なんだろう。

いつになったら会えるのかな。

何日も何日も楽しみに待っていた4歳の私。

 

わくわくする気持ちが溢れ出した

もうすぐ年中さんになるある日の午後、

喜びいっぱいの笑顔で母に聞いてみた。

「お母さん、あやにもお父さんがいるの?

お父さんって、どんな人?いつ会えるの?」

 

急に母の顔が曇ったのを今でも忘れられない。

「そんな話、お母さん教えてないけどどこで聞いたの?

今まで話さなかったけどお父さんはいます。

今夜帰ってくるけど、、、知って欲しくなかった。」

と、言葉を投げた後は口を聞いてくれなくなった。

 

なんで、、、?

いけないことしちゃったのかな、、、?

幼稚園のお友達は当たり前のように

お母さんとお父さんのことを楽しそうに話すのに

どうしてお母さんを怒らせちゃったんだろう。

 

結局、その日は夕食の時間まで口を聞いてもらえなかった。

おかずが食卓に並んだ頃、駐車場に車が入ってきて、

誰かが玄関の鍵を開けた。

 

ガチャッ。

 

顔を見るなり、

「ああ、おじさんだ」と、思った。

兄がいた頃、たまに泊まって行ったおじさん。

おじさん、なんで泊まっていくの?と

その男の人が泊まるたびに不快に思っていた。

 

「おじさん、また来たの?何でお家に帰らないの?」

と、いつものように口が喋った。

母が言った。

 

「その人がお父さんよ」

 

、、、、、。

??????

 

意味が分からなかった。

この人がお父さん?

おじさんがお父さん?

それなら何で誰も教えてくれなかったんだろう、と

不思議に感じた。

 

全員が食卓について、

父、母、私の順にご飯とお味噌汁が配膳されていく。

 

ガシャン‼︎とテーブルが鳴った。

「おい。ホッケがないぞ。

俺はホッケが食べたいのに何で出さないんだ‼︎

こんなもん食えるか‼︎」

と、食卓をひっくり返した。

 

ビクン‼︎と固まってしまった。

身動きが取れない。

 

「このやろう‼︎」

と父と言われた人が母の髪の毛を掴み、

畳の上を引きずり回し始めた。

次に、右手で殴り、左手で殴り、

床に叩きつけられて今度は足で蹴りつづけた。

 

泣きながら唇を噛み締め抵抗し続ける母。

何が起きたかさらにわけがわからなくなった。

見たこともないような恐ろしい光景。

お母さんが泣いている。

大好きなお母さんが目の前で痛い目に遭わされている。

お母さんを助けなくちゃ、と思うけれど

両脚が動かない。恐い。

赤く染まった大きな鬼がこちらも睨み始めた。

 

恐い‼︎‼︎

と目をつぶった瞬間。

 

じょわーーーーーー。

 

立ちすくんだままお漏らしをしてしまった。

 

「この大馬鹿野郎‼︎」

と、鉄拳が飛んできた。

私の身体が宙を舞い、母が追いかけて来たが、

頭がゴンとどこかにぶつかって

口の中が変な味のものでいっぱいになった。

 

おうち、キライ・・・

優しかったお兄ちゃんに会いたい・・・

お兄ちゃん、何であやを置いて行ってしまったの・・・・

 

それがこの後15年間ほど続く、不幸な人生の始まりだった。