しかしパリはなんと雪(…みぞれかもしれません)が降ったそうなので、それに比べると、冷たい雨も想定内かとも思います。
さて、投稿が遅れておりましたが、先週末、初美術館出展となった、公募展 ベラドンナ・アート展の搬出がございまして、幸せなことに、出展作品がアートコレクターの方のもとにお嫁入りしたこともあり、手軽になったので、同じ美術館で開催されている『若冲展』に行って参りました。
もとより若冲の大ファンで、10年以上前?だったか、若冲の大ブームが起きた頃から、東京で開催された大小様々な若冲展には多分殆ど行っておりますので、今まで何回も観た絵も多くありましたが、やはり何度観ても、素晴らしく、新たな感動に浸れます。
今回、目玉の展示となっている動植棌絵ですが、その精緻で華やかで温かみのある描写と圧巻とも言える作品数には、ただただ息を呑み、しばし立ち尽くす感動を覚えます。
動植綵絵は、以前国立博物館だったかで開催された時も感動しましたが、今回は釈迦三尊像を中心に円形に展示されていた所が、また新たな感動を呼び起こしました。
そして毎回感じるのは、画人としての若冲の生き様の美しさです。
今回展示されている、釈迦三尊像 三幅と動植綵絵 三十幅は、相国寺に寄進されたものですが、この壮大な大作の寄進状に、"自身の心と技を尽くした丹青(絵画)の功績を、世俗にひけらかすのではなく、相国寺に喜捨して、永遠に寺の荘厳の助けとなることを望む" としていることに、画人としての気高さ、偉大さを感ぜずにはいられません。
四十歳で家業を弟に譲り画業に専念し、四十代前半から五十代前半で上記の大作を成し遂げ、歳を重ねて目が悪くなり、細密な写生が出来なくなってくると、若冲ブームの発端となり海外で高い評価を受けたクジラや象の空想画を描くようになっていきます。
最初は中国美術の模写から始まっているので、模写→写生→空想画と、作風や描く対象の変化を重ねながらも、常に全身全霊で画業に取り組んできた姿には、画人としての気迫、凄まじさ、偉大さを感じさせます。
が、それと共に、描く対象に向けられた温かみのようなものも作品から感じられ、市場で売られていた食用の雀を大量に買い取り、空に放ってあげたという逸話も頷けます。
偉大な画人であることは明白ながら、生前、名誉や富に浴することなく、むしろそういったことへの一切の執着がなく…もともと裕福な商人だったこともありますが…描くことに真摯に、"心と技を尽くした"姿は、彼には遠く及ばずとも、描くことをライフワークと思い、最近細かいものが見えにくくなって、色々困難なこともある人間にとって、深い感動と明るい光を感じさせてくれました。