5:00am。

4月上旬の明るい空の下、いつもよりだいぶ早い時間に犬の散歩へと出掛ける。と言っても今朝は近所の高校をぐるりと周る超ショートコースだ。

なぜ?それはこの後5:24発の電車に乗り羽田へと向かうから。今年もまたミラノ出張である。

 

天気予報ではこの後東京もミラノもポカポカ陽気。

ホカホカのうんちを拾い家路へと急ぐ。

 

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『年間200万円が損益分岐点です』

 

丸井が発行するエポスカードはプラチナカードへのランクアップ・ハードルが低いと気づいたのはここ2年の話。何が言いたいかというと、プラチナカードになると『プライオリティパス』という、いわゆる軽食・酒・シャワーの付いた空港ラウンジが無料となるパスをもらえる。

これまで幾度となく海外へ行っていたが空港の高級ラウンジは富裕層のステータスカード(=高額年会費カード)だけのものだと思っており、まあ自分には縁がないものだと諦め、いつもゲート近くのクソ高いカフェでビールを呑み時間を潰していた。

それが実は日々の家族全員の衣食住&習い事支払いを1つのエポスカードに全振りすれば、年200万円は何も頑張らずとも正直楽勝なのである。

 

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世界一の家具見本市である“ミラノ・サローネ”視察は去年から始まったタスク。家具見本市という名前ではあるが、ぶっちゃけミラノの街がデザイン一色になる街をあげての“デザイン祭り”の1週間。広大な展示会場の視察業務に加え今回は我らチームのグローバル会議(世界中のリーダー達との情報交換)もあり、やや荷が重い。

何がって?それは主に英語でのディスカッションに他ならない。

 

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最寄駅を予定通り出発、そして羽田空港第3ターミナルに降り立つ。時間は出発の3時間前だ。いつもなら2時間すら守らずギリギリで向かうのは空港での待ち時間がつまんないから。それが高級ラウンジが使えるというだけでここまで張り切っていく自分が恥ずかしくも感じるが、一般庶民なので仕方ない。さっさと荷物を預けて朝ビールだぜ!と息巻いて行ったルフトハンザのカウンターでまず出鼻を挫かれる。

 

『カウンター営業時間 7:10から』という表示。

 

え?後30分も?おいおい、隣のANAカウンターはもう仕事始めてるよ?長い列を作るドイツ人旅行者たちは地べたに座り込んでいる。一応ANAのお姉さんに『これコードシェア便だからANAでも受け付けてもらえないの?』と聞いてみたのだが、『ルフトハンザ便ですからルフトハンザでお願いします』と至極真っ当な答えが返ってきたのでしぶしぶ屈強なガタイのドイツ人の後ろに並ぶ。

 

7:10。定刻が過ぎても人が来ない。これだから外人は時間に疎くて嫌なんだよな!と心の中で叫んでいたが、5分後に現れた地上乗務員は全員日本人だった。受付開始からさらに待つ事30分、荷物を預けやっと進めると思ったらその後も保安検査場混雑のため30分以上列に並び、結局検査場を通過したのは8:30。搭乗時刻まで50分しかない。まだユーロ両替もしてない。不満で一杯の自分だが、数分後にはニコニコ笑顔になり庶民中の庶民である事を再確認する事となる。

 

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《お食事》

ホカホカご飯

カレー

味噌汁(インスタントカップ)

野菜のごろごろ煮

おむすび各種

焼きそば

シリアル

カレーパン(木村屋)

ロールパン

シュガートースト

食パンスライス

 

《おつまみ》

ナッツ

枝豆

柿の種

チーズ

 

《デザート》

レディーボーデン(バニラ)

 

《飲み物》

生ビール

日本酒(江戸開城)

ワイン

ウイスキー

ジン

その他カクテル用リキュール

ソフトドリンク

コーヒー

ルイボスティー

 

TIATラウンジの扉の先には想像通りの桃源郷が待ち受けていた。

食い意地の張ったハイエナよろしく片っ端から30分一本勝負で貪った。惜しむらくはやはり時間、もっとゆっくりしたかった。恨むぜルフトハンザさんよぉ。

 

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お腹も心も満たされた庶民を乗せたルフト便は10分遅れでの離陸。昨年もそうだったがロシア完全迂回のせいでとにかくフライト距離が長い。しかも直行便ではないのでトータル時間は更に長い。最初のフライトがミュンヘンまで14時間20分。それから乗り換えで1時間待ち、その後ミラノまで1時間。で、空港からホテルまで入国手続き込みで2時間だとすると羽田出てから18時間以上である。

 

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なかなかの狭さだなぁと事前指定している座席へ向かうと、隣はこれまたマッチョでデカいイケメンドイツ人だった。目が合うものの特に会釈もせず。これだから若いヤツは!とイラつくとともに、これで14時間はなかなかだなと。

 

憂鬱なままに着席し、いつものようにCAさんに飴をくれと頼む。これは数年前からの定番儀式でもあり、気圧の変化で離着陸の時めちゃくちゃ耳が痛くなるのを唾液を促し防ぐためである。そんなの買ってくればいいとも思うのだが、袋で買うほど数が必要でもない。

 

庶民『飴ください(英語)』

ドイツ人CA『は?飴?そんなの無いよ!(英語)』

 

まさかの回答にガックシする庶民。理由(気圧で耳が痛くなる)を伝え、ガムでもいいから無いの?と聞いてみてもやはり無いものはないと。諦めベルトを締めてフライトモニターをつけたその時である。

 

隣席のデカいイケメンマッチョドイツ人『これ良かったらどうぞ(英語)』

 

差し出されたその手には何とお土産で買ったと思しきハイチュウの袋(未開封)が。おそらく先程のCAさんとの会話を聞いていたのだろう。

 

庶民『え?いいの?(英語)』

隣イケマッチョ『もちろん、どうぞどうぞ』

 

なんてイケメンなんだ、顔だけじゃ無くて心もイケメンだなアンタ!

 

庶民『じゃあ1ついただきます(英語)』

とありがたく頂戴しようとしたら、

隣イケマッチョ『ノー、これ袋ごとどうぞ、耳痛いのは1個じゃ足りないでしょう?』

 

よし娘の彼氏にはコイツがいいと確信した春の日だった。そしてさすがに袋ごとは遠慮して、5個(個装)だけもらったのだが、その後も数時間おきに大丈夫か?良かったら食べないか?と気遣う若者。よし後10年くらい経ったらまた日本に来てくれないか?結婚を前提に紹介したい女性がいるんだが。

 

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さてここから毎度の映画三昧となるのだが、まずヒットアニメ映画『すずめの戸締まり』を観て、東日本大震災をネタにした感動ポルノだよなぁと感じ、これ遺族の神経逆撫でしないのかと心配になり、続けて『Barbie(バービー)』を観て単なるおバカ映画だと思って観たら、思いの外楽しいおバカ映画だった。その後『ミッションインポッシブル』の最新作にハラハラドキドキし、もう一本観ようかなと思ったところで睡魔が訪れた。結局更に飛行時間が40分遅れ15時間の空の旅。

 

あれ?ミュンヘンでの乗り継ぎの時間って1時間しかなかったような?

 

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ダッシュするほどでもないが、結構な早歩きを強いられた。

ミュンヘン空港はそれなりに広い。『ミラノ行き乗り継ぎ便はこちらですよー』という看板を持ったルフトハンザのお姉さんについて早歩き。保安検査とパスポートコントロールを過ぎた後は自分でGATEへ向かうだが、これがまた非常に分かりにくい。広大なフロアを同行の同僚達とあっちじゃないのか?いやこっちだとぐるぐる周り、結局インフォメーションのおじさんに聞くと『上の階だよ』と。

 

初めて利用したAir Dolomitiなるイタリア企業の小型機は、いわゆるLCC宜しく基本的にサービス有料。ペットボトルの水とひとかけらのクッキーだけ渡された後は特にやる事もなく1時間のフライトを過ごし、マルペンサ空港着陸。スーツケースを受け取り国鉄に乗り換え1時間、ミラノ中央駅へ。本当ならばスーパーで水など買いたかったがこの時すでに22:00。

『夜は中央駅付近は危険ですよ』という知人の言葉もあり、大人しくホテルへ向かうのだが、出口徒歩1分のホテルのチェックインカウンターのお兄ちゃんに言われた言葉にびっくりした。

 

『あんた達泥棒につけられてたよ。すられてないかポケットの中確認したほうがいい』

 

ジプシー(現地の貧民層の子供たち)の襲撃に遭ったのは1990年後半、貧乏卒業旅行でイタリアの洗礼を受けたが、2024年でもそうなのかこの国は。

 

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何はともあれ無事にホテル着。コンパクトだしアメニティも簡素だが、去年滞在した田舎のボロホテルとは大違いで良かったな、と思いきや、シャワーを浴びるとガラスドアの閉まりが悪く、ダダ漏れ大洪水…。ほんとにどーなってるのこの国は(笑)

 

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さて明日はさっそくグローバルデザイン会議。事前にプレゼンの練習しようと思ったけど、疲労と眠気には勝てず、まあ何とかなるでしょとベッドに飛び込む。いやあ長旅だった。

 

《中編へ続く》